エコノミスト誌「2020年カントリー・オブ・ザ・イヤー」は、マラウイ共和国。

  1. 緊急事態宣言のもと、ほぼ終日家で昨年から持ち越した本や雑誌を拡げたり,ネットに向かったりしています。頂いた新年の挨拶も、コロナに触れることが多いです。

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 新年早々シドニーから届いた挨拶には、「一時上手く収まっていたコロナが、クリスマス前に再度勢いをつけ、今日からマスク着用が義務。違反すると罰金200ドル」とありました。

それでも豪州はまだうまくいっている方で、こう書いてくれた方もいます。「オーストラリアのコロナ感染拡大防止はモリソン首相の的確な対応で世界で「最良の国の1つ」と評価されています。首相は当初からぶれない一貫した政策で国民の信頼を得ました。政治家には珍しくサイエンスの学位を持っているそうで、種々のデータと医学の専門家のアドバイスをもとに政策実施しました。支持率 は65パーセントと長期に渡って高い支持率が続くのは記録だそうです」。

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2.そんなメールを拝見しながら、英国エコノミスト誌昨年度最終号の「2020年のカントリー・オブ・ザ・イヤー(今年いちばんの国は?)」と題した論説を読みました。今回はその報告です。

 英エコノミスト誌もタイムの「今年の人」を真似したかどうか、過去1年を振り返って、「いちばんだった国は?(country of the year)」を毎年選びます。

特徴的なのは、判断基準が「この1年間で、目立って良くなった国、世界を明るくさせた国」ということです。特に「民主主義を進めた国」に注目します。

そのせいもあるか、例えば2018年アルメニア、19年ウズベキスタンなど、私のよく知らない国が選ばれることが多いです。


3.「2020年の国」は、アフリカ大陸南東部にある、人口15百万人のマラウイ(Malawi)共和国です。私はほとんど初めて聞く名前で、何の知識もありませんでした。

ウィキペディアによると、「イギリス連邦加盟国。国土はほとんど高原上にあり、タンザニアモザンビークザンビアと国境を接している。独立以降、アフリカでは珍しく対外戦争や内戦を経験しておらず、“The Warm Heart of Africa(アフリカの温かい心)”の別称を持つ国」とあります。自然遺産が1つ(冒頭の湖の写真)、文化遺産が1つあるそうです。

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  1. 同誌は、他の候補として、ニュージーランド(NZ)、台湾、アメリカ、ボリビアの4か国もあげ、以下のように述べます。オーストラリアも候補に入ってよかったようにも思いますが、身びいきかもしれません。

(1) 言うまでもなく、昨年は世界中がコロナ禍に見舞われ、どこの国も最悪を防ぐのに

必死であり、そもそも「良くなった」と言える国は少ない.

 

(2)NZも、「前年より良くなった」と指摘することには議論があるだろう。

しかし、コロナは抑え込んでいる。アーダン首相は、「(人口)5百万のチーム」と呼んで、互いを思いやることを呼びかけた。国民の支持は圧倒的に高い。暮らしはほぼ元通りに戻っている。

 

(3) 台湾はさらに上手に、コロナ禍に対応している。

台湾を昨年いちばんの「国」と呼ぶか、「昨年いちばんの“事実上自治のある地域”」と呼ぶかは措いて(と、英国人らしい皮肉をこめて)、

台湾は、学校・店・飲食店を閉鎖せず、厳密なロックダウンもせずに抑え込んでいる。昨年経済のプラス成長が見込まれる数少ない国である。

 しかも、蔡総統は、中国からの無法な圧力に屈せず、香港からの避難者を受け入れている。台湾は、中国の文化は自由民主主義と完全に両立しうることを、いつも私たちに思い起こさ

せてくれる。(いい言葉です!)

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(4)アメリカを候補にあげるのは意外と思われるかもしれない。コロナ対応では最悪の国の1つである。

 しかし、ワクチン製造で力を発揮したことは評価してよい。そしてトランプを退場させた有権者と、選挙に不正があったとする無茶な主張を、彼が指名した判事でさえ認めなかったこと、これらは「2020年に良くなった国」の候補に挙げてもよいだろう。

 

5.と書いたうえで同誌は、「良くなった国」の判断基準に「少しでも民主主義が進んだ国」を重視するとして、マラウイが昨年、民主的な選挙で独裁的な大統領を追放したことを評価して選んだとしています。

「とても貧しい国だが、それでもこの国の人たちは市民である」と言います。

ネットで調べると、日本マラウイ協会があって、紹介動画を見ることが出来ます。2分ちょっとの短い、いい動画で、もっとこの国を知りたくなります。

青年海外協力隊員を最も多く派遣した国」だそうで、「40年以上にわたって1700 名もの青年海外協力隊が派遣され、この国の国造りに関わってきています」とあります。

https://www.youtube.com/watch?v=6EQplKQssII&feature=youtu.be

日本の若者も世界で良いことをしているのですね。彼らが一緒に写っている画像もたくさんありますが、子供たちの笑顔が印象に残ります。コロナの災禍にまけずに少しでも豊かな国になってほしいものです。

