2週間前のニューズウィークから

梅雨が近づいて、うっとうしい天気が続きます。

授業で学生の出席状況も、一部に中だるみが見られるようです。

就職活動も山あり谷ありで、苦労している学生が少なくないことでしょう。焦らず、あわてず、マイペースで行きましょう。


マイペースと言えば、当方は、2周遅れぐらいで、雑誌を読んでいますが、5月12日号の「NEWSWEEK」アジア版が面白かったです。


1つは、「成功の犠牲者(The Victim of Success)」と題してロンドンについて。

この街があまりに景気がいいので、超お金持ち(とくに外国人の不動投資)と貧乏人しか住めなくなって、中流階級は逃げ出し、世界でもっとも物価の高い都市になり、治安も悪化しているという記事。


2つ目は、最近あちこち雑誌で目立つ、日本が内向きになっているという記事。NW
のは「この国はやはり島国」と題して、資本鎖国日本について。

ブルドッグソースやJパワーの事例を取り上げて、ひとり温泉に入っていい気持ち(plain old complacency)になっているうちに「アジアの金融統合の流れから取り残されている」と指摘しています。

最後が特集記事で、アメリカについて。
編集長のインド系アメリカ人ファリード・ザカリアが「ポスト・アメリカの世界」と題して、これも最近よく見られるアメリカ衰退論に,
反論しています。


ごく簡単に要約すると以下のような論拠です。


1.81%のアメリカ人が「この国は間違った方向に進んでいる」と自国に悲観的。


2.しかし、アメリカの力が低下したのではなく、「その他の世界」が興隆している認識が大事。


3.世界は「アンチ・アメリカ」から「ポスト・アメリカ」の世界に入りつつあり、どういう世界か?というと、

(1)史上かってない「平和な時代」。テロも7年間、内部紛争に終始している。悲劇が報道されているが、質量が増えたのではなく情報がグローバル化したため。
(2)1960年代の日本・ドイツの興隆以降、中国・インド・ロシアを始め、多様なプレイヤーは全て現体制に組み込まれており、「アンチ」ではない。
(3)貧困も、1日1ドル以下で暮らす最貧困層が世界の人口に占める割合は、1981年:40%から04年には18%、2015年には12%、と予想されている。
(4)懸念されるのは中国等にみられる「新しいナショナリズム」への対応で、プレイヤー(参加者)が増えて多様化していることへの新しい国際協調の枠組みが必要。


4.というように考えれば、21世紀は再び「アメリカの世紀」ではないか。
(1)アメリカの強さの源泉は、教育でもなければ研究開発投資の大きさでもなく、「移民」にある。世界で最もオープンで弾力性に富んだ社会構造にある。

(2)そのためにも、アメリカ人は「内向き」になってはいけない。
「21世紀初頭、アメリカは世界をグローバル化するという偉大な歴史的使命を達成した・・・・。しかし、自らをグローバル化する課題にいまいっそう取り組むべきではないか」

『ポスト・アメリカの世界』という新著を出した、特集記事はその紹介です。


「(金持ちと貧乏人に分断された)二都物語」ロンドン、資本鎖国といわれる日本、そして、自らをグローバル化する課題に取り組む移民国家アメリカ、と3つの社会についての現状分析を読んで、いろいろと考えさせられました。