これが最後のジャック・ウェルチと「競争」


1. 我善坊さん、またまた貴重なコメント有難うございます。
フェイスブック経由見て頂いている方にもお礼と同時にフォローしていないお詫びを申し上げます。
どうもフェイスブックというのがまだ苦手です。
元来がマイペース主義なせいか、スマート・フォンも使っていないので
インターネットに触るのは一日でも数時間のせいか、おそらくその両方が理由でしょう。


これでも年の割にはネットに触っている方だと思い、その分、昔に比べて本を読む時間が減ったな(老いて目が疲れることもあって)と嘆いているのですが、それでもまだどうしても書物の方に先に手が延びてしまいます。

我善坊さんの「競争」についてのコメントについて、「運動会が苦手だった」と書いてあって、仲間が居るのだと嬉しくなりました。
というのも小生は大の苦手で、徒競争でおそらくビリ以外になったことがない。
当時から、走るのが早い子、リレーの選手を、他の誰よりも尊敬していました。
この年になっても、(比較する方がおかしいですが)ノーベル賞の山中教授より、100メートルを10秒以下で駆け抜ける姿の方を尊敬してしまいます。
いちばん興味がないのが「口先だけの競争」で、どうも選挙運動を見たり聞いたりしていると、そんな印象を持ってしまいます。


2.マキャベッリの引用は大歓迎で勉強になります。
“Virtu(英語のvirture,いまは「徳・美徳」を意味するのが普通だが、もともとは「勇気・男らしさ」の意味) ”と“Fortuna(英語のfortune、「幸運」)”のバランスが大事、というのは面白いですね。

Fortunaは、もともとはローマ神話の「豊穣多産」の“女神”から来ている。
ということは、人間、「雄々しさ」と「女神の加護」の両方が必要だ、と考えると面白いですね。


3.「競争が精神であり、倫理である」とまで言われると「?」と言いたくなるのも同感ですね。
しかし、ジャック・ウェルチにまだこだわるか、と言われそうですが、ともかく面白い人物で、「率直かつ自己主張の強さ」には驚きます。

今回も「自伝」からまたまた、以下2つの挿話を紹介します。

1つは、入社1年目のこと。
1960年に年俸1万500ドルのエンジニアとしてスタートした彼の翌年の昇給額は1000ドルだった。
これが同じ部屋で働く4人全員同額であったことに、彼の怒りが爆発する。
直属の上司に抗議をしたが受け入れられず、職探しを始めると同時に、辞職の意思を表明して送別会まで予定されていたところに、上層部から引きとめられ、結局、彼ひとり3000ドルの昇給を約束させたのである。
この経験について彼は以下のように書いています。


・・・(上司が)私を、他人と違う特別の存在と認めてくれたという事実が私に強い印象を与えた。
そのとき以来、差別化することが私の経営の基本になっている。
(略)トップでいるためには、差をつけること、ベストの人間に報い、無能な人間を取り除くことが全てである・・・・

逆にいえば、「人並み以上に働いて、それでも人と同じ昇給額であっては、なぜいけないのか」という思考回路はウェルチにおいては存在しない。
日本の会社はかってはそういう制度に支えられていたと思いますが、ただ、そういう人たちも「上はちゃんと見てくれてる。いつかは報いてくれる・・」という暗黙の期待はあったのでしょうね。
それに比べれば、きわめて「オープン」な競争文化であることは確かでしょう。
今の日本の会社や若者はどうなのか、分かりませんが。


4.もう1つのエピソードは、ジャック・ウェルチがCEOに選ばれるときの、有名な「飛行機面接」です。
(1)自伝「わが経営」を読んでいていちばん辟易するのは、CEOに選ばれるまでの、彼(および他の候補者)のなりふり構わぬ努力と売り込みです。
(2)前のCEOのジョーンズが、人事担当の副社長や社外取締役の協力を得て、6年掛けて自分の後継者を決めていく、そのプロセスは「競争においてルールを守らなければならない」という意味では、きわめてオープンかつフェアであり、同時に、まことに熾烈です。


まず社内から19名の候補者リストを作成し、これを10人に絞り、難しい仕事に挑戦させるというような様々なテストを経て7人、さらに3人と絞り込んでいったのです。

(3)そこで有名な「飛行機面接」ですが、ジョーンズCEOは候補者全員に対する個別の面接で以下の質問をします。
「君と二人で一緒に社用の飛行機に乗って出張の際、飛行機が墜落する。2人とも死亡する。さて誰をCEOにすべきだと君は思うか?」

これに続く2人のやりとりに、読んでいて思わず笑ってしまいます。
ウェルチ「あなた(ジョーンズ)は死ぬかもしれないが、自分は何とか助かって、あなたの後、GEの経営にあたる」

ジョーンズ「それは駄目だ。2人とも死ぬんだ」
ウェルチ「自分しか適任者はいないから、答えるのは難しい」
ジョーンズ「それでも誰か居ないか?」
ということで、ウェルチはしぶしぶ、候補者の中から2人の名前をあげた・・・

他人を押しのけてでも(但しルールを守ってオープンかつフェアに)勝つこと、そのためにベストを尽くすという単純な思想がアメリカ精神の根底に流れていることを端的に示すエピソードだろうと思います。


5.山奥に住んでいると自然と動物の方が目につきますが、都会に戻るとやはり人間社会ですね。
もちろん山奥の鹿は、生き延びていくのはもっと厳しいでしょうが。