オバマと広島が海外の新聞の見出しになった日

1. 私の今回のブログはやはり、オバマ大統領の広島訪問です。
28日(金)、広島や長崎に関係のある人(とくに高齢者)を除いて、どれだけの日本人が関心を持ったかは分かりませんが、

私は、テレビの実況中継をNHKでみて、翌朝の日本の新聞を読み、その日の午前中は、もっぱら英米の報道を知りたいと、ネットを覗きました。
彼のスピーチもYou Tubeで何度も聞きました。

メディア(電子版)の主な見出しをあげると以下の通りです。
(1) ワシントン・ポスト紙「オバマ、広島で核兵器の廃絶をよびかけ」
(2) ニューヨーク・タイムズ 「広島を訪れたオバマ、“道徳革命”をよびかけ」
(3) ABCテレビ 「広島への歴史的訪問で、オバマ、「道徳的な覚醒」を訴える」
(4) CNNテレビ 「オバマ、広島の生き残り者と感情のこもった抱擁」
(5) 英国タイムズ「オバマ、最初の現役の大統領として広島へ」
(6) フィナンシャル・タイムズバラク・オバマ、歴史的な広島訪問」
(7) 英国ザ・ガーディアン紙「オバマ、”広島の記憶は決して消してはならない”」
(8) 豪州オーストラリアン「オバマ“空から死が降ってきた”と」


それぞれのメディアによって異なり、CNNを除く米国メディアは、未来を語るオバマを取り上げ、英国ガーディアンと豪州は原爆について触れました。


2. オバマ大統領の演説は、全文が日本の新聞に載っています。
私は、良いスピーチだと思いました。(たまたま出張でロンドンから一時帰国している娘も同意見で、感動的と言っていました)。
もちろん彼のスピーチのうまさには定評があります。「やっていること以上に言ってることが素晴らしい」と言われています。


印象に残ったのは、以下のような諸点です。

(1) 広島が9回、長崎が2回の他に、「被爆者」という日本語を2回使ったこと。
―「“Hibakusha”の声を、いつか聞くことができなくなる日が来ます。しかし1945年8月6日朝の記憶は絶対に消してはなりません」

「私たちは過去から学び、選択することができます。過去の過ちとは異なる物語を子どもたちに語ることができます。(略)私たちはこうした物語を“Hibakusha”から学ぶのです」


(2) 広島で亡くなったのは、日本人だけではないこと。
「私たちは、なぜ広島を訪れるのでしょうか。それほど遠くない昔に恐ろしい暴力が
暴れ狂ったことを思い起こすためであり、死者を弔うためです。死者には10万人を超える日本の男女と子どもたち、数千人の韓国人、12人のアメリカの捕虜もいました」


(3) 被爆者から学ぶ「物語」を具体的に語ったこと。
――本当に憎むべきなのは原爆を落としたパイロットではなく、戦争そのものだと語った被爆者の女性もいました。また「原爆で死んだ米兵の遺族を探しあてた男性は、米国人も自分と同じように家族を亡くした喪失感を抱えていると感じたと言いました」と。


(4)アメリカ独立宣言の有名な言葉―「すべての人間は平等に造られ、造物主によって、生命・自由・幸福追求という不可侵の権利を与えられている」―を引用したこと。
そして、この言葉を「物語(Story)」と呼び、決して容易には実現しない、アメリカ国内であっても簡単ではない物語だが・・・・
しかし、「努力して、世界中に広められるべき理想です」として次のように続けます。

「私たちは、この物語を語るために広島を訪れるのです。
そして私たちはおそらくここで、自らの愛する人たちのことを思い浮かべるでしょう。
朝起きてすぐに出会う子ども達の笑顔。朝食の食卓での暖かい触れあい。両親が心の和むように抱擁してくれたこと。
私たちは、こうしたことを思い起こし、愛する人同士の貴重な触れあいのひとときが、同じように71年前のここ広島にもあったのだと感じるのです。死んでしまったあの人たちも、私たちと少しも変わらない人だったのだと。


3. 最後に、森重昭さんについて触れます。大統領がスピーチで「原爆で死んだ米兵の遺族を探しあてた男性」と言及した人です。


この人と彼を主人公にした映画については、「映画「ペーパ―・ランタン(灯篭流し)」と森重昭氏」と題するブログで紹介しました。

http://d.hatena.ne.jp/ksen/20160417

CNNテレビは見出しで「広島の生き残り者と感情のこもった抱擁」という見出しを掲げました。

英米のメディア電子版はすべて、この写真を掲載しました。
ガーディアン紙は次のように報じました。

――とても感動的な瞬間だったが、オバマ大統領は、森重昭氏を抱擁した。被爆して生き残った79歳の森氏は感情を抑えきれないように見えた。
「大統領は私と抱き合いたいという仕草をみせてくれました。だから私たちはそうしたのです」と彼は語った。何十年もかけて12名のアメリカの戦争捕虜の遺族の行方を捜し、この12名が公に原爆の死者として認定されるのに尽力した。
東京新聞によると、同氏の出席はアメリカ側の招待によるそうです。


4.そう言えば、私のブログを見て、「この映画を観たいがどこで上映しているか?」と質問してきた人がいました。

ご興味のある方は以下のサイトの最後に、短いですが、予告編を見ることができます。
http://abcnews.go.com/Lifestyle/graduation-speech-harvard-calling-powerful-youll-hear/story?id=39427065

「映画「灯篭流し」で検索すると沖縄の名護市で広島県人会が、4月末に上映と作曲者のトークショーをやったというのを見つけました。

また6月18日〈土〉には東京港区で、ある研究会が主催して上映するというサイトもありました。
一般の映画館ではやっていないのかもしれません。
それにしても、東京六本木の国際文化会館での試写会(これはアメリカの財団が企画したものです)のすぐあとに、まず沖縄でやったという事実に、ちょっと感心しました。
やはり、沖縄という場所は、ヤマトンチュー以上に戦争の悲劇を体験し・記憶している人が多く、アメリカに対する想いも複雑で深いのではないか。だから、こういうことへの感度が高くなるのではないか・・・・と感じました