ユーモアのセンスと「2012年度レガタム繁栄指数」

1. よく散歩している北沢川緑道の梅の木もほころび始めました

甲賀さん(FB)、さわやかNさん、我善坊さん、名無しさん、遅くなりましたがコメント有難うございます。
さわやかNさんのコメント、アルジェリアについて映画「シェルブールの雨傘」が同国を舞台とは知りませんでした。
アルジェリアと言うとやはりノーベル文学賞を受賞したアルベール・カミュ
また同国生まれユダヤ系フランス人の「脱構築の哲学者」ジャック・デリダが思い浮かびます。
カミュと著書『異邦人』とその邦訳者窪田啓作氏について柳居子さんが1月29日ブログで紹介しておられます。有り難うございました。
http://plaza.rakuten.co.jp/camphorac/diary/201301290000/


2.2国間関係がさわやかNさんの言うように「近代という薬の副作用」とすれば、その副作用を和らげるために、我善坊さんの言う「バンタリング」が必要なのでしょう。
だからこそのエスニック・ジョークであり、ユーモアのセンスだろうと思います。
因みに僭越ながら、4年前に書いた拙著『折々の人間学』の「ユーモアの作法」では、
「現代ユーモア引用句事典」を紹介して、全部で5500ある「ユーモアのある引用」をテーマ別に見ると「国・国民性」が230でダントツに多く、2位が、男女112、と書きました。

また同書では、ユーモア(およびその表現としてのジョーク)の作法に触れて、
第1に、弱者の強者に対する攻撃の矢であり皮肉のつぶてとして意義がある
第2に、と同時に、笑う対象への敬意ないし愛が必要である(漱石は「深い同情が必要」と書いた)
第3に、まず自分を笑うことである(「笑いには、自分という存在のおろかさに対する感受性が必要なのではあるまいか」と私は書きました)


第3について補足すれば、あの、こわもてするジャック・ウェルチ(前のGEのCEO、「20世紀最高の経営者」とも呼ばれる)でさえこう言っています。

「実際、成熟した人はみんなユーモアのセンスを持っている。自分のことを笑い飛ばすことができるのだ!」


3. ついでに、上記の事典が仏英についてどんな引用を載せているかというと、
フランス人を「チ―ズ大好き・すぐ降参する猿」とからかう言葉を前回紹介しましたが、フランス人とチーズについて、ド・ゴール自身こんなことを言っています。
「246種類もの異なったチ―ズのある国を、どうやったら統治することが出来ようか」

また、イギリス人については以下のような言葉が紹介されています。

「イギリス人がいちばん自慢するのは、自らの謙虚さ(modesty)についてである」(英国の某新聞から)
「イギリスで多少ましな食事をしようと思ったら、一日三度、朝食をとることだ」
サマセット・モーム

たしかに、こういう言い回しには、自国に対する、距離を置いた、醒めたユーモア感覚があるように思います。

日中の関係も(国同士も、国民相互も)このように、
お互いに相手への敬意と共感を忘れず、自分の弱点をも十分認識してそれを自分で笑い飛ばし、その上で、弱者の立場から強者への皮肉のつぶてを(物理的な行動や暴力ではなく)言葉で投げようとすることができれば、
少し変わるような気がするのですが・・・・
(もっと言えば、こういう教師や教育が育てば、いじめも少なくなるように思うのですが)


4. 甲賀さんのコメントのお礼はFBに書きました。
最後になりますが、「名無し」さんがずいぶん古いブログにコメントを書いておられ驚きましたが、たまたまこの日のブログは2011年度の「レガタム繁栄指数」についての報告でした。
http://d.hatena.ne.jp/ksen/20120810

そこで、昨年10月末に発表された、「2012年度レガタム繁栄指数(Legatum Prosperity Index)」をご紹介します。

(1) 今回は142カ国の「繁栄」をランク付けており総合順位のトップ5は
1位:ノルウェイ、2位:デンマーク、3位:スウェーデン
4位:オーストラリア、5位:ニュージーランド
(以下、カナダ、フィンランド、オランダ、スイス・・・と続く)

(2) ここまでの9カ国は、順位の多少の変動はあるが、常に顔を出しており、トップ5の顔ぶれも変化ない。
2012年の大きな変化はずっと10位だったアメリカが12位とトップ10から脱落し、有力紙ウォール・ストリート・ジャーナル紙は「アメリカ順位低下」と記事にした。(因みにイギリスは13位と変わらず)


(3) この「指数」は、国連、世銀、OECDなどの89の指標を分析し、「経済」「統治(政治)」「教育」「ソーシャルキャピタル」「起業家精神」など8つの項目に分けてそれぞれの国別ランクを出し、同じウェイトで総合順位を出すもの。
因みに、日本は22位(2011年21位)。アジアでは、香港18位、シンガポール19位、台湾20位に続きます。
日本の22位は21位のフランス、23位のスペインに挟まれています。
日本は項目別に見て「個人の自由度」が42位と低く、これが全体の足を引っ張っている。「個人の自由度」には言論・表現の自由の他に、女性の社会参加度や、移民・少数民族への対応の度合いが含まれているので、日本が低いのも無理ないか。

(写真は「個人の自由」の順位を「上位国」「中位国」等に色分けした世界地図です)

「個人の自由」について補足すれば中国は128位とほぼ最低に近く、他方で「経済」で11位と極めて高い(日本は「経済」12位)のに総合は55位にとどまり、項目ごとのアンバランスが日本以上にさらに顕著。


(4) なお、レガタム研究所(Legatum Institute)は2007年にロンドンに設立された私立・独立系のシンクタンクで歴史は新しいですが、2008年からここ5年、独自の「繁栄指数」を発表しており、欧米やアジアのメディアでも注目されています。