大統領選挙とアメリカ発金融危機

10月4日、東京での「公共政策カンファレンス」というワークショップ(WS)に出席しました。

場所は明治大学駿河台キャンパスのリバティー・タワー。23階もある建物で、
小さな宇治のキャンパスから来ると圧倒されます。

3つのWSに出ましたが、うち1つが3人のパネリストによる「米国大統領選挙予測―ワシントンレポート」。

やはり、オバマ優勢の現状と上下院とも民主党が圧倒的に優勢との予測でした。

私は以下2つを質問。

「Q1−ヒラリーを副大統領候補に選ばなかったプラスとマイナスは?
ヒラリーが12年に出馬する可能性は?」
「Q2−ハンク・ポールソン財務長官への評価が高いが、仮に民主党政権になった場合、
いまここの危機に処する政策の一貫性の担保はあるか?」

Q2については、オバマ政権になった場合、ポールソンを一時的にでも留任させる
可能性ありと噂されていますが、回答者もその点に触れていました。


「いまここの危機」ですが、かって10年近くウォール街あたりで働いていた私としては、
大いなる関心と感慨があるのですが、専門家ではないのでコメントはやや遠慮しています。

後講釈をしても仕方ないし、学者に多いのですが、解決策を示さず、市場原理主義の虚構・・・
など理屈だの批判などこねるのにもうんざりしています(京都の某大学の女性教授など・・)。

9月29日号のNewsweekが比較的冷静なコメントを載せているように思います(日本語版にも出ています)。

以下、NW記事の一部紹介と若干の私見です。


1.要は、世界が、良くも悪くも依然としてアメリカ依存、ドル依存の金融システムであることの再認識。
また、市場においては「信用(credit)」と「信頼(confidence)」がいかに大事かということの再認識。


2.アメリカ型金融ビジネスのモデルが、市場でリスクを取って収益をあげるというロジックにどっぷり
つかったもの、そうでなければ、儲からない、投資家や株主・社員を満足させられないという仕組み
(これは私がNYを去った、1980年代後半の、M&Aブーム、デリバティブ取引の活発化、マイケル・
ミルケンに代表されるジャンクボンド・・・等々から始まったように思う=古き良きインベストメントバンカー
の姿について、昔、エッセイで紹介したことがあった)。


3.その意味で、今回、投資銀行が単独ではほぼ消滅し、商業銀行に買収されるか、銀行持株会社に転換した、
歴史的意味はまことに大きい。ただし、ビジネスモデルをどこに置くか?はまだ見えてこない(
いまは、それどころではないだろう)。
この点さすが英国で、ロンドン・シティのほうが先行しているようだ。米国の金融機関
は参考にすべきではないか。


4.日本の野村や三菱UFJの動きは、これほどアメリ投資銀行とは違う「企業文化」が
異文化に直接接するわけで、どうなるか?個人的には、きわめて興味深い。


5.以下は、NWのザカリア編集長のコメントに大賛成だが、「国家対市場」というような
議論はナンセンス。「市場は政府がつくった規制の枠組みがあってこそ存在する。(略)
大事なことは、市場がうまく機能するような「良い規制」を設けることだ」。
(この点が、日本の官僚にもっとも欠けているのではないか・・・)

6.冒頭でも触れたように、ポールソン財務長官への高い評価。ダートマス大を最優等で
卒業(アメフトの花形選手でもあった)、ハーバードMBAゴールドマン・サックスに32年
勤め、同社のCEOを8年。まさに適任の人物のようで、日本もこういうリーダーがいないでしょうか?


ここまで読んでいただいた方がおられたとしたら、本当にご苦労さまです。