5日ぶりの交信です。
お礼が遅くなりました。
1.さわやかNさん、私も「文化革命」が必要だろうと考える1人ですが、
どうも(いろいろな意味で)抵抗も強そうですね(とくに、
ご指摘の「同性で群れる」「同期の桜」といった文化に満足している層からの)。
日本はやはり「いい国」ですから、みんな現状を変える気が薄いのでしょう。
これを変えるのは、しがらみのない年よりと
若者、とくに異文化を体験した若者ではないかと思います。
例えば、「クール宅配便」や「ウォッシュレット」が当たり前というのが
どれだけ他と違う特殊な国なのかということですよね。
SNSを活用していこうというNさんのチャレンジ、大いに期待しています。
2.十字峡さん、異質のコメント大歓迎です。
情報有難うございました。おかげ様で
「トイレの神様」をPCで聴くことができました。
これ昨年の評判の曲だったのでしょうか。
「物語」があるというのがいいですね。涙腺を十分刺激されました。
3.昨年評判になったといえば、ご存じかもしれませんが、『もしドラ』
というのがあり、今回はこの報告です。
昨年のベストセラー堂々第1位だそうで、130万部以上売れたそうです。
正式な書名は「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの
『マネジメント』を読んだら」(岩崎夏海、ダイヤモンド社)という長い題名。
要は、公立高校野球部の女子マネージャジャーになった「みなみ」が
弱小野球部を甲子園の東京代表を目指すまでに強いチームにすべく努力する。
その際に教科書として活用したのが有名な、ピーダー・F・ドラッカーの
『マネジメント』である、というお話です。
4.この手のベストセラーというのはあまり読まない方ですが、実は、今月の
下旬から古巣の宇治所在の大学で集中講義をやるので
その材料になるかなと思って読んでみたのですが、なかなか
面白く、使えそうだなと思ったのでそのことを書いておきます。
まずは何と言っても、(ドラッカーの)理論と(弱小野球部を強くするという)
実践との組み合わせがよい。
言うまでもなく、実践には理論が必要であり、かつ理論は実践によって検証され
なければ意味がないという大原則にもとづいているのが魅力の第1点です。
「みなみ」の場合は、まさにドラッカーの理論に沿って実践していく。
そして見事に成功する・・・・
もちろんこれは「お話」ですから、現実にはそううまく行くはずがない。
・・・それでも、やみくもに「努力したり」「動いたり」しても成果は上がら
ない。
5.それなら「みなみ」はどう動いたか?
ドラッカーに沿って、「定義から入る」。マネージャーとは何をするのか?
そして「あらゆる組織において、まず“われわれの事業は何か、何である
べきか”を定義づけることが不可欠である」
「組織の目的と使命を定義するとき、出発点は1つしかない。
顧客である。顧客とは誰か?との問いこそもっとも重要な問いである」
ここから「みなみ」は、
「顧客(マネージャーにとっての顧客は、野球部員も含む)
に感動を与えるための組織」というのが野球部の定義だったんだ!
という出発点に立ち、そこから「目標も決まった=甲子園に行く」
6.次にドラッカーのもっとも重要な命題に入ります。
「企業の目的は、顧客の創造である。
したがって、企業は2つの、そして2つだけの基本的な機能をもつ。
それがマーケティングとイノベーションである。
マーケティングとイノベーションのみが成果をもたらす。
「みなみ」がこれをどのように実践していくか
(もちろん、他のドラッカーの命題も)が本書の中心になりますが、
紙数オーバーにつき省略します。
7.まあ私もご他聞にもれずドラッカーをよく読む方ですから、
彼の考えをうまく・わかりやすく応用してみようという発想には
(もちろん「こんなものじゃない」という
真面目な学者の批判はあるでしょうが)感心しました。
いちばん感心したのは、本書を作った、著者と編集者との共同作業です。
どういう経緯でこの本が出来上がったかは知りませんが、
おそらく無名だった著者を発掘して出版に持ちこんだ編集者にとって、
これこそマーケティングとイノベーションの大成功事例ですね。
言うまでもなく、ドラッカーの著作はダイヤモンド社のドル箱商品であり、
本書によってドラッカーの本を買う人も増えるでしょうから、まさに
「ウィン・ウィン」の好例なわけです。
8.新春から、高校サッカーの選手権で京都府の府立久御山高校が
準優勝となり、「公立高校の星」と称えられています。
わずか人口16千人の小さな久御山町は大いに盛り上がっていることでしょう。
サッカー部に女子のマネージャーがいるのか、監督を補佐してどういう
チームにすべく努力していったのか、どういう役割を果たしたのか?
訊いてみたいものです。
もちろん、監督や選手がヒーローでしょうが、裏方もまた頑張ったのだ、
裏方にも大事な役目があるのだ。
(編集者もマネージャーも・・・ちなみに「監督」は
英語でマネージャーですが、ここでは
日本の部活での「マネージャー」のこと)
『もしドラ』という本は、そういうメッセージを伝えたという意味も
大きいのではないかと考えています。