ドキュメンタリー映画「13 th(米国憲法修正13条)」のことなど

  1. 前回の黒人差別に関する本の紹介については、いろいろコメントを頂きました。

 ブログで本書を最初に取り上げた7年前に知って、読んで「衝撃をうけた」と中島さんが書いて下さいました。

 同志社女子大で勉強している飯島さん、対米歴の長い木全さんや松崎さんなど、皆さんそれぞれにアメリカへの想いがあることでしょう。

 岡村さんは若い頃の海外一人旅の経験をふまえ、「僕はジャズを通して黒人差別や公民権運動を知ることになったと思います」と書いて下さいました。

 木方さんからは、エコノミスト誌の論説を教えて頂きました。

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  1. コメントを通じていろいろな情報を知るのは、有難いです。

主として1970年代の音楽を、岡村さんから教えてもらいました。ロボ(Lobo)というシンガー・ソング・ライターの名前は初めて聞きました。

Youtubeで聴きました。初めてヒットした「僕と君とブーという名の犬」だの、「Goodbye is just another word(さよならは、もう一つの言葉にすぎない)」だの。

 前者は、おんぼろ車に乗って「君とブー」と3人でアメリカの南部から西部を走る唄。各連が、「自由なこの身が何て素敵なんだろう」で終わります。

 彼は先住民とフランス人の混血で、若い頃苦労したそうです。

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  1. 岡村さんは関連する本や映画もよく勉強しておられます。

例えば、18世紀末スコットランド人の探検家のマンゴ・パークという人も知りませんでした。

彼の旅行記は邦訳もあるようですが、西アフリカを探検し、残酷な奴隷貿易の実態も見ました。

以下は、岡村さんの紹介の一部です。

 

―――「奴隷貿易は極悪非道な人達が手を染めていたわけではない。温情と正義に富み、家庭の父であり、良識ある人々だった。

アフリカから奴隷を満載していた船が飲料水が乏しい為100人以上の奴隷を海に投棄した。人道主義者と目されていた裁判長ですら、この裁判で馬が船外に投棄された場合に準ずると判決を下した。

共に過ごした時、黒人奴隷達ははるかに大きな苦しみの中にありながらパークを哀れんでくれた。白人の一人に親切に施す彼等の優しさに胸を締め付けられた。ほとんどが女であった。(略)私が話せば、かならず親愛のこもった返事が返って来た。空腹で渇いていたり、ずぶ濡れで病気だったりすれば、ためらわず寛大な行動をとってくれた。70人の奴隷と出会った。一本の革ひもで7人が繋がれていて銃を持った男がいる・・・・。

(略)著者は彼等を見て、豊かさとは毎日の生活をどれだけ愉しんでいるか、どれだけ笑い顔でいられるかなのだと述べています。」――

ロボの「How I love being a free man」は、こういう奴隷制の歴史を思い起こしつつ自由の素晴らしさを歌っているように聞こえます。

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  1. たまには、私からも情報提供することもあって、映画「13 th (憲法修正13条―1865年奴隷制の禁止条項)」はその1つです。

(1)2016年公開されたドキュメンタリー映画。1時間40分、日本語字幕付き、以下のサイ

トは無料で観られます。

https://search.yahoo.co.jp/video/search?p=the+13th&fr=top_ga1_ext1_startup_sa&ei=UTF-8     

 

(2) 映画は、オバマ前大統領が語る、「アメリカの人口は世界全体の5%に過ぎない。しかし、受刑者は世界全体の25%を占める」という衝撃的な言葉から始まります。

その数は230万人、しかも33% が黒人(総人口では12%強に過ぎないのに)。因みに日本は約6万人だそうです。

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(3)その中には微罪やえん罪で収監されている者も少なくない。

かつ、民間企業が経営する刑務所もあり、巨大な収益ビジネスと化している、受刑者が強制労働によって安価な労働力として使役されている、などの実態が暴かれます。

映画はまた奴隷制の過去の歴史にさかのぼって、残酷な差別と弾圧を映像で伝えます。

岡村さんの映画を観た感想には、「レコードをかけて、ジャズは悲しく奏でているように聴こえ、ロボの歌はより美しく聴こえてきます。人間というものは悲しいものですね」とありました。 

  1. 最後に木方さんからの情報です。

(1)同氏は、英エコノミスト11月21日付論説に、「人種別データを取ることに蓋をしている社会的な問題(コロナ禍での人種別発症率の違い)が出ていました。人種問題がタブー視された社会の難しさをあらためて考えました」と書いてくれました。

 

(2)早速、私も電子版で読みました。

――英国では、黒人がコロナで死亡する確率は、同年齢の白人より4倍近く高い。

その理由は、人種の違いといった生物的な要因ではなく、貧困、住まいや医療、教育、仕事(在宅勤務の難しい仕事が多いなど)といった社会構造的な差別にもとづくものである。

各国は、人種差別につながる危険を憂慮して、コロナ罹患の人種別統計をとることに及び腰のところが多い。

しかし、こういう実態を知ってこそ対策が講じられるので、統計を整備することは、むしろ差別や格差を減らすことにつながるのではないか ――といった趣旨の論説です。

 

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(3) たまたま12月1日の毎日新聞が同じ問題を取り上げていました。群馬県では外国籍と日本籍とを分けたコロナ感染統計を出しており、9月には知事が「直近1週間の新規感染者の7割が外国籍とみられる」と発表し、波紋が広がっているという記事です。

 「新型コロナが、住民が根底に抱えてきた偏見を顕在化させ」るのではないか、と同紙は問題提起しています。

 

(4)偏見を助長させずに、しかし実態は把握し、対策を講じることが大事ではないか。そのためには、前回も紹介した竹沢泰子京大教授の言うように、「人種は社会的構造物に過ぎない」という理解を、誰もがもつことが必要ではないでしょうか。