[大学と若者]シドニーの旅とオーストラリアの教育など

1. 海太郎さん有り難うございます。豪州のワインをご一緒に飲む機会を持ちたいものです。

ワインもそうですが、物価高騰でホテルやレストランの値段も大きく上がっているのは、長年デフレの日本に暮らしている身には驚きでした。

それでも今回は随分安上がりの旅だったと思います。

飛行機はもちろんエコノミークラスで豪州人の観光客で混んでいました。
最近は冬に北海道を中心にスキーに来る人が増えて、世界でも最高の雪質との評判とのこと。

昨年は約20万人のオーストラリア人観光客が訪日し、うちスキー客は3万人強とのこと。大いに来てほしいものです。

安上がりの最大の理由は、友人の世話でSt.Leonards(セン・レナーズ)という郊外電車の駅のすぐ近くにあるアパートに無料で滞在することが出来たことで、これは年金生活者には有難かったです。市の中心まで電車で15分ほど、アパートとオフィスビルが混在しているような、便利でしかも静かな街で朝夕を過ごし、落ち着きました。
郊外に滞在して電車に乗って市内に出掛ける朝というのもいい感じでした。学校も近くにあるので通学する子供たちも見かけました。

2. シドニーで長く、日豪の教育交流(日本の若者をTAFE という専門学校で学ぶプログラムの企画運営など)に携わっている日本人女性Sさんと夕食をともにして、いろいろ聞く機会がありました。
(1) 前に、Legatumというロンドンにあるシンクタンクによる国別の「レガタム繁栄指数」というデータを紹介しましたが、それによると「教育水準」で北欧やオランダ等と並んでこの国のランクは高く、2012年度は「世界2位」とのこと。


(2) その理由は?というと、
高等教育への進学率の高さ、その高等教育における、大学と並んでこの国のユニークな「TAFE 」という公立の職業訓練の専門学校の存在、チームワークを重視した自主性を尊重する教育内容などにあるのでしょう。


(3) TAFEは、職業に直結した実践的な知識や技術を提供する機関で資格を全国で統一し、そのレベルの高さは世界でも注目されているようです。


(4) このように高等教育の場に選択肢があって「複線型」になっていること、しかもTAFEで終えるだけでなく大学への編入も可能な制度になっていいるのが特徴です。
日本の場合は、大学を終えてから「自分は調理師になりたいんだ」と改めて専門学校に入り直すケースもありますが、
ここでは、逆でTAFEから大学へ(実学が先、リベラルアーツはむしろ後でという発想)、しかも編入することで期間も授業料も節約できます。


(5) TAFEはまた「生涯学習の場」でもあり、前回紹介した和服の似合う「マドンナ」も現役引退して、目下あらためて英語を習いに通学している由。えらいものです。
彼女のクラスには、中国人やイラン人もいるが、彼らは自己主張がまことに強い国民性なので閉口する、という話もしてくれました。

(6) 前回も、いまこの国で、インド、中国、中東からの移住者が急増していると書きました。
教育の現場でも、例えば、
かってはアングロサクソン系で占められていた名門の私立高校もアジア系の学生が主流となり、成績でも上位となり、白人を「ヘイ、ホワイト!」とからかったりする光景さえ見られる・・・・


3. このように、多民族化・多文化化・移民国家化がいっそう進んでいる状況は、良かれ悪しかれ社会に大きな変化を与えていることでしょう。
そして、それが、この国の「教育」の強さを支えているのではないか?
と考えました。

「学びの場」で自分とは違う人たちと知り合うことの大切さです。

「マドンナ」が、英語のクラスで自己主張の強い中国人やイラン人(おそらくインド人もアメリカ人も)に閉口しているという嘆きを興味深く聞きました。


彼らと交流し、議論し、語り合おうと努力している、伝統的な・しとやかな日本女性の姿が目に浮かびます。


閉口しつつも、自分とは発想も行動も価値感も同じではない人たちが居るのだ、と「教育」を通して実感し体験する意味は大きいでしょう。
しかも、自らの弱点(例えば、自分の意見を持たない・主張しない)だけでなく、彼らには無い素晴らしさを再認識することも出来る。

日本人の謙虚さ、礼儀正しさ、和の精神・・・等々。これらを自らが再認識するだけでなく、日常のコミュニケーションを通して、中国人やイラン人といった他者に「自分とは違う人間が居るのだ。彼らの価値感も良いところがある」という「多様性の価値」を印象づけることが出来るのではないか。
それこそが本来の教育の目的ではないのか。
そんなことを考えました。

Sさんの話では、ここの教育でもっとも重視するのは「自主性」と共に「チームで学ぶこと、チームワーク」だと聞きましたが、そういう教育を可能にさせる・そういう教育をせざるを得ない必然と環境がこの国にあるということでもありしょう。


4. だからこそ、「多民族国家」を代表するオーストラリアの教育が注目されている理由も理解できるような気がします。
そして、この国では今や、「教育」が石炭や鉄鉱石に次ぐ、第3位の「輸出品」になっているそうです。
留学生の受け入れを「輸出産業」と位置付けて、戦略的に動き、そのための法整備も進んでいる。
今、外国からの留学生は年間60万人弱とのこと。人口は増えてるとは言え、22百万の国ですから、仮に中学から大学までの在校生が人口の3分の1居るとしても、その10分の1弱ですからきわめて高い比率だと思います。