「グレタ効果」―「時には、子どもの眼で世界を見ること」

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1. 前回のブログ「タイム誌2019年“今年の人”にグレタさん」では、渋谷が「学生時

代にもっともよく通った懐かしい街だった」と書きました。

 中高までの通学に使った「館(やかた)ぶね」と呼ばれるバスの思い出話に触れたところ、同級生のMasuiさんから「自宅からは新宿経由が普通だが、ときどき渋谷まで回り道をして、このバスに乗って学校に行った」という微笑ましいエピソードを頂きました。

 中高6年間の男子校なので、女学生は憧れるだけの存在。おまけに近くに女学校が多く、嫌でも意識する。「前に聖心右手に館、後に控える山脇・英和、中にそびえるザブ中の白亜♪~」なんていうジコチューな、ズンドコ節の替え歌までありました。

 他方で、我善坊さんからは、「70年代以降、学生が元気を失くしたのと軌を一にして、渋谷が落ちぶれたようです。・・・・渋谷と学生が元気であるような時代が来ますように!」というコメントを頂きました。

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  渋谷は私の大学生時代であれば、道玄坂百軒店(だな)には名曲喫茶や大衆食堂・劇場があり、恋文横丁には安くて旨い餃子の店がありました。貧乏な若者の集う雑然と汚い、しかし活気はあったように思います。

「此処に恋文横丁ありき」と書かれた小さな碑がいまも立っていますが、気づく人もいないでしょう。碑には「かって、これより入った奥に36の小さな店があった。彼らは、希望とロマンを求め、この名を付けた。恋文の代書業を営む者たちが集まっていたことに由来する。この地を舞台とする映画(丹羽文雄原作、田中絹代監督)も作られた」とあります。

2. 以上は前置きで、今回もグレタさんの「今年の人」記事の続きです。タイム誌は言います。

(1)「むろん彼女は、気候変動の問題に、魔法のような解決策を示している訳ではない。

彼女の功績は、たった一人で始めた抗議行動が、世界の声になっていったことにある。」

(2)グレタは16歳だが、小柄で12歳ぐらいにしか見えない。

アスペルガー症候群」の持主であり、彼女の「感情領域(emotional register)」は、多くの人たちと少し異なる。

・人混みを嫌う。

・雑談や世間話を無視する。

・率直に言葉を発する。

・おもねられたり、はぐらかされたりしない。

・有名人の存在にも、自分自身が注目されることにもまったく関心がない。

このような個性こそが、彼女が世界的なセンセーションを巻き起こす一助となった。

(3)グレタは、いかなる政党や団体のリーダーでもない(環境保護に熱心な、伝統的な活動を続ける一部の人たちから、逆に批判されている)し、科学者でも政治家でもない。

 ごく普通の10代の少女であり、ただ、真実を力に変える勇気で「世代の偶像」になり、世界中の人々の関心を高め、態度を変えさせた。

「時には、人々の考え方を変える最善のやり方は、子供の眼を通して世界を見る(to see the world through the eyes of a child)ことだ」。

3.続いてタイム誌は、個人としての彼女を紹介します。

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(1)母親はスウェーデンの著名なオペラ歌手であり、父親は俳優で親戚にはCO2排出を研究しノーベル賞を受賞した科学者がいる。

(2)11歳の時に、学校の授業で、地球の温暖化についてのヴィデオを見せられた彼女は、大きなショックを受けて自閉症のような状態になった。

両親は心配し、当初は「あなたがそんなに悩むことじゃない」と説得を試みるが、やがて彼女に寄り添い、支えるようになる。肉を食べることをできるだけ避け、太陽光を屋根に取り付け、音楽会のため欧州のあちこちを飛び回る母親は、多大な犠牲を払って、ついに飛行機を利用することも諦めた。

 2019年にはスェーデンの「環境保護にもっとも熱心な家族」に選ばれた。

(3) 「私は世界を白黒に分けて見るし、妥協が嫌いなのです」と言うグレタは、自らのアスペルガー症候群に感謝もしている。「何時間も座り込んだり、関心のある本を集中して読んだりできるのは、そのお陰なのです」とも語る。

(4)そして、2018年5月に彼女は気候変動に関するエッセイを書き、新聞に掲載される。8月、たった一人で学校を休んで「気候ストライキ」と称して国会議事堂前に座り込む。

 1日目は彼女ひとり、2日目に見知らぬ人が一人加わる。数日後には何百人にもなる。

 9月初めに、大勢が集まったのを見たグレタは、「これから毎週金曜日、この国がパリ協定の温室効果ガスの排出削減目標に応じるまでストを続ける」と宣言。

 かくして「未来のための金曜日」運動が生まれた。

4.記事は、このあと、(1)世界中が彼女の声に応えて行動を始めたこと、(2)世界の指導者、政治家、経済界などの反応や、(3)世界の若者に勇気を与えたことについての具体的な事例を詳細に紹介します。

 記事の最後は、昨年12月6日、マドリッドで開かれたCOP25の国際会議当日には、何十万人のデモがあったことを伝えます。プラカードには「老人は老齢で死ぬ。私たちは気候変動で死ぬ!」と書かれました。「世界を再びグレタのものに!(Make the world Greta again.)」という叫びが世界に響きました。(言うまでもなく、Americaの代わりにthe world, ” Greta ”は”great” のもじりです)。

f:id:ksen:20200116083053j:plain5. 前回のブログには、Masuiさんから「環境問題は待ったなし。特に原子力、石炭に頼らないで、飛躍的なエネルギー効率の技術を大至急開発すべき。日本の若者はもっと環境問題に関心を持って活動をしてほしい」と、飯島さんからは「グレタさんを日本に呼んでほしい。若者たちのパブリック意識を高めてほしいと願っています」と、コメントを頂きました。

 たまたま1月5日の東京新聞が、共同発として以下報じました。

――「グレタさんが3日、首都ストックホルム共同通信の単独取材に応じ・・・・今年も権力者に圧力をかける、中国など欧米以外の地域への訪問も計画していると説明。また、招待があれば「日本にも行く」と話した」――

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6. 1月13日の新聞は、「2008~2017の10年間、温室効果ガスの排出量が増え続けたという厳しい国連の報告書が出た」と報じました。

 日本も気候温暖化がひきおこす大きな災害の無い年であってほしいと願いますが、豪州やフィリピンの山火事など不安です。

 豪州についてはエコノミスト誌が論説でも取り上げています。デンマーク1国の面積に匹敵する同国の史上最大の山火事で、すでに26人が死亡、2300の家が焼け、5千万匹の野生動物に被害が及んでいる。

 2019年の豪州は、過去もっとも暑い年で、平均より1.5度高く、雨量は過去最低で、平均より40%も少ない、これは明らかに気候温暖化の影響が大きいと指摘しています。