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6.昨年は、スウェーデンの調査機関の発表では、世界の民主主義国家と権威主義的国家の数の比較は、87対92。民主主義国家が過半数を割ったのは、01年以来だそうです。

中国が「率先してコロナを抑えた」と自らの政治体制を誇る中で、エコノミスト誌は断固として民主主義に希望を託します。

だからこそ、貧しいアフリカの小国の努力を評価し、NZや台湾や、トランプ退場のアメリカでさえ「カントリー・オブ・ザ・イヤー」の候補にあげる。その姿勢に、民主主義への強い信念と希望を感じながら、新年早々読みました。

2021年の初め、カレンダーを眺め、「昨年話題のエンタメは?」

  1. 今年もよろしくお願いいたします。

お正月を自宅で静かに過ごした方が多いでしょう。私も、昨年末に頂いたカレンダーを飾りながら、妻と昔話をしたりしています。

友人二人から素敵なカレンダーを頂き、心遣いに感謝しております。

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2.一つは大英図書館作成の「ディケンズ・カレンダー2021」です。

 私が19世紀の英国の小説家チャールズ・ディケンズの愛読者で、雑誌「あとらす」に4回続けて、彼を紹介する文章を書いていることを知っている京都の友人が送ってくれました。アマゾンで取り寄せて頂いたそうで、有難いことです。

 小説が出版された当時のオリジナルの挿絵が、毎月それぞれ選ばれています。

2021年版の表紙は「オリヴァー・ツイスト」の登場人物、「アートフル・ドジャー(腕利きの逃げ手)」というあだ名で呼ばれる陽気な少年です。ロンドンの貧民窟に住み、オリヴァーが仲間に入れられてしまう,すりの名人です。

 1月は、『クリスマス・キャロル』から。けちで強欲なスクルージが、クリスマス・イブに3人の幽霊に会って改心するおとぎ話ですが、その中でも有名な場面です。彼が「未来の幽霊」に連れられて、墓地に行き、自分のお墓を見せられて、ショックを受けるところです。

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3.二つ目は、年下の友人の奥様が作ったものです。

 退職して余裕が出来たので、2020年版はアメリカ西海岸を夫婦で旅行して、そのとき撮った写真をもとに作ったカレンダーを頂きました。今年は、コロナ禍で海外旅行が出来ないので、東京と京都のお寺を主に取り上げたとのことです。

2020年1月は、アメリカ・ユタ州にあるザイオン国立公園。ラスベガスから車で約3時間、グランド・キャニオンに行く途中にある奇岩の多い名勝です。

 2021年1月は、「浅草寺の仁王門と五重塔」(東京:浅草)とあります。2月以降も楽しみです。

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  1. この友人とは、昔、シドニーで一緒に働きました。

 そのシドニーからはかっての同僚で、オーストラリア人と結婚して幸せに暮らしている女性の写真が、クリスマスのメッセージとともに届きました。

 ご本人も写っていますが、背景のシドニーの眺めが(「も」と言うべきか)素敵なので、事後承諾で恐縮ですが載せさせて頂きます。

 1枚はビーチにて、もう1枚はシドニー・ハーバー(港)の向こうにオペラハウスが見える景色です。前者は昨年8月で、現地の冬ですが、後者は11月、初夏です。これから暑い夏になって、また昨年のような大きな山火事に襲われないかと心配です。

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5.そして、正月なので私事を許していただくとして、元旦だけは家族がやって来ました。

(1)感染対策として、長男一家と長女夫婦は別々の時間帯で、1時間ほどの短い時間だけ一緒に過ごし、

(2)ロンドンの次女一家はステイホームで来日できないので、LINEで「おめでとう」を言い(便利な世の中になったものです)、

(3)飲み、食べ、喋りましたが、原則マスク会食と換気を心がけました。幸い、みな近くに住んでいるので、移動に安心感があります。

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6.現役の中年&若者が久しぶりに集まるので、コロナで仕事のやり方が変わったことなど真面目な話もしますが、毎年この集まりで、下らぬことで1つ訊くことがあります。

「昨年1年間、エンターテイメントの世界で大きな話題は何か?」という質問です。

(1)やはり「鬼滅の刃」、(続いているのが、「呪術廻戦」というマンガ)、

(2)「マジカルライブリー」

(3)「J.Y.Parkと虹プロジェクトとNIJIU」

ではないか、という報告でした。皆さんはご存知ですか?

