- 緊急事態宣言のもと、ほぼ終日家で昨年から持ち越した本や雑誌を拡げたり,ネットに向かったりしています。頂いた新年の挨拶も、コロナに触れることが多いです。
新年早々シドニーから届いた挨拶には、「一時上手く収まっていたコロナが、クリスマス前に再度勢いをつけ、今日からマスク着用が義務。違反すると罰金200ドル」とありました。
それでも豪州はまだうまくいっている方で、こう書いてくれた方もいます。「オーストラリアのコロナ感染拡大防止はモリソン首相の的確な対応で世界で「最良の国の1つ」と評価されています。首相は当初からぶれない一貫した政策で国民の信頼を得ました。政治家には珍しくサイエンスの学位を持っているそうで、種々のデータと医学の専門家のアドバイスをもとに政策実施しました。支持率 は65パーセントと長期に渡って高い支持率が続くのは記録だそうです」。
2.そんなメールを拝見しながら、英国エコノミスト誌昨年度最終号の「2020年のカントリー・オブ・ザ・イヤー(今年いちばんの国は?)」と題した論説を読みました。今回はその報告です。
英エコノミスト誌もタイムの「今年の人」を真似したかどうか、過去1年を振り返って、「いちばんだった国は?(country of the year)」を毎年選びます。
特徴的なのは、判断基準が「この1年間で、目立って良くなった国、世界を明るくさせた国」ということです。特に「民主主義を進めた国」に注目します。
そのせいもあるか、例えば2018年アルメニア、19年ウズベキスタンなど、私のよく知らない国が選ばれることが多いです。
3.「2020年の国」は、アフリカ大陸南東部にある、人口15百万人のマラウイ(Malawi)共和国です。私はほとんど初めて聞く名前で、何の知識もありませんでした。
ウィキペディアによると、「イギリス連邦加盟国。国土はほとんど高原上にあり、タンザニア、モザンビーク、ザンビアと国境を接している。独立以降、アフリカでは珍しく対外戦争や内戦を経験しておらず、“The Warm Heart of Africa(アフリカの温かい心)”の別称を持つ国」とあります。自然遺産が1つ(冒頭の湖の写真)、文化遺産が1つあるそうです。
(1) 言うまでもなく、昨年は世界中がコロナ禍に見舞われ、どこの国も最悪を防ぐのに
必死であり、そもそも「良くなった」と言える国は少ない.
(2)NZも、「前年より良くなった」と指摘することには議論があるだろう。
しかし、コロナは抑え込んでいる。アーダン首相は、「(人口)5百万のチーム」と呼んで、互いを思いやることを呼びかけた。国民の支持は圧倒的に高い。暮らしはほぼ元通りに戻っている。
(3) 台湾はさらに上手に、コロナ禍に対応している。
台湾を昨年いちばんの「国」と呼ぶか、「昨年いちばんの“事実上自治のある地域”」と呼ぶかは措いて(と、英国人らしい皮肉をこめて)、
台湾は、学校・店・飲食店を閉鎖せず、厳密なロックダウンもせずに抑え込んでいる。昨年経済のプラス成長が見込まれる数少ない国である。
しかも、蔡総統は、中国からの無法な圧力に屈せず、香港からの避難者を受け入れている。台湾は、中国の文化は自由民主主義と完全に両立しうることを、いつも私たちに思い起こさ
せてくれる。(いい言葉です!)
(4)アメリカを候補にあげるのは意外と思われるかもしれない。コロナ対応では最悪の国の1つである。
しかし、ワクチン製造で力を発揮したことは評価してよい。そしてトランプを退場させた有権者と、選挙に不正があったとする無茶な主張を、彼が指名した判事でさえ認めなかったこと、これらは「2020年に良くなった国」の候補に挙げてもよいだろう。
5.と書いたうえで同誌は、「良くなった国」の判断基準に「少しでも民主主義が進んだ国」を重視するとして、マラウイが昨年、民主的な選挙で独裁的な大統領を追放したことを評価して選んだとしています。
「とても貧しい国だが、それでもこの国の人たちは市民である」と言います。
ネットで調べると、日本マラウイ協会があって、紹介動画を見ることが出来ます。2分ちょっとの短い、いい動画で、もっとこの国を知りたくなります。
「青年海外協力隊員を最も多く派遣した国」だそうで、「40年以上にわたって1700 名もの青年海外協力隊が派遣され、この国の国造りに関わってきています」とあります。
https://www.youtube.com/watch?v=6EQplKQssII&feature=youtu.be
日本の若者も世界で良いことをしているのですね。彼らが一緒に写っている画像もたくさんありますが、子供たちの笑顔が印象に残ります。コロナの災禍にまけずに少しでも豊かな国になってほしいものです。
6.昨年は、スウェーデンの調査機関の発表では、世界の民主主義国家と権威主義的国家の数の比較は、87対92。民主主義国家が過半数を割ったのは、01年以来だそうです。
中国が「率先してコロナを抑えた」と自らの政治体制を誇る中で、エコノミスト誌は断固として民主主義に希望を託します。
だからこそ、貧しいアフリカの小国の努力を評価し、NZや台湾や、トランプ退場のアメリカでさえ「カントリー・オブ・ザ・イヤー」の候補にあげる。その姿勢に、民主主義への強い信念と希望を感じながら、新年早々読みました。