「赤ちゃん連れて旅行はダメ?」と国連での「BTS」

1. 先週の東京は、よい日和の日が多く、秋も深まりました。週末には、東大のグランドを使って、近くの保育園が運動会をやっていました。

我々夫婦は朝、生後8カ月の赤ん坊をバギーに乗せて東大付属の研究所内を散歩しました。
これには訳があって、私事で恐縮ながら9月初めに家人が転んで右腕を骨折しました。
一過性の怪我ですから大事ではないものの、年もあって治るには時間がかかります。


そんなときに、先週は、英国に住み、日本の会社の英国法人で働く娘が出張で日本にやってきました。出張ですからいつもは都心のホテルに泊まりますが、2月に生まれたばかりの孫がいて授乳の必要があり、彼女を連れての旅で、ホテルは無理なので狭い我が家に4泊しました。
 この間、娘は朝から夜まで仕事で出ているので、我々老夫婦が身内の助けも借りながら、赤ん坊の面倒をみました。それが朝の散歩の理由です。


2. たまたま彼女らが着いた2日前の東京新聞に「赤ちゃん連れて旅行はダメ?」という見出しの記事が載っていました。こんな内容です。

 ――「第2回全日本おっぱいサミットー旅する“おっぱい”」が27日、渋谷区内で開かれる。9月の北海道地震では、乳児連れの観光客への批判的な声がネット上をにぎわせた。議論を通じ、母親らが孤立しない未来を探るーー
というリード文で以下に続きます。
――最大震度7を記録し、多くの観光客らが旅先で足止めされた北海道地震。乳児連れの母親がミルク不足で困っていると報じられると、ネット上では「そもそも子どもが大きくなるまで旅行を控えるべきだ」「赤ちゃんを連れて旅行するべきじゃない」といった批判が多く上がった・・・・――


3. いろんな理由があると思いますが、赤ちゃんを連れて動かざるを得ない場合もある
のではないか。
それをこんな風に批判されるとは・・・・。
記事では、「ため息が出た。こういう声が母親を追い詰め、我慢を強いてしまう」という意見が紹介されて、NPO法人子連れスタイル推進協会が主催して上記の「サミット」を開催するそうです。

娘の場合は仕事ですが、本人もまだお乳が出るし、赤ん坊も飲むので連れてくるしかありません。こんな時期に出張しなくてもいいではないかと思う人もいるでしょうが、そんなことは本人がいちばん分かっている筈で、それでも来ざるを得ない、よほどの事情があるのでしょう。

そういえば今回は飛行機はビジネスクラスですが、行きの機内では乗務員の皆さんから親切にしてもらったようです。
ビジネスクラスはいちばん前の席が少し余裕があり、赤ん坊をバスケットに入れておくこともできます。帰りもその席を取ろうとしたがすでに他の乗客の予約で満杯とのこと。
「当日、羽田のチェックインカウンターで、お客様に事情を話して席を代わってもらうようにお願いしてみます。どなたか親切な方が居られるでしょう」と航空機会社の人は言ってくれているそうです。
1人分の席で2歳までの赤ん坊は追加1割を払っています。

しかし、こういう記事を読むと、ちょっと心配になりました。「そもそも赤ん坊を連れて海外旅行なんてすべきではない」と怒られるかもしれません。何とか、ご理解を頂きたいものです・・・・


4. 子育てをしながら働く女性はいまは珍しくありません。そして子を産み、育てると
いうのは、本当にたいへんな仕事だと感じます。母親は心身ともに苦労しているでしょう。東京新聞の記事は、「妊産婦の死亡原因の1位は自殺」とも伝えています。

今回、娘と話していて感じるのは、英国に住んでいる違いです。
英国では、そもそも働きながら子供を育てている女性はむしろ当たり前の存在で、それを支えるシステムも文化もしっかりしている。
保育園も充実しているし、ナニーさん(乳母)もプロが多くいて、安心して預けられる。
おまけに、彼女の場合は異国ですから身内は近くに居ないものの、隣近所や職場の人たちの理解があって、暖かく見守り、サポートしてくれる。

ということもあって、娘であれば、もちろんこの時期出張せざるを得ない事情があるだけではなく、普段から仲間の女性たちが普通にやっていることで、特に珍しいことでもないという意識が前提にあると思います。

だからこそ、上記のような記事を読まされると、20年も海外に暮らしてい彼女はこういう日本社会の雰囲気が理解できないようで、ただ呆気にとられていました。


5.ということで、いささか暗くなりますが、他方で久しぶりに生まれたての命に接して、良い気分にもなりました。

この間、ゆっくりひとりになれる時間が少ないので、前回ご紹介したタイム誌をぱらぱらめくるぐらいで過ごしました。
「2018年次世代のリーダー10人」を少し補足して今回の終わりにします。

10人の人種別内訳は、黒人4人(フランス国籍のキリアン・エンバペ選手を入れて)。イスラム系3人、アジア1組(BTSメンバー7人)その他2人(アルゼンチンとドイツ)――意図的に多様な人たちを選んだのかもしれませんが、それにしても多様です。

(1) エンバぺ選手――パリの、移民が集まる貧民窟に生まれ、いまは年に50億円を稼ぐスーパー・スター、夢物語の主人公。ワールドカップの表彰式では、マクロン大統領は、彼を無言で長く抱きしめ、泣いているようだった。パリで100万人以上の人が街に出て、優勝と彼の活躍を祝った。
しかも、まだ19歳の若さで、「大切にしているのは、敬意(respect)、謙虚(humility)、平静さ(lucidity)の3つ」と落ち着いて語る、彼のこの先に注目しよう・・・。


(2) 黒人の2人目はカメルーンの30歳の医者、もう1人は、19歳のアメリカのアマンドラ・ステンバーグ、女優であり、歌手でもあり、しかも同国の人種差別を鋭く批判する政治活動家でもある。
最後の1人シェク・カネー=メイソンも19歳だが、英国籍でチェリストとして活躍。5月のハリー王子の結婚式では、参列者を前にチェロを独奏した。サイトは以下の通り。
https://www.youtube.com/watch?v=VWCDWyRjibw
(プロとして活躍する黒人のクラシック音楽家は、まだまだ本当に少ない、とタイム誌は伝えます。たしかに黒人のチェロ演奏の映像は私も初めてみました)。

(3) 最後に、韓国のBTSです。彼らが9月の国連総会に招かれたことを前回のブログで伝えました。各国の代表を前にグループのリーダーが流ちょうな英語で、ユニセフと共同でやっているキャンペーンの話をしました。

「自分自身を愛そう(Love Myself)」というメッセージで、世界中の子どもたちに対する暴力をなくそう、という運動だそうです。
https://search.yahoo.co.jp/video/search;_ylt=A2RCK.58RtVb134AbymHrPN7?p=bts%E5%9B%BD%E9%80%A3%E3%82%B9%E3%83%94%E3%83%BC%E3%83%81&aq=-1&oq=&ei=UTF-8

世界中の若者に向かって、どこから来たか?肌の色は?ジェンダー意識は?などの全ての違いに関係なく、「あなた自身のことを話してください」という呼びかけで終わる、いいスピーチでした。
暴力やいじめをなくすのはもちろんのこと、まずは赤ん坊にも子どもにも、そして母親にも、出来るかぎり寛容に接することができる社会であって欲しいと願います。