鬼滅の刃」は私も名前ぐらいは知っています。長男の妻の友人は「4回見た」そうですが、本人はさほど興味はないそうです。

(2)と(3)は、私たち老夫婦は名前も初耳でした。

(2)は漫才グループ、(3)は韓国人のプロデューサーが(J.Y.Park)、日本で素人の女の子を集めた歌のグループをデビューさせて(虹プロジェクト)、そのいちばん人気が「NIJIU」という話でした。紅白歌合戦にも出場したそうですが、我が家はいつも見ないので、知りません。

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7.まあこんな話は余興で面白がるだけで、知ったからといって、「じゃ、マジカルライブリーの漫才を聞いてみようか」なんて気にはなりません。老人の好奇心なんてそんな程度で、いっときの世相を知る興味です。

そんな訳で、毎年、若者から情報を得ていますが、

いままでいちばん興味を持って、聞いたあともフォローしたのは、2017年の元旦に聞いた「恋ダンスアメリカ大使館」の話題です。

恋ダンス]という曲とダンスが話題になって、とうとうアメリカ大使館が取り上げて、当時のキャロライン・ケネディ大使がサンタクロース姿で、館員と一緒に踊った動画が大人気になったそうで、これは私も動画を見て、面白かったです。

大使館の動画はいまでも見られます。

https://jp.usembassy.gov/ja/u-s-mission-japans-rendition-popular-koidance-love-dance-ja/

 

以上、新年早々たわいもない話で恐縮です。

 

2020年は「アナス・ホリビリス(本当にひどい年)」でした。

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1.今年最後のブログです。振り返って2020年は,「新型コロナウィルスのパンデミック(世界的大流行)の年」として長く記憶に残るでしょう。エコノミスト誌12月19日号は「疫病の年、全てが変化した年」と題する論説を載せ、同時期のタイム誌表紙は「2020」に赤のバツ印がついた写真に「今までで最悪の年(The worst year ever)」と表示しました。

  エリザベス女王が1992年のスピーチに使い、以来有名になった「アナス・ホリビリス(annus horribilis)」というラテン語を思い出した人もいるでしょう。英語だと「horrible year(本当にひどい年)」です。

 この年は、英王室にとっては、ウィンザー城が火事に遭ったり、チャールズ皇太子とダイアナ妃の不仲の暴露本が出て、結局二人が別居したりと、多事多難が多く、女王は嘆きました。

 今年の女王の恒例のクリスマス・メッセージは、多くの悲しみのなかで、医療従事者への感謝や、「あなたたちはひとりではない」と国民に呼びかけるものでした。

 しかし、今年は世界中の多くの人にとって、「アナス・ホリビリス」でした。世界の累計感染者は8千万人、死者は170万人を越えました。しかも上記エコノミストの論説は、「この他に、おそらくさらに5億人以上の未検査の感染者がおり、数十万の死者が記録されていないと思われる」と書きます。

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2.上記タイム誌所収のエッセイは、

(1) こんなひどい悲劇は第二次世界大戦以来であり、それを多少とも記憶している人は80歳代以上であろう。それ以下の世代にとっては、まさに未曾有の・未経験の出来事であるとして、

(2) この体験を象徴する言葉として、「無力感(sense of helplessness)」と「孤立(isolation)」の2つをあげています。

(3) さらに、日本でもおなじみの「ソーシャル・ディスタンス」と「エッセンシャル・ワーカー」です。

(4) その上で、今回の災禍の特徴は、「ステイホーム」という言葉が表すように、日常はいつもと変わらず流れ、その中で人々はとつぜん職を失ったり、身近な死を知る。世界は非日常でも異常でもなく、ありふれた日々と悲劇とが同居し、いつまでも続くことで、「無力感」と孤立が増幅される・・・・としています。

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3.他方でエコノミスト誌は、「100年に一度あるかないかの出来事」によるロックダウンの中で、多くの人たちは「無力感」や「孤立」だけではなく、「生きていくうえで何がいちばん大切か」を自問自答した筈である、とむしろ、危機を前向きにとらえようとします。

 

そして、この災禍が生み出す変化について以下の3つを予測し、むしろこれをチャンスとして生かそうと呼びかけます。

(1)「この苦しみの灰の中から、いまを大事に、一日一日を生きることを大切にする」意識が生まれてくるのではないか。

 

(2)コロナ禍はある種の警告として役立つかもしれない。ロックダウンのお陰で短期間に戻ってきたきれいな青空は、気候変動に対する人々の意識や態度の変化を促すシンボルとなるかもしれない。

 

(3)変化が期待できる第三の理由は、コロナが不公正を明らかにしたことである。勉強に遅れ、空腹に悩む子供たち、家で孤独と暴力に耐える人たち、行き場のなくなった移民労働者、コロナ自体がもたらす差別や格差・・・等々が浮き彫りになった。

 

➜つまり、我々は、コロナのお陰で取り組むべき課題・解決すべき課題を再発見したのだ。

そしてコロナは、技術革新や新しい知識や変化をどのように活用すべきかの示唆も与えてくれた。例えば、アメリカの小売売上に占める電子商取引の割合は5倍に増え、ニューヨークの地下鉄の利用者は90%以上落ち込んだ。

