BBC(英国放送協会)の「健康に暮らす国とCOVID-19」の記事

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1.京都では、山鉾巡幸も中止、祇園お茶屋も「イノダ」も臨時休業とのことで、一時的とはいえ、文化と伝統も消えていきます。

 このところ毎回COVID-19の話題ですが、前回の岡村さんのコメントに、家に四六時中一緒にいると、「DVを初めいろんな問題が生じているという報告が気に掛かります」とありました。本当にそうですね。

「戻ると気配でわかるのか、ネコが玄関先でうるさく鳴いてまとわりついて来たのに、近頃は家に居る時間が長い為か、僕が居てもそそくさと二階に上がって行くのです」ともあり、猫でもそうなんだと面白く読みました。

 それで思い出したのは、欧米人のダブルベッドの習慣です。欧米ではどんなに大きな家に住んでいても夫婦のダブルベッドが習慣のようですね。数年前に日本でも評判になった「ダウントン・アビー」という英国発の連続TVドラマで、主人公の伯爵夫妻がお城のような、部屋が何十もある大邸宅に住んでいながら、寝るときは同じ部屋で、しかもダブルベッドで寝る場面が何度も出て、不思議でした。

 あれでは日本人以上に、夫婦間の感染の度合いは高いのではないでしょうか。

 

2.下世話な話になりましたが、今回は、英国放送協会(BBC)の電子版4月20日の、「「健康指数」の高い国におけるCOVID-19への対応」に関する記事の紹介です。

・レガタム研究所という英国シンクタンクが毎年「繁栄度指数(prosperity index)」を発表しています。

 各国の繁栄度を「生活の質」で測るという考えで、160 ヵ国以上について、国連などの公式統計をもとに著名な専門家が、(1)治安と安全保障(2)経済(3)政治と統治(4)生活水準(5)教育(6)自然環境など合計12の項目ごとに評価をして、それを総合して国別の順位を発表しています。

・実は、このブログでも2011年度の「国別順位」を紹介したことがあります。ランキング付けにどれほどの意味があるかはともかく、大まかな傾向を見るには参考になります。

 2019年の総合順位の上位10か国は、北欧4国にスイス、オランダ、ニュージーランド、ドイツなどでほぼ固定メンバーです。年ごとの順位の変動も少しはあります。例えばアメリカは、2011年の総合ランキング10位から2019年は18位に、中国は52位から57位にランクを落としました。

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3.この12の評価項目の1つに「健康度」があります。

 BBCは今回、このレガタム研究所の指数を使い、もともと「健康度」評価が比較的高い国を5つ選び、これらが新型コロナウィルスの対応でも評価できるか、評価できるとするとどういう点か、を調べました。

 選んだ5か国は、

・「日本」(レガタム研究所の「健康度」順位は2位、「総合評価」は19位。)

・「韓国」(同5位および29位。)

・「イスラエル」(同11位および31位。)

・「ドイツ」(同12位および8位 )

・「オーストラリア」(同18位および17位。)です。

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4.BBCは、この5か国の新型コロナウィルスへの今までの対応を総じて評価していますが、その理由を私なりに整理すると以下のようになります。

(1)政府の対応の速さー日本以外の4か国(例えば豪州は、写真にあるようにシドニー郊外ボンダイビーチを早くも3月21日に閉鎖した)

(2)検査体制の充実と効率よい迅速な対応―日本以外の4か国(例えば写真にあるように、イスラエルは容易に検査ができる仕組みを整えた)

(3)医療システムの充実(国民皆保険・安い医療コストを含む)―日本を含めて全て

(4)トップのリーダシップと政府への高い信頼感―ドイツ、韓国

(5)地方分権のメリット(州政府への権限移譲)ードイツ

(6)国民の健康意識の高さ―日本

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5. ここで私が面白いと思ったのは、(3)の医療システムは日本を含めてすべての国が評価されている。

ところが、政府の対応と検査体制(上記の(1)&(2))となると、日本だけが評価されていない。

代わりに、唯一「国民の意識」が出てくる、という点です。

―具体的に日本についてどういう点を評価しているかというと以下の通りです。

 (1) 新型コロナウィルスへの今までの的確な対応は評価される。

 (2) 心配は徐々に悪化の傾向が見られることで、首相は「緊急事態」を宣言した。ただロックダウンには至っておらず、ここまでは優れた医療システムのお陰と言える。

(3) 加えて、もともと清潔好きな国民であり、普段から健康志向がきわめて高い。日本人の6割が毎年、定期健康診断を受けるという統計もある。

(4) マスクも、以前から当たり前のように国民の多くが使用していた。

(5) 検査数は少なく、この点は遅れている。しかし、誰もが具合が悪いとすぐに病院に行き、CTスキャンをしてもらう。

―他方で、韓国やドイツでは、政治リーダーに対する高い信頼と支持が強調されます。

―他国についての評価で出てくる「政府(government)」という単語は、日本について1度も出てきません。 

 以上、BBCの記事を読むと、「日本は政治のリーダーシップは、特筆することはない。しかし医療システムと国民の健康志向の高さは従来から「レガタム」も認めている。それが今回の伝染病感染にも生きている」ということになりそうです。

 もちろん、事態はこれほど単純ではなく、医療現場の崩壊も懸念されて、楽観視はできないでしょう。しかし日本の強みは「国民の健康志向だ」という見立ては、納得的ではないでしょうか。

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6. ところで、この「レガタム繁栄度指数」ですが、「健康度」では日本は2位(1位はシンガポール)と立派なものです。

 しかし、総合評価は19位です。もちろんこれでも高い評価ですが、この順位は「個人の自由度」は31位、「ソーシャル・キャピタル」は132位という低い数字が足を引っ張っていることも報告しておきます。

ソーシャル・キャピタル」は「社会関係資本」と訳されますが、社会における人々のつながり・ネットワーク・信頼関係などの指標です。

 皮肉な言い方になりますが、「日本では、社会や人々はあまり頼りにならない。だから自分の健康は自分で守る、そのため病院にも頻繁に行く」ということでしょうか。

 もちろん、最初に書いたダブルベッドに寝ないといった文化や風習も大きいかもしれません。少なくとも夫婦間では、日本人は昔から「ソーシャル・ディスタンシング」に慣れているのかなとも思いますが、それにしてもDVが増えているのは悲しい話で気になります。