人生に「目的」はあるか?とワークライフバランス

1. 我善坊さん、柳居子さん、osamuさん有難うございます。
たしかに私の場合、「晩酌は五勺ほどにて世の嘆き
はやわが身より消えむとぞする」と詠む前川佐美雄さんと違って、
もう少し必要で、2合もあれば人生バラ色に見えてきます。
ご指摘の通り「楽しいやり取り」で私の駄文を助けて頂き、本当に感謝です。


2. と言いつつ、駄文の方も続けていますが、年の瀬も迫り、
年内に記録しておきたいと思うのが
(1) 12月17日(土)の午後、「友カフェ」という小さな
集まりに参加したこと
(2)福澤諭吉とゼミのフォロー
の2つです。今回は何やら、硬い題を付けましたが
「人生に目的を見つけろ、と言われても・・・」というお話です。


3.「友カフェ」という、異文化コミュニケーションを専門にしていて、
いろいろな訳書も出しているインテリの素敵な女性が主宰している
集まりでは、
私も5月に「ソーシャルビジネス」について意見交換をしたことがあります。


今回は「ワークライフバランス」がテーマで、東京に転勤になった
京都KSENの仲間3人も参加してくれました。
リーダーは、外資系企業の日本法人の代表を務めたあと
大企業相手にキャリアや人材開発のコンサルタントに転じたという
有能な女性です。


彼女のプレゼンテーションによれば
「バランスのとれた人生が大事。
それを可能にするのが、
個人としての価値観と仕事上の目標設定をすべて含む人生設計で、
自己理解、ビジョンや夢、価値観、使命、そして生きる目的と
目標を考える・・・

これから老後を迎える人も、人生の集大成まで視野に入れた人生設計が必要、
これがワークライフバランス

という発想で、いろいろとコーチングをしてもらいました。

10名強の参加者に、各自が、
「過去を振り返って人生曲線(幸福と不幸の曲線)」
「自分のできること{能力}」「やりたいこと(願望)」
「やるべきこと(価値観)」「目的・目標・夢・ビジョン」
「自己開発行動計画書」
などを書いてもらうという趣向です。


3. KSENの仲間の1人が、「座禅のクラスに出たら、お坊さんから
“人生に目的なんかない”"掃除の目的はきれいにすることではない。掃除は掃除すること以外に
意味はない"と禅問答風に言われた」という発言があり、
私も、最近、若者に「夢を持とう!」だの「自分探しが大事」といった言説
が流行になっている風潮にやや違和感を覚えているので、
「生きる目的とは、所詮、義務(duty)を果たすことではないか」と
問題提起しました。

しかし、この「義務」という言葉には抵抗を覚える人が多かったようで、
「息苦しさを感じる」というコメントがその代表的なものでした。
「役割」と言う方がまだ受け入れやすいというコメントもありました。

実はやや意外だったのですが、どうも「義務」はいまや
流行らないようです。

私としては、
かってネルソン提督が、英国海軍の大勝利の報を聞きつつ
旗艦ビクトリー号の艦上で「私は義務を果たした(I have done my duty)」
と言って死去したことなどを念頭に置いていたのですが・・・


4. 私なら
「できることは?」と訊かれたら
「幸いに、まだ自分の世話は自分でできる。食べて・飲んで、
歩いたり・読んだり・書いたり・話したり・
考えたりすることもできる」

「やりたいことは?」「やるべきことは?」と訊かれても、
「以上述べた、いま出来ることで自分の義務を果たすこと」
としか返事できないように思います。


どうも、生来のひねくれ者で身も蓋もない言い方かもしれませんが、
あまり
「自分探し」に時間を使ったり
「幸福」や「夢」を追い求めたり
「目的意識」を持ちすぎるのもどうかなと若者に言いたい気持ちです。
それよりも、「好きな本」や「好きな銘酒」を探す方が大事ではないか。


5.ついでに言えば
ワークライフバランス(仕事と生活の調和、以下WLB)」というのも、
どうも良く分からない言葉で、
使う人によって意図しているところが違う、「定義が必要だ」という
典型的なケースだと思います。
「仕事と趣味・教育・家庭などの私生活とのバランスを図ること」
と定義する人が居ますが、
「そんなの、あなたの勝手でしょ」と言いたくなります。

以下は主としてジャック・ウェルチが言っていることです。
(1) 「WLFは優先順位をどう決めるか、人生でどのくらいの割合を仕事に費やすべきかの問題で、それは
個人の価値観によって異なる」。

(2) どのようなバランスを選択しても、トレードオフは避けられない。
「WLBを気にすることが出来るのは、時間をお金と取引のできる余裕のある人
にだけ許された贅沢ではないか。
ニューヨークで食料雑貨店を開いたばかりの韓国人にとって、WLBという言葉
は意味を持たないだろう。」

(3) 私生活のために仕事を犠牲にしようと思えば(少なくとも企業に勤めているなら)「ポイント」を貯めて、
それで支払うという働き方をするしかない。
つまり、実績をあげている人は、その「ポイント」を使って上司の理解を得て「豊かな私生活」に充てることが出来る。
それを使ったら、また実績をあげて「ポイント」を貯めるしかない。


(4) もちろん日本の企業文化は、「上司が残っていると帰れない」とか
「働く女性の子育てが極めて難しい」といった実情があり、
他方で(変化しているかもしれないが)「働らかなくても首にならない」文化もあり
これは大いに問題です。
しかし、それは今まで触れたWLBとはかなり違い、
優れて社会システムの問題で、WLBなんて言う前にまず取り組まなければ
なりません。「WLB」ではなくて
「日本の企業文化、雇用慣行をどうしていくか?」
という問題です。
その結果、時間の出来たサラリーマンが余暇に、愚劣なテレビばかり見ているかもしれない・・・もちろん本人が
満足していればそれで一向に構わないが、
これが、本来の、WLBは「あなたの勝手でしょう」という意味だと思います。