としたうえで最後に、

――私たちはこうした変化を見据えたうえで、いまある貧国や格差に立ち向かうべきであり、コロナがその機会を与えてくれたと考えるべきである。

そしていまこそ政府は率先して、福祉と教育政策を再構築して、21世紀にふさわしい「新しい」社会契約(国家と市民との関係)の構築を目指すべきである ――

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4.以上、タイム誌とエコノミスト誌を紹介しました。

 後者は少し硬い論調であり、かつ理想論かもしれません。現実はもっと厳しいかもしれない。むしろ人々はいっそう自分のことしか考えなくなるかもしれない。政治家は遠い未来のために改革を行うより、権力の心地よさに酔い、来年の選挙に勝つことしか考えないかもしれない。

「人類が勝利したあかしとしてオリンピックを開催する」と語る政治リーダーからは、コロナを人類への警告と捉え、課題を問うた出来事と見据えて、これを契機に21世紀の「新たな社会契約」を結ぼうとする気概は、残念ながら感じられません。

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 唯一明るいニュースとして、タイム誌が最新号で「今年の人(person of the year)」に選んだ、アメリカのバイデン新大統領とハリス副大統領の二人のコンビに期待したいと思います。

 11月の選挙に当選した次期大統領がその年の「今年の人」に選ばれるのは通例です。戦後ではニクソン辞任後に昇格したフォードを除いて、全員が(再選時も含めて)選ばれています。 しかし、副大統領も一緒に選ばれたことは今までにありません。

そして言うまでもなく、少数民族(アジア系と黒人)出身として女性として初めての副大統領の登場という出来事に、「コロナの悲劇」の中での希望を見出したいです。

 コロナがなければ、おそらくトランプ氏が再選されたでしょうから。

2021年がもう少し良い年でありますように!

「サンタクロースは新型コロナウィルスの免疫を持っているから、心配しないで!」

  1. 年末年始はステイホームの人が多いでしょうね。

 私の場合も、会食をともなう忘年会・新年会はほぼ全てキャンセルになりました。

 自身のこともありますが、病院での医者や看護師のご苦労をTVのニュースで見ていると、高齢者は少しでも迷惑を掛けてはいけないという気持になります。

 ということで、外に出るのは、家人との散歩ぐらいです。あとは年末に墓参の予定です。コロナの前にとっくに逝ってしまった死者たちを想います。

 毎年この時期はロンドンから娘が孫を連れてやってきていたのですが、それもお休みで代わりにLINEで顔を見ています。

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  1. 散歩といえば、代々木上原駅から世田谷代田までの小田急線が地下に埋められて数年たちました。お陰で我が家の近くの踏切の混雑は解消されました。

 この線路跡地(地下は電車が走る)の整備が少しずつ進んで、心地良い散歩道になりつつあります。

 週末には、人出も多く、カフェなどもあり、近くにある東京農大が「オープンカレッジ」と名付けて大学で作った野菜を売ったりしています。

 二人で珈琲も飲み、無駄話をします。この時期、話し相手がいるのは有難いです。

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 中高時代の仲間のメールチャットで老人をテーマにした川柳を披露してくれたので、家人にも見せました。彼女も喜んで、早速友人にあちこち送っています。

こういう川柳は作者名が表示されないので、庶民の作なのでしょうが、著作権の心配もなく多くの人が喜んで共有しているでしょう。例えば、

 

―「♦︎  日帰りで 行って見たいな 天国へ

♦︎  三時間 待って病名『加齢』です

♦︎  目覚ましの ベルはまだかと 起きて待つ

♦︎  起きたけど 寝るまで特に 用もなし

♦  留守電に『ゆっくりしゃべれ』と どなる父

♦︎  立ち上がり 用事忘れて また座る

♦︎  景色より トイレが気になる 観光地

♦︎  良い医者を 待合室で 教えられ」――などなど。

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3.こういう時期にはせめてユーモアが大事だなと思っていたら、数日前のNHK国際ニュースが、「“サンタクロークも今年はステイホームなの?”という子ども達の疑問に対して、WHO(世界保健機関)が記者会見で回答に応じた」と報道していました。ご覧になった方も多いかもしれません。

https://www3.nhk.or.jp/nhkworld/en/news/20201215_19/

――「新型コロナウイルスの感染拡大で、ことしのクリスマスを心配する子どもたちのために、WHO=世界保健機関の専門家が、ウイットに富んだメッセージを出しました。「サンタクロースは新型コロナウイルスの免疫を持っていて、プレゼントを配るために世界中を移動できる」としたうえで、感染対策をとってクリスマスを過ごすよう、子どもたちに呼びかけました。」

――こう語ったドクター・バンケルコフ(Maria Van Kerkhove)はアメリカ人ですが、ロンドン大学で感染学の博士を取得している専門家で、お子さんが2人いるそうです。「サンタクロースは高齢ですから皆さんが心配するのはわかります。でも私たちは彼と少し話をしました。とても元気です」とも語りました。f:id:ksen:20141210181502j:plain

