エコノミスト誌「2022年カントリー・オブ・ザ・イヤー」は?

  1. 今年のお正月には、米タイム誌と英エコノミスト誌を読みました。

毎年の恒例ですが、その年の最終号のタイム誌は「今年の人(パーソン・オブ・ザー・イヤー)を、同じくエコノミスト誌は「今年の国(カントリー・オブ・ザ・イヤー)」を載せます。

 

  1. エコノミスト誌の「2022年の国」は「むろんウクライナIt has to be Ukraine)」。

――(1)例年なら6カ国ほど候補になり、最終的にどこを選ぶか、激しい議論になる。

しかし今年は、2013年にこの企画を始めて以来初めて全員一致の結果になった。

 

(2)選考基準は通常なら、「この1年間で、目立って良くなった国、世界を明るくさせた国」である。

その点で、ウクライナが選ばれたのは例外といえる。この国ほど「悪くなった」国はないからである。殺害され、都市は破壊され、何百万人が家を失い、経済は3分の1まで縮小した。いまも「プーチンの戦争」は続き、多くの国民が、恐怖と暗闇や寒さに耐えている。

 

  1. それなら、なぜ「むろんウクライナ」なのか?

(1)英雄的行為(ヒロイズム)

(2)創意工夫(ingenuity)

(3) 回復力(resilience)

そして(4)ひらめき・鼓舞(inspiration)

  1. 具体的に補足すると、

(1)「ヒロイズム」――

侵攻が始まったとき、世界の多くが、ウクライナは強国ロシアにすぐに屈服するだろうと考えた。

しかしウクライナ人は戦った。大統領と政府は西欧からの亡命の提案を拒絶し、自国に踏みとどまった。市民も同様に勇気を示し、立ちあがった。

彼らは、新たな「国民意識(nationhood)」に目覚めたのだ。

(2)「創意工夫」―――

 ウクライナは、敵の弱点を見つけ出し、供給路を破壊し、支援された武器の扱いを素早く学んだ。判断を現場に委ね、状況に弾力的に対応し、動きの鈍い・官僚的なロシア軍に対抗した・・・。

(3)「回復力」――

 国民は生き残るためのあらゆる努力をした。プーチンがもたらした恐怖は、彼らの士気をくじくどころか、むしろ高めた。

 

(4)「インスピレーション」――

 独裁者に果敢に抵抗することで、ウクライナの国民は、ロシアの更なる侵略を防ぎ、結果として隣国モルドバジョージアやバルト諸国を守った。

 ウクライナは、「負け犬だって抵抗する」ことを示し、台湾を初め世界中の抑圧された人びとにインスピレーションを与えた。

  1. 最後に同誌は以下のように結びます。

「圧制者の多くは、自らの悪行を正当化するために大嘘をつき、恐怖によって自分たちの意思を押し付ける。

しかしウクライナは、彼らの嘘を明らかにし、恐怖に立ち向かうことが可能だと世界に示した。

まだ先行きは遠い。しかし2022年、彼らが模範を示したことは誰もが否定できない。ウクライナに栄光あれ!(Slava Ukraini!)」

  1. 1843年創刊の歴史と古典的リベラリズムの基本理念を誇りとするエコノミスト誌は、「プーチンの戦争」が始まって以来、一貫してウクライナを支持し、西欧諸国の支援を訴え続けています。

それにしても、このような圧倒的な「ウクライナ讃歌」の論調をどのように受け止めたらよいでしょうか?

「自由と民主主義」は、長い・苦しい闘争の中で国民が血を流して獲得したものだという思いが根っこにあるのではないか、

さすれば、「自由と民主主義」を戦ったことなく手に入れた私たちに、その思いはどこまで肌で感じられるだろうか、

そんなことを考えながら、読みました。