- 今回は、友人の新著『ウクライナ戦争と和平法則』(廣田尚久著、東京図書出版)の紹介です。
(1) 同封された手紙には、「(6月の)クラス会で相談に乗って頂いた本は、こういう形になりました」とあり、
(2)「ロシアが軍事侵攻したとき、先の世界大戦を知る最後の世代として何か書いておかなければならないと思い、(略)私の専門である和解や紛争解決に引き付けて、(略)和平の法則性を記述の中心にしました」。
- 著者は中高・大学で一緒の、尊敬する友人です。
(1)本職は弁護士ですが、法政の大学院で教え、多数の著作があります。
コロナ以降は執筆に専念し、「共存」という価値観のもとに社会を構築する「共存主義」を提唱しています。
(2)民事が専門ですが、「訴訟」に代えて「調停」や「仲裁」による「和解」を目指し、実際の事件の幾つかをこの方法で解決しました。
(3)「訴訟」は、裁判による物理的強制力をともなう「勝ち負けを決めるシステム」です。
対して「和解」は、裁判によらずに当事者の自由意思を尊重し、「私的自治」の理念に基づいて紛争を解決する仕組みです。
(4)その考え(「紛争解決学」)が国家間の戦争にも応用できないかを述べたのが本書です。
- 以下、内容を簡単に紹介します。
(1)まずは戦争、具体的には20世紀以降の主要な戦争の歴史を理解し、ウクライナ侵攻の現実を検証する。
(2) その上で、「和平」とは、「戦争の決着を勝ち負けによって決するのではない」という理解に立って、和平に導くにはどういう「法則」が必要かを考える。
(3)そこで彼が提案する「法則」とは、
・「戦争から和平に導くことは極めて困難である」という認識を持ちつつ、
・「和平の論理は戦争の論理とは真逆である」ことを理解し、
・「何とかして、対話と合意に向けて努力する」。
・そのためには「「赦し」という協調のカードを使わざるを得ない」
・「正義を掲げていては和平はできない」
・「懲罰は和平に有効性を持たない」
・具体的には、「調停」や「仲裁」の有効性を信じ、「過酷な条件は和平後に禍根を残すので避け」、「卓抜した和平案を出すこと」が必要である。
- 以上は、「戦争が起こったあとで和平をする法則」の考察です。
著者は最後に、そもそも戦争のない世界を実現するためにはどうすべきかも考えます。
そのためには戦争の種子を取り除くことに尽きるとして、
(1)資本主義から、「共存」を価値に据えた共存主義社会へのシフト
(3) 国家の存在が戦争の土壌になっていることを認識し、できるだけ、国家、国家と叫ぶのはやめようと意識すること
という夢を語ります。
5.所詮理想論ではないかと批判されることを覚悟のうえで、敢えて提言を試みる同年齢の友人の情熱には心を打たれました。
本著の「おわりに」で彼は、「戦争から和平へという社会現象に法則性を探求することは、社会科学を研究するものにとっては常道的な在り方だと思う」と述べ、「戦争のない平和な世界が到来することを祈りつつ」と書いて本書を閉じます。