  1. NHKはウィットと言いましたが、夏目漱石に言わせればこれこそまさにユーモアでしょう。漱石は「文学評論」の中で以下のように論じます。

「ユーモアとは人格の根底から生じるおかしみである。ユーモアのある人の行為は、他から見るとおかしいが、当人自身では他からおかしがられる訳がないと思っている。彼は真面目である。

そして、「これに反して、もし人を笑わせるという結果を予期しておかしみを演じるならば(略)その行為言動は故意である。(略)私の解釈によるとこれがウィットである」。

 

  1. 「本人は真面目だけどはたからみるとおかしい、それがユーモアだ」という漱石の理解を読んで、私が思い出すのは以下の小噺です。

――男が医者の診察室に入ってきた。

「おや、随分久しぶりじゃないですか」と医者が声をかけると、彼は「いやあ、実は暫く病気をしていましてね」と真面目な顔で答えた。――

この例は、イギリス人の国民性を紹介した小冊子で「代表的なイギリス人のユーモア」として紹介しているものです。そして、「イギリスでは、勉強するかどうかは任意だが、ユーモアのセンスを身につけることは必須である」と付け加えます。

 

  1. 漱石はまた、「談話」という文章の中で、ユーモアに相当する日本語に「こっけい」という言葉を使い、「深い同情がなければならぬ。(略)笑いのうちにも深い同情を有するのが上乗の作だろうと思う」とも述べています。

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 WHOのドクター・バンケルコフの発言はまさに「英国流のユーモア」あるいは漱石の言う「こっけい」と呼べる受け答えではないでしょうか。

 彼女はおそらく子供たちと同じ気持ちになってサンタクロースを待っている、その思い が伝わってきます。

「人を笑わせる」なんて意図がないことは終始生真面目な表情からよくわかるし、そこをおかしいと思うのは、彼女の語りから感じられる暖かさへの拍手ではないでしょうか。聞いていて、「(ユーモアの)上乗の作」と漱石が定義する「深い同情」を感じます。

 博士は答えながら、コロナ禍の中でひもじい思いや寂しい思いや難民キャンプで苦しんでいる子供たちにも、それぞれの「サンタクロース」が訪れてほしい、心からそう願っているのだろうと思いました。

 

東京藝大「メサイア」慈善演奏会は、今年が70回目の筈でした。

  1. 庭にあるかりん(花梨)の木が「今年は、なかなか落葉しない」と妻が不思議がっています。

 例年より暖かいせいか、まだ緑の葉が残り、枝に置いた蜜柑をついばむ目白の姿の見分 けがつかないほどです。

 1 2月の会食・会合予定はさすがにキャンセルが続いて、家にいる時間が増えて、庭を眺めながらそんな老夫婦の会話です。

 毎年の年末に欠かさなかった、ヘンデルの「メサイア」を聴きに行くのも今年はついにお休みです。東京でもやっているところがあるでしょうが、思い出深い東京藝大も、このところお決まりの渋谷の青山学院大学も、中止となりました。

 私にとって「メサイア」を聴きにいかずに終わる年は、藝大の演奏会を初めて聴いた中学生のときから69年、初めての出来事でしょう。

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  1. (1)「メサイア」は、ヘンデルが作曲した救世主キリストの生涯を主題とするオラトリオ(宗教的合唱曲)です。バロック音楽にも通じる馴染みやすい曲(アリアも合唱曲も)が多く、特に第2部の終わりの「ハレルヤ・コーラス」は日本でも誰でも知っているでしょう。

 1750年末、ロンドンで慈善演奏されて以来、キリスト降誕祭に合わせて12月に演奏することが多い。

 

(2) 藝大の「メサイア」チャリティ演奏会は1951(昭和26)年12月に始まりました。

「半世紀連続」と銘打って、2000年まで50年続きました。その後も継続されて、昨年2019年が69回目。この間、「1回も欠かすことなく上演されています」と大学の昨年のホームページにあります。作曲者の意図を酌んで、収入は社会福祉事業への支援に充てられます。

(3) その伝統ある歴史が今年、コロナ禍のなか途切れました。 69年間連続して東京藝大が社会に貢献してきたプロジェクトです。学生にとって晴れの舞台、とくに4人のソリストは学生からの抜擢であり、将来のプロの声楽家への登竜門と言われます。本当に残念な思いでしょう。

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  1. (1)ホームページには過去の写真もあるので、第1回演奏会の写真と第2回のプログ

ラムを載せました。

 当時の入場料は指定席200円自由席100円とあり、時代を感じます。まだ戦争の記憶も残り、私たちのほとんどが貧しく、傷痍軍人の白衣姿も街に見られました。

 

(2)以下私事になってしまいますが、何とも懐かしいです。私が中学に入学したのが、「メサイア」第1回演奏会と同じ1951年でした。

 そして、仲良しの友人3人と,中学生の分際で日比谷公園内の日比谷公会堂まで「メサイア」を聴きに行きました。

 

