キュアリンクケアともろもろ

更新が6日ぶりです。

meishisakusenさん、有難うございます。
くだんの大学は10年ほど前に「文化政策学部」という新しい学部を作りましたが、
これは学生にあまりアピールせず、数年前に「現代ビジネス学部」に衣替えし、こちらはうまく
行っているようです。
「文化」を支援していくのはなかなか難しそうです。

小生の知人の日本人で夫婦とも画家がいますが、ずっとパリ郊外に暮らしています。アトリエ付きの安価な
住まいの提供をはじめ、この国は芸術家に対する支援が日本と段違いに厚い(もちろん外国人にも差別なく)
のが理由の1つ、と聞いたことがあります。


今回は、また長くなりますが、1週間、京都に滞在しましたので、とくにKSEN(京都ソーシャル
アントレプレナー・ネットワーク)の定例イベントを報告します。


1.5月26日、例によって「かすたくんの町家」にて「かんさい元気人シリーズ」の第11回、
「妊産婦を見守るケアの大切さ」と題して、
有限会社キュアリンクケア代表の谷口知子さんから話を伺いました。

サイトは以下の通りですが、もと看護師の谷口さんが2005年に設立。「看護職による妊産婦支援」を
ビジネスとして行いたいという想いで、
http://culica.jp/

・個人向けの妊産婦支援サービス(有料):妊娠してから原則、生後6カ月まで。
・企業向け妊産期支援サービス
・看護職向けの講座開催

の3本柱を事業内容にしています。


2.谷口さんの問題意識を要約すると以下の通りです。

(1)妊娠・出産が、「死をみとる」のと同じく、人生の大事業であること。その割に、
この間の第3者支援が大事だという認識がまだ一般的でなく、妊産婦を何とか応援したいという強い想いに駆られていること。

(2)また、「産後うつ」に陥る女性も少なくなく、母親としての自信がない、赤ちゃんがかわいいという
実感がわかない、等の症状(あるマンガ家がマンガで取り上げている)。これは虐待予防の観点からも
無視できない問題である。

(3)「子育て支援」という言葉はよく聞くが、親支援・家族支援の視点でつくられたシステムがない。
男性(夫)を巻き込む仕組みが大事で、企業の理解をもっと深めていきたい。「産んだあとの方が
もっとたいへん」とは、どこの育児書にも書いてない。この点、周りの理解と認識を高める必要がある。


3.以下は私の感想ですが、谷口さんの想いの強さがよく伝わるお話でした。出産がどんなにたいへんか、
私のような3人の子持ち、2人の孫持ちでさえ、まだまだ理解と共感が不足しているなと反省した、
貴重な夕べでした。


4.ただし、こういう支援が有料のサービス、ビジネスになじむか、というと、私にはまだよく分かりません。
潜在的なニーズはあるのかもしれませんが。


まず、例えばアメリカ人だったらどう対応するだろうか?とちょっと考えてみました。限られた私の
経験ではありますが。

(1) おそらくアメリカ人は、出産・育児は夫婦の共同事業という意識が日本より強いのではないか。


(2) 薄れたとはいえ、教会を含めたコミュニティのボランティアによる支援もあるだろう
(面白いことに、だいぶ昔の経験ではあるが、日本企業の海外駐在員の場合、他に頼れるコミュニティ
が無いせいもあって、こういう場合の奥さん同士の相互支援体制は、かなりしっかりしていたように思う。
もちろん企業によっても違うだろうが)。


(3) 病院のサポートも、ただ物理的に出産の面倒をみるというだけでなく、もう少し、幅広く
(夫へのアドバイスを含めて)支援する体制があったように思う。


(4) 「産後うつ」に関していえば、日本と違って、一般的にセラピーを受けるということが珍しく
ないので、出産に限らず、セラピストにさまざまな不安や悩みを聞いてもらうのではないか(仮に、
出産という特定したテーマになれば、(4)と(3)とがコラボレーションすることもありかもしれない)

というようなことで、アメリカだったらどうもこういう特定のビジネスは生まれにくいのではないかと
いうのが、私の感想です。

日本は上記が少し違うでしょうから、こういう特定したサービスがもっと必要かもしれませんね。
それだけ、日本では(アメリカ以上に)家族やコミュニティ(近所のおじちゃん・おばちゃん)の
相互扶助
が難しくなっているのでしょうか。


5.ベビー・シッターについて考えたこと

(1)何れにせよ、こういう個人的・家庭的なサービスを有料で頼むかどうかは、
それぞれの社会や国民性や文化によって異なるように思います。


もっとも日本人でも、日本ではなかなか馴染まないが、海外に行くと、そのやり方の便利さを有効に利用すると
いうサービスがあって、その典型が「ベビー・シッター」ではないかとふと思いました。


(2)「ベビー・シッター」という言葉はちょっと誤解されるかもしれませんが、赤ちゃんだけではなく
小学生の子供も、夫婦が夜外出をするときに、お金を払って一緒に留守番をしてもらうというサービスです。

かつ、いわゆる「ビジネス」ではなく、
ほとんどが大学生のアルバイトです。


私どもであれば、ニューヨーク時代、近くに住む上司のお嬢さん(当時、サラ・ローレンスという有名女子大生)
にお願いしました。


(3)もちろん、夫婦で外出しないといけない用事も日本より多いですが、それだけでなく、
2人で(或いは友人夫婦と)オペラに行ったり食事に行ったり、私的な外出にもたびたび利用しました。
「お嬢さん」はだいたい、私の家で自分の勉強をしたり、子供たちの勉強を見てくれたりします。
たびたびなので、そのうちお互いにたいへん親しくなります。冷蔵庫の中を自由に開けて、飲んだり
食べたりしていいよということになっています。我々が帰宅すると、夜遅いですから、
車で自宅まで送っていき、アルバイトのお金を払います。


(4) 帰国して、こういう風習がないので、日本は夫婦や友人の夫婦と、子供を置いて
外出するのが難しい社会だなあと痛感したことがあります。推測すると、以下のような様々な
理由があるのでしょう。

・そもそも、子どもを置いて遊びに行くのは可哀そうだ。

・子供を連れていかないような「遊び」(例えばオペラ)には興味ない。夫婦で行っても趣味も違うし、
会話もない。面白くない。(男は男同士でゴルフしたり、女は女同士で食事した方が楽しい)

・そもそも他人(しかも経験のない大学生)に大事な子供を預けて、何か事故でもあったらどうするのか。

・大学生の方も、あとで親から何か文句をいわれたら困るから、あまり引き受けたくない。

この点、私の経験ではアメリカ人もイギリス人も、まったく神経質でないというか、信頼している
というか、一向に気にしている風はなく、我々日本人もすっかり、いい風習だと感じて、友人夫婦との
(子供抜きの)会話やディナーや音楽会を大いに楽しんだものでした。


そのせいか、今でも、海外で親しくなった友人との付き合いは、夫婦で一緒に
というのが普通です。


話がすっかり逸れてしまい、かつたいへん長くなりました。