国連「世界幸福度報告書2017」で日本は51位

1. 柳居子さん長文のコメント有難うございます。見事な「無形資産」を披露して頂き、他の高齢者にも大いに参考になりますね。100歳になるまでチョコレートが届くことでしょうと、長寿を祈りあげます。「幸福な日本人」の1人でしょう。

ロンドン郊外に住む、娘のところからは春の花便りが届きました。
春の到来は、幸せな気分にさせてくれます。
3月20日は「国際幸福の日(The International Day of Happiness)」だそうで,
この日に合わせて今年5回目の国連「世界幸福度報告2017」が発表されました。


2. 155か国の「幸福度」をランク付けしたもので、ノルウェイが1位、日本は51位という評価でした。


インターネットに掲載されて、本文だけでも188頁あり膨大ですが、総論38頁だけをダウンロードして何とか読み終えたところです。
調査の手法をごく簡単に言えば、

(1) 各国の世論調査で、自分の幸福度を「主観的に」0から10までのスケールのどこかに位置づけてもらう。

(2) これをもとに、以下の6つの説明変数&統計データによる「回帰分析」(定義は省略します)をして、国別の点数をつける。
(a) 1人あたりGDP
(b) 健康寿命予測
(c) 社会の助け合い状況
(d) 寛容さ
(e) 選択の自由
(f) 政府や企業に対する信頼、


3. その結果が155か国の国別ランキングになる訳で

(1)「幸福度ベスト10」は、1位ノルウェイ(満点10点のところ7.54)、2位デンマーク(7.52)、以下アイスランド、スイス、フィンランド、オランダ、カナダ、ニュージーランド、オーストラリア、スゥエーデン。
因みにこの10か国の顔ぶれは2016年報告も同じ。

(2)「幸福度ワースト10」はルアンダ、シリア、タンザニアなどアフリカ諸国が多く、上位10か国とはほぼ4点の開きがあります。

(3)因みに、アメリカ14位(6.99)、ドイツ16位、英国19位、シンガポール26位、フランス31位、台湾33位、マレーシア42位、ロシア49位・・・など。
(4)日本の51位は5.92点で上位5か国とは1.5ポイントの差があります。


この差がどこから来るかですが、
(1) 日本のGDPは世界3位だが、1人あたりのGDPとなると27位に後退する。
(2) 健康寿命はもちろんランクが高いが、それ以外は見劣りする。とくに、(c)社会の助け合いと(d)寛容さの2つがかなり劣る・・・
といったところでしょうか。


4. 因みに本報告書の特徴は
(1)「幸福の国別評価」には「主観的」(自分が幸せだと思っているかどうか)な物差しが重要だという考え方を採用している。
(2) 「幸福」の指標としては、経済的な豊かさや健康だけではなく
「その国の社会的基盤(social foundation)」がきわめて重要だと強調している。
更に言えば、「経済的豊かさ」や「健康」も社会基盤によって支えられる、という主張。


報告書から読み取れるのは、こんなメッセージです、
「トップ10か国は西欧の比較的小さな、産業化された国が多い。1人あたりGDPも極端に大きい国ではない。彼らの「高い幸福度」の主因は、1人1人を支える強固な社会基盤と平等感にある」


5. 報告書は、(1)「主観的な」幸福感と(2)「6つの指標」の数値に若干の乖離があることを認めています。
例えば、ラテン・アメリカでは前者の平均が後者より0.6点高くなり、他方で東アジア(日本を含む)では逆に低くなる。
そしてこれは文化の違いによるものだろうが(ラテンの人たちは楽観的・・・といった)、その乖離は大きくはなく、(2)の6つの指標で、(1)「主観的な幸福度(subjective well-being)」の殆どが説明できるとしている。


6、 私たちが考えなければいけないのは、あるいはこの国の指導者に考えてほしいのは、
51位が果たして妥当かどうかというような議論ではなく、ましてや「こんな低い数字はおかしい」と批判したり,無視するのではなく、

(1) 少なくとも、国連が主導している、世界に公表されている国際調査で、日本のランクは決して高くないという事実。
(2) その中で「助け合い」「寛容」「自由な選択」といった項目で評価が低い。
(3) かたがた、前述したように「客観的な指標」である1人あたりGDPからみても27位(為替相場による変動は多少あるものの)は決して威張れる数字ではない。
・・・ではないでしょうか。


7. 最後に「日本の貧困」という問題についても簡単に補足します。

たまたま、先週の火曜日に、毎月集まる元の職場の同期会がありました。
神田の如水会館にこの日は10人出席し、私が前座で「遠藤周作の『沈黙』とスコセッシ監督の映画化」について短く話し、
そのあと某君が「日本の貧困問題――貧困・格差の測り方」と題して発表がありました。

以下の指摘が特に記憶に残りました。

(1) 日本の「相対的貧困率」(定義は省略)は高い。OECD加盟国で実質、アメリカに次いで2番目。2015年で全世帯の16.1%が「貧困層」。

(2) とくに1人親世帯の相対的貧困率は、OECD加盟国間で世界最悪。2015年で大人1人子ども1人世帯の貧困率は、実に54.6%。
(3) 1980年代半ばから、格差拡大傾向。その後の無策あるいは間違った対策の結果、世界最悪に近い状態を招いた。
ジニ係数(定義は省略)ベースで、日本では、所得再配分効果が非常に小さい。特に、税制による再配分効果はほとんどない、OECD最低。

(4) 以上から言えるのは、「日本は平等の国」というのが間違った認識であるという事実と、政策の対応が遅れているという懸念。
この認識がどうも共有されていないのではないか。それには欧米に比べて、データの不足、あるいは情報公開の不足もあるのではないか。
「事実」を政治もメディアも直視して、真剣に取り組むべきではないのか。--


この国のトップ・リーダーは、トランプに会ったり、メルケルに会ったり、プーチンに会う予定だったり、忙しいようです。
その「外交大国」ぶりは一部の国民のプライドを高めているかもしれない。


しかし、内部では「ひとつの国民国家という共同幻想が打ち破られている」という、ある識者の指摘を思い出しました・・・