「Discretion(自由裁量))と「権限によらないリーダーシップ」

  1. 先週、中高が一緒のS君と会食する機会があり、元旦早々の惨事が話題になりました。

S君は、大学院で流体力学を学び、長く某大手企業の技術屋として、ヘリコプター設計の第一人者でした。

  1. 私からは素人の素朴な質問になります。

(1)「今更と言われるだろうが、何故地震の予測が出来ないのか?確度が低くても「起きる可能性がある」と言えれば、少しは事前に手が打てたのではないか。このような状況は悲惨すぎる」

(2)彼も専門ではありませんが、地震の予知がいかに難しいかについて説明してくれました。

(3)要は日本列島の置かれた構造問題で、宿命であり、これからも地震と付き合っていくしかないのではないかと言っていました。

他方で、同じ島国の英国がいかに天災の少ない恵まれた国かという話題にもなりました

(4)地震の最大被害国である日本は、英知を結集して世界に先駆けて、この分野の研究を一層進めてほしいという願いでは、二人とも一致しました。

  1. 次いで、羽田の航空機衝突事故です。この分野は彼の専門です。

(1)今回いちばん印象に残ったのは日航乗務員の優れた危機対応だと思うとい

う点で、二人は同じ意見でした。

 

(2)S君はこの点を補足してくれました。

航空機の設計にあたっては、乗客の安全をいかに守り、機内から脱出させ

るか(evacuation)が最大の課題である。

アメリカのFAA(連邦航空局)から「TC(型式証明)」を取得する場合も、この点が大きな審査の対象になる。

(3)その際FAAは、設計のソフト面を重視する。その最大のチェック・ポイ

ントが、危機にあたって、経営者や現場にどれだけ「discretion(自由裁量・自主判断)」が与えられているか」である。

(4)そして、国別の違いがあって、「主要国の国際比較で、自由裁量の度合い

が一番高いのはアメリカで、最低が日本」というのが世界の常識である。

 

(5)日本では、航空業界に限らずあらゆる組織の決定で、「上役に・お上にお

伺いをたてる。ハンコをたくさん押して集団の責任にしようとする」文化が根強い。

こういう日本理解は、私も友人もよく理解できます。

(6)だからこそ、今回の日航乗務員が自らの判断に基づいて行動したことは、

もっともっと高く評価されて然るべきと考えます。

(7)今回の優れた対応は、ひょっとして日本の組織文化や国民性が少し変わっ

てきているからかもしれません。

あるいはもともと日航という企業文化が背景にあるかもしれません(旧東

京銀行には、同じく“discretion(自由裁量)”の文化がありました)。

(8)教育の成果もあるかもしれません。

昨年の秋にもと職場の同僚で、最近大学教授を定年退職したK君に会う機会がありました。ゼミで、学生に「Shared Leadership(リーダーシップは権限によらず、グループの全員が発揮すべき)」を実践で学ぶべく取り組んできたという興味深い話を聞きました。

この考えは「discretion自主裁量」を重視する考えと多少通じることがあるように感じました。