池田さん、シドニーではお世話になりました。
このブログ、年ですからいつまで続くか分かりませんが、
今年もよろしくお願い致します。
東京は、よく晴れたお正月3が日です。昨日は妻と明治神宮に初詣。
本日は墓参りです。
年賀状もぎりぎり年末に書き上げ、頂戴もしました。
「ブログ読んでます」というコメントも頂きました。
友人・知人のブログもあちこち覗きました。
「緑陰漫筆」は
実によく本を読んでおられますが、最新は塩野七生さん
の『ローマ亡き後の地中海世界』。これ面白そうですね。
私は、加藤周一の『羊の歌ーわが回想』(岩波新書)を昨年末に、
『続・羊の歌』を昨日読み終わりました。
昨年12月5日、89歳で逝去。大昔愛読しましたが、
追悼の気持ちもあって
どうしても再読したくなり、2冊とも田舎の家にあるのですぐには手にとれず、
新たに購入しました。
年末に旧知の編集者と酒を飲み、加藤周一の話も出て、
「私は『羊の歌』がいちばん
好きです」というコメントに大いに賛同しました。
もっとも、膨大な彼の著作のほとんどは読んでいませんが・・・
面白いと思ったのは、紀伊国屋で「加藤周一追悼」と
題してこの2冊が平積みになって
おり、前者が2007年3月26日第45刷、
『続』は2008年12月25日第34刷発行、ということで、特に後者は、発売したばかり、まさに「追悼」であわてて刷ったという気配です。
これだけ刷っているという事実にはたいへん興味があります。
しかも、保守化、内向き、閉塞化、戦後民主主義への見直し・・・
が言われる昨今の風潮の中で、今でも、加藤周一の良き読者がいるのだろうか?
と、岩波の意図が当たるかどうか興味がわいたり、
心配もしたり、期待もしたりという気持ちです。
一中、一高を経て、東大医学部卒。パリに留学し、英・仏・独語を会得し、
海外の大学でも講義し、日本文化と西洋文明とを自由に行き来し、
そして、戦後民主主義の知性と良識とを代表する
(もちろん、批判・否定する人も多い)知識人。
こういうマルチ人間はもう現れないような気がします。
以下、『羊の歌』の「青春」から ――
「しかし中西は死んでしまった。
(略)私は油の浮いた南の海を見た。
彼の眼が最後に見たでもあろう青い空と太陽を想像した。
彼は最後に妹の顔を想いうかべたかもしれないし、
母親の顔を想いうかべたのかもしれない。
愛したかもしれない女、やりとげたかもしれない仕事、
読んだかもしれない詩句、聞いたかもしれない音楽・・・
彼はまだ生きはじめたばかりで、もっと生きようと願っていたのだ。
(略)遂に彼をだますことのできなかった権力が、
物理的な力で彼を死地に強制したのである。
(略)太平洋戦争のすべてを許しても、
中西の死を私が許すことはないだろうと思う。
それはとりかえしのつかない罪であり、
罪は償われなければならない。・・・・・」