(3) これには理由があって、入ったばかりの中学の、ゲタさんというあだ名の音楽の先生が、藝大のチェロの講師もしていました。いまでは藝大の「メサイア」と言えば、知る人は多く切符を買うのに苦労するぐらいですが、当時は始まったばかりで、まだ知名度もなく、自分も出るから生徒に買ってもらいたいと思ったのでしょう。

 仲良し4人組は、音楽への興味はまるでなかった。当時の中学生にとって、保護者抜きで都心への夜の外出など稀有な機会で、そのことに胸躍らせただけだった。

 

(4)ところが、これが意外にも面白かった。大勢の正装した男女の大学生が舞台の上に整列し、コーラスの出番になると一斉に立ち上がって、よく調和のとれた美しい四部合唱をくり返す。この儀式が私たちに軽い興奮を呼び起こしたのです。

 

(5)終わっての帰り道、「毎年4人で50年連続聴こうではないか」という話になりました。その後、大学も職場も勤務地も変わり、約束を果たすことは出来なくなりました。しかし皆それぞれに「メサイア」への愛着は持ち続けています。市民合唱団に参加して高齢になっても歌っているのが2人います。

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4.私はといえば、もっぱら聴衆に過ぎませんが、その代り、どこの土地にいても年末は「メサイア」だけは何とか日程をやりくりして、毎年聴いてきました。

(1)ロンドンではジョージ・ショルティ指揮のロンドンフィルや、住まいのすぐ近くのセントメリー教会で、暖房もなく寒さに耐えながら、素人っぽい、しかし一生けん命のコーラスを聴きました。

豪州シドニーの12月は夏の盛り、それでもクリスマス・ツリーは街に飾られ、サンタクロースもお出ましになり、「メサイア」も正装で演奏されました。

 

(2)京都で13年大学に勤務したときは、単身赴任なのでひとりで行くことが多かったが、いつも12月24日、京都コンサートホールでの「オール同志社」の「メサイア」を聴きました。2000年、当初の約束の半世紀連続最後の藝大50回演奏会も、東京には行けず、京都でした。

 

(3)ニューヨークでは、リンカーン・センターに行くことが多かったです。

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5.69年間聴き続けた「メサイア」の演奏会それぞれに思い出があります。

 しかし、何と言ってもいちばんはニューヨーク、1980年12月14日のデヴィッド・ラインスドルフ指揮の「メサイア」です。妻と二人でリンカーン・センターに行きました。

 

 演奏会14日の6日前に、ジョン・レノンが、セントラルパーク西にある高級アパート「ダコタハウス」の自宅に妻ヨーコと帰宅する玄関の前で、ファンと名乗る男に射殺されました。

 14日の夜、いよいよ演奏が始まるので、オケもソリストも合唱団も舞台にそろい、指揮者が出てきて指揮台に上がるところで、聴衆に語りかけました。

ジョン・レノンのために黙とうをしたいので、参加してもらえるだろうか」という発言です。

 皆立ち上がって、いっしょに黙とうをしました。
 冒頭に指揮者が聴衆に声をかけるという出来事は、いまに至るも私には最初にして最後の経験で、忘れられない思い出です。

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 今年の12月8日、彼の死後40年経ちました。「セントラルパークの記念広場では、代表曲「イマジン」の文字があしらわれた円形の碑の上にレノンさんの遺影や花が置かれ、人々は思い思いに追悼した」と日本の新聞も報じました。

 

ドキュメンタリー映画「13 th(米国憲法修正13条)」のことなど

  1. 前回の黒人差別に関する本の紹介については、いろいろコメントを頂きました。

 ブログで本書を最初に取り上げた7年前に知って、読んで「衝撃をうけた」と中島さんが書いて下さいました。

 同志社女子大で勉強している飯島さん、対米歴の長い木全さんや松崎さんなど、皆さんそれぞれにアメリカへの想いがあることでしょう。

 岡村さんは若い頃の海外一人旅の経験をふまえ、「僕はジャズを通して黒人差別や公民権運動を知ることになったと思います」と書いて下さいました。

 木方さんからは、エコノミスト誌の論説を教えて頂きました。

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  1. コメントを通じていろいろな情報を知るのは、有難いです。

主として1970年代の音楽を、岡村さんから教えてもらいました。ロボ(Lobo)というシンガー・ソング・ライターの名前は初めて聞きました。

Youtubeで聴きました。初めてヒットした「僕と君とブーという名の犬」だの、「Goodbye is just another word(さよならは、もう一つの言葉にすぎない)」だの。

 前者は、おんぼろ車に乗って「君とブー」と3人でアメリカの南部から西部を走る唄。各連が、「自由なこの身が何て素敵なんだろう」で終わります。

 彼は先住民とフランス人の混血で、若い頃苦労したそうです。

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  1. 岡村さんは関連する本や映画もよく勉強しておられます。

例えば、18世紀末スコットランド人の探検家のマンゴ・パークという人も知りませんでした。

彼の旅行記は邦訳もあるようですが、西アフリカを探検し、残酷な奴隷貿易の実態も見ました。

以下は、岡村さんの紹介の一部です。

 

