『資源の戦争』と『大東亜共栄圏』を読む

1.下北沢の「ザックZAC」という喫茶店で時々朝食をとります。二人で、たまにひとりで行きます。

開店は朝9時。我が家は原則二食なので、10時前後に出掛けます。

いつもホットサンドウッィチと珈琲。賑やかな若者の街下北沢の商店街にありますが、空いていて、静かで、室内が暖かいのはこの時期有難く、ゆっくり過します。

 壁にかかっている、ジョン・レノンがヨーコ・オノと憩っている姿を描いたリトグラフが気に入っています。

 長方形の円卓があって、一人客はここに座ることが多いですが、当方は窓際の席でゆっくり過ごします。

  1. 読書に精を出すときもあり、最近は『資源の戦争、「大東亜共栄圏」の人流・物流』(倉沢愛子岩波書店、2012年)を読みました。著者はインドネシア現代史が専門の、慶應義塾大学名誉教授です。

(1)「資源という視角から描いた「大東亜」戦争の不条理に(略)豊富な聞き取りと一時資料から迫る」と帯にあります。

(2)著者は、1941年12月に始まり 1945年 8月に終わった日本の「戦争」をあえて“「大東亜」戦争”と呼びます。

 その理由は、アメリカだけでなくイギリス、オランダとも戦ったこと、かつ太平洋に面していない東南アジアの各地が戦場になったことです。

(3)そして、「日本が東南アジアに求めたことは、(略)対日物資供給」であり、この戦争は何をおいても「資源のための闘いであった」。

3.同じ時期に並行して、『大東亜共栄圏、帝国日本のアジア支配構想』(安達宏昭、中公新書、2022年)』も読みました。

(1)著者は東北大教授、日本近現代史が専門ですが、「あとがき」で本書執筆の動機をこう述べます。

――「なぜ戦争は起こるのか、その原因や実態を究明することが戦争を防ぐことにつながるのではないか――。そう考えるようになったきっかけは祖母や父母の存在である。祖母は決して語らなかったが、その人生は戦争に翻弄(ほんろう)されたものだったと、私は成長するにつれて知るようになった」――。

安達教授の祖母は、昭和20年8月、42歳で死んだ父と同世代かもしれないと考えながら読みました。

(2)ところで本書には「日本の首相による、初めての東南アジア歴訪」の記述があります。この人、誰でしょう?

答えは「1943年6月30日から7月12日まで。タイ、シンガポールスマトラ・ジャワ(現在のインドネシア)、フィリピンの各地を訪問した、東条英機首相です」。   

「戦争」開始とともに日本軍が侵攻・占領し、「軍政」を布いていた地域です。

 

  1. 昨年から「大東亜」戦争に関する本を集中して読んでいます。

きっかけはむろん「プーチンの戦争」ですが、日本が敗北した時に6歳だった老人はいまだに「戦争の記憶」を消すことが出来ないのです。そして、「戦争の原因や実態の究明が戦争を防ぐことにつながるのでは」という安達教授の言葉に共感します。 

5.ということで、いささか硬い本の紹介になりました。

ともに読み応えがあります。いまだに日本の「戦争」を真摯に考え、研究を進める学者がいることに敬意を抱きます。

 そして、この2冊とも、先月末に閉店した渋谷の「丸善ジュンク堂」で求めました。このうち中公新書の方は大型書店なら置いてあるでしょう。

 しかし、『資源の戦争』は地味な研究書です。2012年出版の第1刷が、閉店間際の丸善ジュンク堂渋谷店の書棚に1冊ありました。

 こういう本屋が消えていく、ということに寂しさを感じているのです。