米タイム誌「コロナ対応ベストの国は?」(イアン・ブレマー)

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1.まだ「ステイ・ホーム」中の先週に、パソコン詐欺にやられかけました。

(1)たまたまロンドンから「フォーブス・ジャパン」に寄稿した記事を読んでくれというメールが来て、サイトを開けていろいろ操作しているうちに、突然警報が鳴り、ブロック画面が出てPCが動かなくなりました。(メールにも「フォーブス・ジャパン」のサイトにも罪はなく、理由は分かりません)。

(2) 画面にはマイクロサイトの名前で、「不審な操作があったのでブロックした。すぐに連絡しろ」という表示が出ます。

 当方は不審な操作は一切やっていない、それなのにPCが突然動かなくなる状況は、焦ります。そこで、言われるまま「マイクロソフトのサービスセンター」と書いてある番号に電話したところ、片言の日本語であれこれ指示してきました。

(3) 途中まで指示通りに動かしてから、在宅勤務中の長女の亭主に連絡、「詐欺だ。間違いない」と言われて、電話を切りました。

(4) 彼がその日の夜駆けつけてくれて、悪玉ソフトらしきものを除去してくれました。持つべき者は「娘婿」。その後は問題なく動いています。

(5) マイクロソフトの名前を騙り、しかし全くの「詐欺」でした。彼に言われたのは、「~に電話しろ」とあったら、まずその電話番号をスマホででも検索してみることだそうです。

確かに、検索すると「この番号は詐欺です」というサイトが出てきます。「料理のレシピを見ているうちに突然、アラート画面が出て動かなくなった。電話したけど、怪しいので途中で切った」という、似たような経験談も載っていました。

(6)それにしても世の中、悪い奴がいるものです。皆様におかれては私ほど愚かではないと思いますが、十分にお気を付けください。

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2. 話変わって、米国タイム誌最新号6月22~29日号です。

同誌には、イアン・ブレマーが「どこの国がベストのコロナ対応をしたか?(Which countries have handled Covid-19 best?)」と題する寄稿をしており、以下はその紹介です。

(1) イアン・ブレマーは政治学者で、邦訳された著書も何冊もあります。たまたま6月25日の東京新聞NY支局が取材した記事「「Gゼロ」協調なき世界へ」を載せました。

コンサルティング会社の代表でもあり、同氏は、この会社による世界のコロナ対応の分析をもとに、「ベストの国10か国」を紹介しました。

あくまで現時点での評価であり、今後起こり得る第二波、第三波は想定外です。

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(2) 「ベスト」と評価されたのは以下の10か国です。カッコ内は人口百万人当たりの最新の死者数です(ちなみに、日本は8人)。

・アジア・オセアニア(5か国)――韓国(6人)、台湾(0.3)、シンガポール(4)、オーストラリア(4) 、ニュージーランド(4)

アメリカ大陸(2か国)――カナダ(225)、アルゼンチン(25)

・欧州(2か国)――アイスランド(29)、ギリシャ(18)

・中近東(1か国)――UAEアラブ首長国連邦, 31)

(3)以上の10か国には、他の調査でも高い評価を受けている「定番」の国が多い。

(4)その中で珍しいのは、ギリシャ、アルゼンチン、UAEの三か国でしょうか。

何れも、経済は苦境にある(UAEは石油価格下落、ギリシャは長年の経済危機、アルゼンチンは9度目のデフォルト(国家債務の不履行)を起こしたばかり)。

にも拘わらず、専門家、政治家(党派を超え、中央・地方が連携した)、市民の三者が結束した対応で当面抑え込んでいる、と高く評価しています。経済への危機意識を国民が共有していることが、コロナ対応に良い結果をもたらしているのでしょうか。

 

(5)このような,国全体の一致・結束した連携プレー、市民の専門家と政治家への信頼の高さ、情報の透明性、の3点が評価の基本になっているようで、上の3国に限らず、全ての10か国に言えることです。

またNZのように首相のリーダーシップ、市民に耳を傾け、自分の声で語りかけ、「誰もが住む家を失うことはない」と約束する決意や、「実質的な意味は小さいが」としつつも全閣僚が20%の給与カットした姿勢などを評価しています。

 

(6) 10か国のうち、人口5百万以下の小国が3つ(残り7か国の人口はほぼ1千万から5千万)、隣国と海で隔てられた国が4つ、そして女性が首相の国が3つです。

(7) そしてこの10か国の中で、イアン・ブレマー氏がもっとも高く評価する「ベスト中のベスト(あくまで現時点での)」は、台湾です。

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3. ということで最後に、台湾について補足します。

(1)イアン・ブレマーは、「台湾は中国の隣に位置するという、理想的とはとても言えない環境(かつWTOへの加盟を認められない不利な立場)にありながら、真に称賛すべき対応をしている。世界ナンバーワンである」と総括します。

(2)そして具体的には、以下の諸点を指摘しています。

・迅速に海外からの入国を止めた水際対策、

・完全なロックダウンや経済活動の封鎖ではなく、IT技術も駆使して、感染者を特定し、自宅隔離をし、感染経路を突き止めることを最重点にした、

・責任者の一元化、連携プレーや専門家の役割を重視し、連日国民に語り掛け、ビジネスセクターとも情報を共有し、一体感を強めた、

 

(3) なお、NHKETV特集が6月25日「パンデミックが変える世界」で,「第一波の封じこみに成功した台湾」を同じように取り上げています。道傳愛子さんの、前副総統でコロナ対策責任者だった陳建仁氏(ジョン・ホプキンズ大学博士)へのインタビューが中心です。

(4)インタビューの中で、陳氏から「民主主義を守りつつ、封じ込める」という言葉が何度も出ました。ドイツのメルケル首相が国民に呼びかけた15分弱のTVスピーチで、「民主主義」を4回使ったことを思い出しました。

また、「感染症対策を通して共感と感謝を学ぶ大切さ。知恵(wisdom)と共感(empathy)を両立させることがもっとも大切」といった印象に残る言葉を多く聞きました。第二波への十分な警戒と懸念・課題にも触れました。

(5)民主主義を守る姿勢がこの国に根付いていることを痛感しました。中国がいかに「1つの中国」を叫ぼうと、台湾に根付いている「民主主義」を破壊することは容易ではないのではないか、中国の方こそ台湾に学んで民主化に向けた努力をしていくべきではないか、と強く感じた次第です。

 

(6)面白いと思ったのは、「(市民に)正確な情報を、ユーモアをもって語る」と言っていたことです。そういえば、NZのアーダーン首相の語りからも時に「ユーモア」を感じることがあります。日本の政治家の言葉には、「民主主義」も聞きませんが、ユーモアもありませんね。