―――「奴隷貿易は極悪非道な人達が手を染めていたわけではない。温情と正義に富み、家庭の父であり、良識ある人々だった。

アフリカから奴隷を満載していた船が飲料水が乏しい為100人以上の奴隷を海に投棄した。人道主義者と目されていた裁判長ですら、この裁判で馬が船外に投棄された場合に準ずると判決を下した。

共に過ごした時、黒人奴隷達ははるかに大きな苦しみの中にありながらパークを哀れんでくれた。白人の一人に親切に施す彼等の優しさに胸を締め付けられた。ほとんどが女であった。(略)私が話せば、かならず親愛のこもった返事が返って来た。空腹で渇いていたり、ずぶ濡れで病気だったりすれば、ためらわず寛大な行動をとってくれた。70人の奴隷と出会った。一本の革ひもで7人が繋がれていて銃を持った男がいる・・・・。

(略)著者は彼等を見て、豊かさとは毎日の生活をどれだけ愉しんでいるか、どれだけ笑い顔でいられるかなのだと述べています。」――

ロボの「How I love being a free man」は、こういう奴隷制の歴史を思い起こしつつ自由の素晴らしさを歌っているように聞こえます。

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  1. たまには、私からも情報提供することもあって、映画「13 th (憲法修正13条―1865年奴隷制の禁止条項)」はその1つです。

(1)2016年公開されたドキュメンタリー映画。1時間40分、日本語字幕付き、以下のサイ

トは無料で観られます。

https://search.yahoo.co.jp/video/search?p=the+13th&fr=top_ga1_ext1_startup_sa&ei=UTF-8     

 

(2) 映画は、オバマ前大統領が語る、「アメリカの人口は世界全体の5%に過ぎない。しかし、受刑者は世界全体の25%を占める」という衝撃的な言葉から始まります。

その数は230万人、しかも33% が黒人(総人口では12%強に過ぎないのに)。因みに日本は約6万人だそうです。

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(3)その中には微罪やえん罪で収監されている者も少なくない。

かつ、民間企業が経営する刑務所もあり、巨大な収益ビジネスと化している、受刑者が強制労働によって安価な労働力として使役されている、などの実態が暴かれます。

映画はまた奴隷制の過去の歴史にさかのぼって、残酷な差別と弾圧を映像で伝えます。

岡村さんの映画を観た感想には、「レコードをかけて、ジャズは悲しく奏でているように聴こえ、ロボの歌はより美しく聴こえてきます。人間というものは悲しいものですね」とありました。 

  1. 最後に木方さんからの情報です。

(1)同氏は、英エコノミスト11月21日付論説に、「人種別データを取ることに蓋をしている社会的な問題(コロナ禍での人種別発症率の違い)が出ていました。人種問題がタブー視された社会の難しさをあらためて考えました」と書いてくれました。

 

(2)早速、私も電子版で読みました。

――英国では、黒人がコロナで死亡する確率は、同年齢の白人より4倍近く高い。

その理由は、人種の違いといった生物的な要因ではなく、貧困、住まいや医療、教育、仕事(在宅勤務の難しい仕事が多いなど)といった社会構造的な差別にもとづくものである。

各国は、人種差別につながる危険を憂慮して、コロナ罹患の人種別統計をとることに及び腰のところが多い。

しかし、こういう実態を知ってこそ対策が講じられるので、統計を整備することは、むしろ差別や格差を減らすことにつながるのではないか ――といった趣旨の論説です。

 

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(3) たまたま12月1日の毎日新聞が同じ問題を取り上げていました。群馬県では外国籍と日本籍とを分けたコロナ感染統計を出しており、9月には知事が「直近1週間の新規感染者の7割が外国籍とみられる」と発表し、波紋が広がっているという記事です。

 「新型コロナが、住民が根底に抱えてきた偏見を顕在化させ」るのではないか、と同紙は問題提起しています。

 

(4)偏見を助長させずに、しかし実態は把握し、対策を講じることが大事ではないか。そのためには、前回も紹介した竹沢泰子京大教授の言うように、「人種は社会的構造物に過ぎない」という理解を、誰もがもつことが必要ではないでしょうか。

読書会と『黒人差別とアメリカ公民権運動』という本

  1. 前回は、旅した福井の喫茶店で、1950~60年代のアメリカのジャズのレコードを見つけたと書きました。岡村さんは私より少し年下なので、70年代のレコードがまだ自宅にあるので、取り出して久しぶりに聴いたと書いて下さいました。誰にも、懐かしい・若い思い出がありますね。

私はやはり1950年代とその後の初めてのアメリカ暮らしも含めた1960年代です。

そんな時代を取りあげた本を、先週開かれた世田谷読書会で取り上げました。

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2.テキストは、『黒人差別とアメリ公民権運動―名もなき人々の戦いの記録』(J・M・バーダマン、水谷八也訳、2007年、集英社新書)で、発表と進行を担当しました。

 

