- 散歩の楽しい季節になりました。
東京は桜満開で、我が家の桜を眺めてから、駒場民芸館を通り、駒場公園旧前田侯爵邸、東大キャンパスと歩きます。
- 散歩しながら、3月初めに鬼怒川金谷ホテルに一泊したことを思い出しています。
(1) 二人旅の温泉旅行は5年振りで、その時と同じ宿です。
前回は子供たちからの贈り物で、一泊して翌日は日光東照宮に寄りました。
宿が良かったので、国の旅行支援の対象期間内でもあり、「裏を返した」訳ですが、今回は老人らしくどこにも寄らず、ひたすらホテルで過ごしました。
5年に一度の贅沢です。
(2) 鬼怒川温泉は新宿からJRが東武線につながり、乗り換えなしに2時間ちょっと
の終着駅ですから、便利です。ホテルは徒歩5分ですが、車で迎えに来てくれます。
温泉町自体は渓谷沿いに宿が並んでいるだけで、とくに見どころはありません。日光に寄り道でもしない限り、若者は退屈するかもしれません。
(3)しかし、金谷ホテルは快適です。
ここで憩い、滑らかな温泉で温まり、「金谷流懐石~和敬洋讃~」の夕食と翌日の朝食を楽しむだけで十分満足する旅の楽しみ方もあるでしょう。
何度も来ている常連も少なくないそうです。5年前に泊まったと告げて予約しました。部屋に案内されて、「寝室の枕は前回“低反発”を使用しておられますが、今回も同じでよろしいですか?」と訊かれました。とくに好みはありませんが、記録が残っているのには感心しました。
(4)もともとは、日本最古のリゾートホテルと言われる日光金谷ホテルが明治26
(1893)年に創業されて、いまも日光にあります。
その後、創業者のお孫さんが鬼怒川温泉に昭和53(1978)年オープンしたのがこのホテルです。
- ロビーで、チョコレートと飲み物を頂き、ゆっくり時間を過ごせるのも有難く、二人でそれぞれ持参した本をひろげました。
(1)私は、読みかけのエコノミスト誌2月25日号です。戦いから1年経って、「ウクライナの将来」を特集で取り上げています。
(2)論説は「勝敗の行方」と題して、「70年経ったいまも“休戦状態”が続いている朝鮮戦争に似て、いつまでも終結しない可能性が高いのではないか」と論じています。
(3)同誌の最終ページは、亡くなった著名人を追悼する1頁の「訃報Obituary」です。例えば最新の3月18日号は大江健三郎、全て対象は個人です。
ところが本号の訃報は「狂気とはどのようなものか」と題する「バムフト」でした。
個人以外を「訃報」で取り上げたのは、同誌始まって以来ではないでしょうか。
バムフトは、言うまでもなく「最も残酷な戦い」と呼ばれ、無数の死傷者を出して戦いの最激戦地となっているウクライナの町です。
(4)記事はこう伝えます。
「人口7万人のうち約5千人が、2月末現在いまだに避難せずに残っている。殆どが老人、病人とその介護者、貧しい人たちである。ウクライナ兵が守ってくれると信じる人や、ロシア兵の到来を待っている親ロシア派も少数いる。ここは、国境に近い町なのだ」。
そして、
「バムフトは戦略的にさほど重要な場所ではない。
しかし、プーチンにとってはここの勝利は過去の屈辱的な戦いの終わりを意味するだろう。他方でゼレンスキーは、「バムストは死守する」とウクライナの断固たる決意を示している。双方にとってこの悲惨な戦いの「象徴」になっているのだ」。
(5)ホテルを「明」とすれば、読む記事の中身は「暗」の、午後のひとときでした。