引き続きアメリカ、RBG判事の後任問題とブレアナ・テイラー射殺事件の陪審判断。

  1. 東京に戻って、お彼岸でもあり、2回墓参に行きました。家人の実家の墓は上野に近い谷中の天王寺にあります。終えてから「谷中ぎんざ」を歩き、名物の「すずき」のメンチカツをビールと一緒に頂きました。コロナの前は行列ができる店でした。

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  1. 前回紹介したルース・ギンズバーグ判事の死去を悲しみ、追悼する国民の姿をアメリカのメディアが連日報道しています。遺体は国民の喪を受けるために、最高裁判所に2日間置かれ、その翌日は議事堂に安置されました。女性としては初めてのことだそうです。

 長年女性の平等と権利向上のために戦った彼女の生涯について、岡村さんから、京都の女性会の某会長を思い出すというコメントを頂きました。

 生前親しかった「京都市地域女性連合会」の会長さんは85歳で亡くなるまで、重い病をおして最後まで会合に出席し、女性の地位向上に努力し続けた人だった。「この明治生まれの気丈な会長とギンズバーグ判事を重ねてしまうのです。判事は、「最高裁の女性判事が何人いれば充分か?」と聞かれて「9人全員」と答えたそうですが、会長に聞かせたかったセリフです」と、想いをこめて書いています。

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2.飯島さんからは、「アメリカの行く末が気になる」というコメントを頂きました。「気になる」のは彼女の後任人事だけではありません。もう一つの出来事もアメリカ社会を揺るがしています。

 ケンタッキー州ルイビルで今年の3月に、3人の警察官が深夜に私服で黒人女性ブレアナ・テイラーのアパートに踏み込み、ボーイフレンドが発砲したのに応じて、寝ていた彼女を射殺した事件が起きた。

 そして先週の23日(水)に、警察官の殺害の罪では起訴しないという陪審の判断が示された。ルイビルではこれに怒った人たちの抗議デモが起き、暴動も起き、緊急事態が宣言され、警官のみならず州兵が出動する騒動になった。

 この二つの出来事が、11月3日の選挙(大統領&議会とくに上院)にどう影響するか?

 何れもトランプに有利に働くかもしれない、少なくともトランプと共和党は最大限この出来事を選挙に利用するだろうことが懸念されます。

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3. ブレアナ・テイラー事件について言えば、抗議する人たちの怒りは理解できます。しかし、それが、一部の人たちの行動にせよ、過激な暴動にまで発生すると、反発する市民も増えてくるでしょう。

 そして、トランプはここぞとばかり「法と秩序」を叫び、支持を広げようとするでしょう。まさに、思う壺にはまる危険があります。

 こういう時こそ「気持ちは分かるが、暴力はやめて冷静に」と呼びかける人が必要でしょうが、民主党候補のバイデンは、似たような無罪判決が出た2013年のときのオバマ前大統領や1968年のキング牧師暗殺で暴動が起きたときのロバート・ケネディ(大統領選挙に出馬していた)のように、雄弁な言葉で人々に訴えるというカリスマには欠けるような気がします。

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  1. もう一つは、ギンズバーグ判事の後任問題です。

(1) 前回も書いたように、2016年にスカリア判事が死去し、当時の大統領オバマが後任を指名した。ところが、上院の多数を抑えていた共和党は「オバマの時間は限られている」という理由で上院での審議を握りつぶし、トランプが大統領に選ばれるまで待って、トランプの指名する別の保守派の判事を承認した。

(2) その前例があるだけに、「今回も新大統領が決まるまで待つべき」と民主党は主張する。

ところが、共和党上院のリーダー(2016年時と同じ人物)は、「あの時は大統領と上院多数派とが政党が別だった。今回はともに共和党で同じ。だから事情が違う」という妙な理屈で、トランプの指名する候補をただちに上院で審議して可決してしまおうとしている。

 

6.アメリカの連邦最高裁判事は、大統領が指名し、上院で承認される(憲法2条)。

今の構成は共和党53対民主党47,合計100人。従って、共和党から4人造反者が出れば、逆転して承認は得られない。

ところが現在、「前例に沿って新大統領が決まるまで待つべき」と主張する議員は共和党で一人か二人だけのようで(ともに女性)、他はトランプが誰を指名するか明らかにしないうちから賛成で、「おそらく誰が指名されても承認されるだろう」とメディアは予測していた。

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7.そして、トランプは「女性を指名する」と明言し、現地時間26日(土)に、写真にあげたバレット判事を指名しました。

彼女は控訴裁判所の判事、48歳、子供が7人いる熱心なカトリック信者で、人工妊娠中絶反対の人物と紹介されます。女性と言っても、保守的な人物。

 

 さはさりながら、ギンズバーグ判事の後任にやはり女性が選ばれる、しかも40代の新鮮な女性の登場ということになると、思想信条は気にせず好感をもつ国民は増えるのではないか、そしてまさにトランプは、この絶好の機会をうまく捉え、「新しい・若い女性判事を自分が選んだ」という成果を大々的にPR するだろう。

 もちろん賢明な有権者は、そういうトランプ&共和党の選挙戦略は見破るだろうと期待するが、あと1ヶ月ちょっとに迫ったトランプにとって、この2つの出来事はバイデンをラストスパートで追い上げるチャンスになるかもしれない?

それとも共和党の強引なやり方への反発が逆に民主党に有利に働くか?

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 今朝チェックしたメディアによると、ABCとワシントンポスト共同の世論調査で、「次の大統領が決まるまで待つべき」は57%、「いま決めるべき」は38%で、約20%の大差で反対者が多いとのこと。

 但し、民主党支持者の90%が前者、共和党支持者の80%が後者だそうで、「分断」は明らかです。

 もっとも、同じ調査で、「大統領を選ぶにあたって最も大事な問題は何か?」の質問には、この問題は、経済・コロナ対策・医療保険・人種差別・犯罪と治安、に続いて6番目に留まっている。

 これから上院でのバレット判事を承認するかどうかの動きは激しさを増すでしょう。

同時に、9月29日から3回開かれる2人の大統領候補のテレビ公開討論会が注目です。