- 前回は茅野駅前の「まちライブラリー」を紹介しました。
(1)本好きのMasui,田中、飯島、岡村の各氏からコメントを頂きました。
(2)本を買ってもツンドクになってしまうという嘆きも寄せられました。
- 今回は本の話です。
(1)年下のEさんが定期的に「読書会」を企画してくれて、先週の週末も6人が集まり、楽しく過ごしました。
(2)テキストはアガサ・クリスティーのミステリー劇「ねずみとり(The Mousetrap)」です。
(3) アガサ・クリスティーなんて古いねと言われそうですが、1952年にロンドンで初演されたこの芝居、今も上演されています。
コロナのため1年強中断しましたが再開されて、公演回数は3万回に近づき、中断を除けば70年以上続き、観客数は延べ1千万人。世界演劇史上、上演回数の最も長い芝居です。
- 私は1988~91年の3年弱ロンドンに暮らしました。
到着早々「ねずみとり」を観劇しました。初演から36年目、公演回数が1万5千回を超えた年でした。
英語がちんぷんかんぷんで全く理解できませんでした。
反省して原作を読み、以後彼女の作品を殆ど読みました。今も本棚に並んでいます。
- 「ねずみとり」は、こんな風に始まります。
(1)若夫婦が経営する山荘に、大雪をついて5人の泊り客、そして1人の刑事が現れた。折しも、ラジオからはロンドンでの殺人事件のニュースが流れる。
(2)刑事は、「10年ほど昔近くの農場で児童虐待事件があり、当時虐待されて今は成長した青年が、虐待に関わった3人の命を狙っている」。
(3)「ロンドンで殺害されたのはその1 人。残りの2人がたまたま山荘にいることが分かった。2人の命を狙う犯人も来ている筈。だから刑事は、誰が犯人かを探して逮捕するためにやってきた」と皆に説明する。
- その後の展開は省略しますが、この芝居がなぜかくも人気があるかというと、
(1)「バッキンガム宮殿やロンドン塔と同じく、ロンドンの象徴となった」と言われる作品である。
(2)犯人捜しの面白さに加えて、家庭劇でもあり、ユーモアもある。殺人事件が題材であるにも拘わらず、残酷な場面もなく「ほどよい趣味の良さ」があり、子供連れでも楽しめる。
(3)その上、物語の時代は第二次世界大戦の直後である。
英国はヒトラーのドイツと戦い、空襲で多数の死者も出た、しかし最後には勝利した。苦難と栄光の日々を記憶に残しておきたいという意図もあるのではないか。
(4)「過去を水に流す」日本人と違って、英国人は過去を記憶にとどめようとする意志がより強いかもしれません。
だから登場人物の中には、戦争に兵士として参加し「傷」を負った者もいます。犯人が残酷な殺人を犯すのは、「たとえば、日本軍の捕虜(原文は”a prisoner with the Japs”)にでもなってひどい苦労をして帰ってきた、そんな過去があるからではないか」と発言する人物まで出てきます。
(5)実に面白い芝居ではあるのですが、観客は今でもこういう台詞を聞いているのかと思うと、その点だけはいささか辛い気持になります。