「スティーブ・ジョブズの子供たち,ハングリーであれ愚かであれ」

1. 柳居子さん、さわやかNさん、コメント有難うございます。
ご質問の「どういうダンスか?」について私が聞いたのは、「現代ダンス」「伝統ダンス」「ヒップホップ」の3つの由。中学の体育の先生にすれば、「教えろ」と急に言われても困るだろうなという気はします。

それと、仮にダンス自体はたいへんよい「体育」だ、「必修化」は必要だ、としても、
役所から「これをやれ」と、細かい教育内容についてまで強制されて、全国の公立の中学が「右向け右」と一斉に従う、現場は忙しく・あわてふためく・・・という図式は、悲喜劇ではないか。
そんな風に思います。


2. 上の感想と関係あるかどうか分かりませんが、1週間の京都での「集中講義」で今回初めて、昨年10月に亡くなったスティーブ・ジョブズを取り上げました。
今更、誰もが知っているスティーブ・ジョブズと、有名な彼のスピーチについて語るのはどうかとは思いますが。

彼が、2005年6月、スタンフォード大学の卒業式に招かれて語ったスピーチは、今でも「ユーチューブ」で聞くことが出来ます。
http://news.stanford.edu/news/2005/june15/jobs-061505.html
http://sago.livedoor.biz/archives/50251034.html (日本語の翻訳サイト)
15分という短いスピーチで彼は
(1)「点と点をつなぐこと」の意味
(2)「人生において失うことと愛すること」の意味
(3)死をどうとらえるか?
の3つについて語り、最後に、若い時に出会った
「Stay hungry, stay foolish (いつまでも探し続けよう、いつまでも自らが無知であることを忘れないでいよう)」
という言葉を3回引用して終わります。


3. 上の(1)についてまず彼は
・未婚の母・大学院生の子で、すぐに「労働者階級の親(父親は高校も出ていない)」の養子となり、生母と養父母との約束で親の貯金すべてをつぎ込まざるを得ないような私立の大学に入学したが半年で退学したこと。
・しかし「必修科目」は無視して、代わりに興味半分で学んだ「カリグラフィー」の授業が、のちの名機「マッキントッシュ」誕生に役だったこと
・そこから、よく知られるようになった
「connecting the dots (点と点をつなぐ)」という言葉を引用します。

・・・・私たちは、前もって点と点をつなげるような行動はとれない。だからこそ、いつか将来、点と点がつながることを信じよう。
そのためには、自分の信念でも直感でも何でもよいからそれらを信じることだ・・・・


4. スピーチの(2)については省略しますが、
(3)の「死を前にして」のメッセージは、私のような高齢者には痛切に響きます。
・1年前に、すい臓がんで余命わずかと診断されて、死の意味について考えたこと
・その後、幸運にも手術が成功していまは元気になり、可能ならあと数十年は生きたいと希望している
・しかし、ジョブズは、このあとガンが再発して、6年半後に亡くなったこと。

そして、未来に向けて希望に満ちて、卒業する若者にこう語ります。


・・・・君たちの時間は限られている。だから、自分自身以外の、誰かよその人間の人生を送るような無駄はしないことだ。・・・他人の意見なんかで、自らの心の声や直感をくもらせないことだ・・・・


5. 授業で、今頃になって、ジョブズとこの有名なスピーチを取り上げたのは、もちろん亡くなってから彼をめぐる多くの言説、報道、伝記などに触れたからです。

その中で今年初め、NHKが報道した
「スィーブ・ジョブズの子供たち、ハングリーであれ、愚かであれ」を見て、なかなか良かったので、これをブルーレイに収録して学生に見せました。

番組は、あのときジョブズのスピーチを聞いた卒業生の、約7年後の人生を辿ったものです。
リーマンショック等の波にもまれ、ある者は失業し、ある者は希望を持って選んだ仕事に失望して退職する。そして、繰り返し、あの時のジョブズの言葉を聞き返し、考える・・・

6. これを見せて、もちろん、ジョブズの軌跡、アメリカのビジネスと起業家精神イノベーションといった点にも触れました。
同時に、「自主的に生きる意味」や「君たちの“点(the dots)”は何か、過去を振り返ってみよう」という問いも投げかけました。


そして最後に、この番組を見てあらためて私が感じた些細な・しかし意外に大事と思う点を2つ触れました。
(まことに「神は細部に宿る」のではないか)

そのうちの1つは、卒業式の記念講演の講師に誰を招くか?
ということを、大学当局ではなく、学生の自治会メンバーが話合って・決めていく、その結果、衆議一決でジョブズを招待することとなる。

終わって、「最初は気が進まなかったが、終わって、こういう機会を与えてもらって実に良かったと感謝している。本当に有り難う」
というメールが、スティーブ・ジョブズから「学生たち」に届く。


ここを、どういう風に感じたか?
と学生たちに訊いてみました。