(1)本書は、アメリカの公民権運動(米国黒人が、人種差別に抗議し、憲法の保障する諸権利の保護を求めて展開した運動)がいちばん高揚した時期、1954年のブラウン判決(最高裁が公立小学校の人種分離を違憲とした歴史的な判決)から1968年のキング牧師の暗殺までが取り上げられます。そして「アメリカ南部の州で起きた黒人と白人の間の衝突に焦点を当てる」。

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(2)しかし、その後もアメリカ社会の黒人差別は続きます。

とくに今年は世界最大の感染者と死者を出す新型コロナ・ウィルスの災禍の中で、黒人をはじめ貧困層への被害が大きく、その中で5月末に起きた警察官による黒人殺害の事件が激しい抗議デモをまき起こしました。

この事件をうけて、2013年に始まった「Black lives matter(黒人の命の大切さ)」運動の波が、全米、さらには世界各地に広がりました。他方で、これに対抗する動きもみられ、トランプ大統領はむしろ「法と秩序」を訴えて、アメリカ社会の分断は一層進みました。

 

(3)このような時期に本書を読む意味は、あらためて1863年リンカーン大統領による奴隷解放宣言と憲法の修正以後も続く、この国の差別と弾圧の残酷な歴史を振り返ることにあります。

その上で、1964年の公民権法制定をピークとする公民権運動の歴史を理解し、悲惨な出来事の中でも「ごく普通の個人と彼らの勇気・犠牲」を具体的に知ります。若者や女性が、黒人だけでなく白人も運動をサポートする、ときに命を賭けて活動する姿は感動的です。

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(4).また、キング牧師指導による「非暴力」の抵抗の思想が運動を支えていたこと、1963年8月首都ワシントンでの「私は夢がある」の名演説で終わる25万以上が参加した「集会」が大成功に終わったこと、しかしその5年後にはキング牧師自身暗殺されたという、この国の暗部に思いを致します。

 

〈5〉当日の読書会での話合いは、差別一般や、日本の差別や人種概念についても活発に拡がりました。

「実は人種相互の差異は小さい。人種とは社会的構築物である」という竹沢泰子京大教授の見解も紹介されました。 同教授は7月、毎日新聞の取材に答えて、「複数の人種ルーツをもつ人口が増える中で育ち、21世紀に成人したミレニアル世代と呼ばれる若者の意識の変化が人種差別の解消につながるのではないか」という期待を述べています。大坂なおみさんがその象徴の1人ではないかと未来の希望を感じました。 

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3.読書会の場所は、梅が丘に新しく出来た、「福祉保健総合プラザ」という区の施設で、きれいな建物で会議室もあり、スクリーンなどの設備も整っています。コロナ対策上もいいかなと思い、パワーポイントを使って、距離も取って発表をしました。

 もっとも、新しい施設だというのに、インターネット環境は出来ていません。いろいろ事情はあるのでしょうが、「日本は遅れているな」と考えざるを得ませんでした。

 ということで、You tubeのサイトから、上述したキング牧師のスピーチや、ジョーン・バエズがギター1本で「we shall overcome」を歌う映像をお見せしたかったのですが、残念ながら無理でした。そこで恥ずかしながら「ウィー・シャル・オーバーカム」は私がマスク越しに歌いました。

https://search.yahoo.co.jp/video/search?p=joan+baez+washinngton+1963+we+shall+overcome&fr=top_ga1_ext1_bookmark_sa&ei=UTF-8

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4.実は、私としては、本書の紹介以上に、1950~60年代のアメリカの文化を、あらためて読書会の皆さんと思い出したいと希望していました。

この時期は、赤狩りで有名なマッカーシズムや、ケネディ兄弟やキング牧師の暗殺、ベトナム戦争反戦運動など、悲惨かつ激動の時代でした。

しかし、同時に、アメリカの文化が花開いた時期でもありました。以下では50年代から、幾つか懐かしい名前を振り返って今回の終わりにします。

 

(1) テレビが50年代の半ばにはほぼ一家に1台が行き渡り、いまのインターネットのような影響を与え、白人の中流家庭を描いたホームドラマ「パパは何でも知っている」や「うちのママは世界一」が評判となった。

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(2)他方で若者が新しい姿を見せる。まずは、ジェームス・ディーンの存在―54年に登場し、わずか3本の映画に出て、若者の反抗を象徴する存在となり、24歳で自動車事故死した。

(3)エルヴィス・プレスリー。あのレナード・バーンスタインが「20世紀最高の音楽家」と呼んだ、貧しい深南部の出身で白人ながら黒人の文化を継承した。

River of No Return 1)Robert Mitchum/Marilyn Monroe- Rivière sans retour (En/Fr Lyrics) - YouTube

(4) マリリン・モンロー。私は彼女の出演映画では『帰らざる河』という西部劇での彼女がいちばん好きです。「恋は帰らざる河の旅人~♪」というバラード風の歌を歌います。

(5) そして前回も書いたように、ジャズの黄金時代でもありました。

こういう映像をお見せできなかったことが残念でした。