早速岡村さんが行かれたそうで嬉しいことです。
責任者のカタルーニャ出身の女性に会って話を聞いた。
「公的なものでなく、支援者に恵まれて設立できたようです」
「運営はなかなか厳しいようで・・・田澤さんは支援者であり良き理解者なんでしょう」
とありました。京都とバルセロナが姉妹都市になって公的支援の対象になればいいな、と考えました。
2.『僕たちのバルセロナ』は7歳の悠君の語りを通して、彼が言葉や異文化を徐々に受け入れていく「物語」ですが、ブログでは「蓼科はもう秋で、ここにも「物語」がある」と書いたところ、田中美貴子さんから、
「それぞれの「物語」も良い思い出ですね。私は長女んちの「新米」もういただきました。美味しゅうございました・・・宇治の稲刈りは9月の末頃になりそうです」
と素敵なコメントを頂きました。
3.いま蓼科の田も日ごとに黄金色になっています。
先週の半ば,約2か月の滞在を終えて東京に引き上げました。
帰る直前、田の景色を素人写真に残しました。
日本のもっとも美しい眺めではないか、といつも感じます。
4.ノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロが1989年35歳で発表した『日の名残り』は著者の最高傑作と言われます。
(1)本書は、語り手のスティーブンス(貴族の屋敷で執事を長年勤めた)が、休暇を貰って1956年の「現在」のイギリスの「西部地方」を旅しながら昔を回想する「物語」です。
(2) スティーブンスは、オックスフォード郊外の屋敷を出発して、「イギリスで最もすばらしい“田園風景(a view of the country side)”」を楽しみつつ、車で西に旅します。
5. 旅に出てすぐに、おそらく有名なコッツウォルドでしょうか、「うねりながらどこまでもつづくイギリスの田園風景」を眺めながら感慨を抱きます。
(1)「イギリスの風景がその最良の装いで立ち現れてくるとき、そこには、外国の風景が−―たとえ表面的にはどれほどドラマチックであろうとも―決してもちえない品格がある。そしてその品格が,見る者にひじょうに深い満足感を与えるのだ、と」
(2)それは「偉大さ」にもつながるが、「表面的なドラマやアクションのなさが、わが国の美しさを一味も二味も違うものにしているのだと思います。問題は、美しさのもつ落着きであり、慎ましさではありますまいか。イギリスの国土は、自分の美しさと偉大さをよく知っていて、大声で叫ぶ必要を認めません」。
(3) スティーブンスはこのように、イギリスの風景には「品格」がある、そしてそこがイギリス人の国民性ともつながるのではないか、と考えを拡げていきます。
6.しかし私は、稲が黄金色になる時期の日本の里山の眺めは、スティーブンスが感嘆するイギリスの田園風景に比べて、勝るとも劣らないのではないかと感じます。
それが国民性としての「品格」につながるかどうかは、スティーブンスほど自信はありませんが、つながるとよいなとは思います。
そして5歳で日本を離れたカズオ・イシグロの記憶に、果たしてこの日本の景色が刻まれていただろうかと考えます。
7.最後に、『日の名残り』の主人公が英国人は「品格」を大事にする国民だと理解する、その英国では、8日エリザベス2世が逝去しました。
米国ニューヨーク・タイムズは、「激動の時代における、優雅と安定の世界的な象徴」の逝去を悼みました。
英国に20年以上住む次女はメールで「大往生です。一つの時代の終わりを感じます」と書いてきました。