読書会と『黒人差別とアメリカ公民権運動』という本

  1. 前回は、旅した福井の喫茶店で、1950~60年代のアメリカのジャズのレコードを見つけたと書きました。岡村さんは私より少し年下なので、70年代のレコードがまだ自宅にあるので、取り出して久しぶりに聴いたと書いて下さいました。誰にも、懐かしい・若い思い出がありますね。

私はやはり1950年代とその後の初めてのアメリカ暮らしも含めた1960年代です。

そんな時代を取りあげた本を、先週開かれた世田谷読書会で取り上げました。

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2.テキストは、『黒人差別とアメリ公民権運動―名もなき人々の戦いの記録』(J・M・バーダマン、水谷八也訳、2007年、集英社新書)で、発表と進行を担当しました。

 

(1)本書は、アメリカの公民権運動(米国黒人が、人種差別に抗議し、憲法の保障する諸権利の保護を求めて展開した運動)がいちばん高揚した時期、1954年のブラウン判決(最高裁が公立小学校の人種分離を違憲とした歴史的な判決)から1968年のキング牧師の暗殺までが取り上げられます。そして「アメリカ南部の州で起きた黒人と白人の間の衝突に焦点を当てる」。

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(2)しかし、その後もアメリカ社会の黒人差別は続きます。

とくに今年は世界最大の感染者と死者を出す新型コロナ・ウィルスの災禍の中で、黒人をはじめ貧困層への被害が大きく、その中で5月末に起きた警察官による黒人殺害の事件が激しい抗議デモをまき起こしました。

この事件をうけて、2013年に始まった「Black lives matter(黒人の命の大切さ)」運動の波が、全米、さらには世界各地に広がりました。他方で、これに対抗する動きもみられ、トランプ大統領はむしろ「法と秩序」を訴えて、アメリカ社会の分断は一層進みました。

 

(3)このような時期に本書を読む意味は、あらためて1863年リンカーン大統領による奴隷解放宣言と憲法の修正以後も続く、この国の差別と弾圧の残酷な歴史を振り返ることにあります。

その上で、1964年の公民権法制定をピークとする公民権運動の歴史を理解し、悲惨な出来事の中でも「ごく普通の個人と彼らの勇気・犠牲」を具体的に知ります。若者や女性が、黒人だけでなく白人も運動をサポートする、ときに命を賭けて活動する姿は感動的です。

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(4).また、キング牧師指導による「非暴力」の抵抗の思想が運動を支えていたこと、1963年8月首都ワシントンでの「私は夢がある」の名演説で終わる25万以上が参加した「集会」が大成功に終わったこと、しかしその5年後にはキング牧師自身暗殺されたという、この国の暗部に思いを致します。

 

〈5〉当日の読書会での話合いは、差別一般や、日本の差別や人種概念についても活発に拡がりました。

「実は人種相互の差異は小さい。人種とは社会的構築物である」という竹沢泰子京大教授の見解も紹介されました。 同教授は7月、毎日新聞の取材に答えて、「複数の人種ルーツをもつ人口が増える中で育ち、21世紀に成人したミレニアル世代と呼ばれる若者の意識の変化が人種差別の解消につながるのではないか」という期待を述べています。大坂なおみさんがその象徴の1人ではないかと未来の希望を感じました。 

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3.読書会の場所は、梅が丘に新しく出来た、「福祉保健総合プラザ」という区の施設で、きれいな建物で会議室もあり、スクリーンなどの設備も整っています。コロナ対策上もいいかなと思い、パワーポイントを使って、距離も取って発表をしました。

 もっとも、新しい施設だというのに、インターネット環境は出来ていません。いろいろ事情はあるのでしょうが、「日本は遅れているな」と考えざるを得ませんでした。

 ということで、You tubeのサイトから、上述したキング牧師のスピーチや、ジョーン・バエズがギター1本で「we shall overcome」を歌う映像をお見せしたかったのですが、残念ながら無理でした。そこで恥ずかしながら「ウィー・シャル・オーバーカム」は私がマスク越しに歌いました。

https://search.yahoo.co.jp/video/search?p=joan+baez+washinngton+1963+we+shall+overcome&fr=top_ga1_ext1_bookmark_sa&ei=UTF-8

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4.実は、私としては、本書の紹介以上に、1950~60年代のアメリカの文化を、あらためて読書会の皆さんと思い出したいと希望していました。

この時期は、赤狩りで有名なマッカーシズムや、ケネディ兄弟やキング牧師の暗殺、ベトナム戦争反戦運動など、悲惨かつ激動の時代でした。

しかし、同時に、アメリカの文化が花開いた時期でもありました。以下では50年代から、幾つか懐かしい名前を振り返って今回の終わりにします。

 

(1) テレビが50年代の半ばにはほぼ一家に1台が行き渡り、いまのインターネットのような影響を与え、白人の中流家庭を描いたホームドラマ「パパは何でも知っている」や「うちのママは世界一」が評判となった。

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(2)他方で若者が新しい姿を見せる。まずは、ジェームス・ディーンの存在―54年に登場し、わずか3本の映画に出て、若者の反抗を象徴する存在となり、24歳で自動車事故死した。

(3)エルヴィス・プレスリー。あのレナード・バーンスタインが「20世紀最高の音楽家」と呼んだ、貧しい深南部の出身で白人ながら黒人の文化を継承した。

River of No Return 1)Robert Mitchum/Marilyn Monroe- Rivière sans retour (En/Fr Lyrics) - YouTube

(4) マリリン・モンロー。私は彼女の出演映画では『帰らざる河』という西部劇での彼女がいちばん好きです。「恋は帰らざる河の旅人~♪」というバラード風の歌を歌います。

(5) そして前回も書いたように、ジャズの黄金時代でもありました。

こういう映像をお見せできなかったことが残念でした。