晩秋の信州とアメリカ(大統領選・ワールドシリーズ)

1. 氤岳居士さん、遅くなりましたが神代植物公園の温室情報有難うございます。咲き
そろった睡蓮を見にいきたいものです。
もっとも当方は、晩秋の信州に週末を過ごしました。今年の最後の滞在ですが、もみじや落葉松の紅葉や雪でうっすら化粧した八ヶ岳を眺めたり、散歩しながら下手な素人写真を撮りまくっています.


2. 幸いにインターネットのお陰で、情報は田舎にいてもフォローできます。
2週間前(10月23日)のブログで「おそらくトランプの勝ち目はない。しかし40%の支持は、敗けても、この国にしこりと分断を残すのではないか」と書きました。
ところが、その直後、7月に捜査終了を発表したFBIが新たなメールが見つかったとして捜査再開を発表。
マスコミは連日この問題を取り上げてFBI長官の判断への是非に揺れています。

世論調査「リアル・クリア・ポリティックス」の直近の発表では、勝つには過半数270人の選挙人必要のところ「ヒラリー216対トランプ164接戦州158」で、FBI捜査再開直前が、ヒラリー272 対トランプ126接戦州140から、大きく差は縮まりました。


それでも、州別・総取りの選挙である以上、ヒラリーの勝利は間違いないと、個人的には思いますが、どうでしょうか・・・・(BREXITの場合のように、何が起きてもおかしくない時代かもしれませんが)。


直近のニュヨーク・タイムズ(NYT)は、ヒラリー勝利を84%とし、トランプ勝利も「不可能ではない」〈16 %〉としています。

問題は前回も触れた大接戦の上院選挙で、NYTは、54%の確率で民主党優勢と伝えています。仮に民主党過半数を取れば、前回2014年の雪辱を果たす訳で、大きな影響があります。


上院は下院にはない権限をもち、その1つに、大統領の指名した最高裁判事の「承認」権限があります。
現在9名の判事のうち保守派だったスカリア判事が今年2月に死去してから、補充がされていません。
オバマが指名しそうなリベラルな判事を上院が承認する可能性が低いためです。
現在、8名は保守4対リベラル4で、上院が民主党過半数となればリベラルな判事が多数を握れる。
これは「法の支配」が徹底し、(日本と違って)最高裁の存在がまことに大きく、憲法に違反する法律かどうかを真剣に・頻繁に判断するアメリカではとても重要なことです。

3. もう1つアメリカの話ですが、ワールド・シリーズでシカゴ・カブス(カブは、獣の子・新米などの意味)が、実に108年ぶりのシリーズ制覇を果たしました。
対戦相手のクリーブランド・インディアンズが勝っても68年ぶりだったそうですから広島カープの比ではありません。

7回戦の最後に延長10回でカブスが勝つという、まさに「ハラハラドキドキ」で、前回のブログで触れた「戦力均衡化」の経営方針の成果といえそうです。

両チームとも、前回ブログで紹介した「マネーボール」戦略を踏襲する、データ分析による経営戦略を重視するチームです。

もちろんシカゴは大騒ぎで、マスコミも電子版のニューヨーク・タイムズを開けると関連記事が満載です。

別に、いい悪いの話ではなく、ただ「違う」というだけですが、アメリかのメディアは、戦略面からの指摘が好きなようです。
対して、日本のメディアは、選手の活躍や監督の采配や選手への目配りや・・・といった人間関係と情緒的な面を取り上げることが多いような気がします。
例えば、ファイターズ栗山監督が如何に大谷選手をうまく使ったか、というような話。

あるいは、4日の日経スポーツ蘭のコラムには「ファンの声援、育ての親」という見出しで、ファンの存在が如何に優勝に貢献したか、という「ナニワブシ」的なコメントがありました。


4. もちろんアメリかのメディアもこういう報道が無い訳ではありません。しかし必ず、なぜ勝利したかを戦略的に分析しようとする志向も強いと思います。

データ重視の「マネーボール」戦略にはもちろん批判もあります。
11月4日のニューヨーク・タイムズは早速、「本物のベースボールとは?」と題して、この問題を何と 論説で取り上げていますので最後に簡単に紹介いたします。

(1) 今回のワールド・シリーズは近頃でもっとも楽しい試合を見せてくれた。

と同時に、データ重視のカブスとインディアンズ両チームに対して、これを批判する「大事なのはデータなんかじゃない」という意見との違いをふまえて、「本物のベースボールとは何か?」を考える良い機会となった。

(2) データ批判の立場に立てば、「本物のベースボールとはデータ分析ではない。その魅力とは、選手のプレーする運動能力なんだ。例えば ――
右翼手三塁手に向かって矢のような球を返して走者の進塁を阻止する姿、
盗塁する選手の懸命に走るスピードと活力、
ダブル・プレーを取ろうと振り向いて次の動作に移る二塁手の姿の美しさ・・・
ベースボールの魅力とは、そういうことなんだ、データなんかに意味はない!


(3)ニューヨーク・タイムズの論説の筆者は、自分はプロではないからよく分らない、と白状します。そして、多分、両方ともそれぞれ言い分があるのだと思うと両者を立て、
ただ、自分が繰り返したいのは、「マネーボール」戦略の両チームによる今年のシリーズは目茶目茶、楽しかったということだと言います。

そして、覚えておいていいと思うのは、反「マネーボール」戦略を強烈に主張するのは例えば、アリゾナダイヤモンドバックスのジェネラル・マネージャーである。
そして・・・ダイヤモンドバックスの今シーズンの成績は69勝93敗で、来年、彼もそして監督もチームには残っていないだろう・・・・。

(4)もちろん、論説の筆者は、ダイヤモンドバックスGMの主張と思いを、すべて否定している訳ではありませんが、「ハラハラドキドキ」の魅力を訴えてもいます。

たかがプロ野球とはいえ、こういう戦略論争の視点からとらえて、「ディベイト」に持っていこうとする思考に、日本にはないものを感じて面白かったです。
もちろん、プロ野球だけではなく、この国は大統領選も議会選も「ハラハラドキドキ」ですが、
対して日本の選挙はどうでしょうか?