1.台風19号は、報道や映像で、甚大な被害を知って、その惨状に衝撃を受けた方も多
いでしょう。(茅野の山奥は避けてくれたようです・・・)。
有力な政治家が「まずまずに収まった」と発言し、後に撤回したと報じられました。
この発言には、いろいろ考えさせられました。
古典的なベンサム流功利主義の思想、よく知られる「最大多数の最大幸福」という言葉への誤解が根っこにあるのではないかと考えました。
この言葉から、「「最大多数の幸福」を目指すのが大事➜「ある程度の少数の不幸」は仕方がない」と考えてしまう人がいるのではないでしょうか。
社会の成員ひとりひとりではなく、全体の中の数・量で考える、死者がこの程度なら「まずまず~」と無意識に感じてしまう・・・のではないか。
そういう、災害でも戦争でも「この程度ならやむをえない」という発想は危険ではないのか。そう感じる自分自身は、「この程度」の中に入っていないのでしょう。
そんな思いを抱きながら、友人や家族といろいろ話を交わしました。
2.(1)ロンドンに長く住む次女からメールが来ました。
「 改めて自然の恐ろしさを感じるニュースでした。イギリスもここ一か月ほど雨続きで気分が暗くなる毎日ですが、少なくとも「普通の雨」なので、地形的に台風やハリケーンがないことには感謝すべきだと改めて感じています」―
かくも自然は不公平。せめて人間は可能な限り公平と正義を目指したいものです。
(2)他方で理系の友人たちに「AIだの何だのこれだけ科学が進んでも台風のような自然
の猛威を制御することは不可能なのか?」と訊いたところ、悲観的な返事でした。
――「台風のエネルギーが大きすぎて、人間の力でどうこう出来るものではなさそう」
――「人類が1世紀以上にわたって排出し続けた温室効果ガスによる影響が、いよいよ牙をむきだしたと疑わざるを得ません。」
もう一人、建築の設計専門家に、「電柱の地中化をもっと早く進めるべきではないか?河川の堤防が、あんなに簡単に決壊するものか?」と質問したところ、「まったくご指摘の通り」という返事でした。
「電柱の地中化について、先進国でこんなに電柱が多いのは日本ぐらいではないか」。
堤防決壊については「土木専門の友人に訊いてみたが「かなりの程度人災だと思う」という意見が多かった」と言っていました。
何やら心配な話です。災害が起きると、これからも統治者は「まずまずで収まった」と感じるか、「想定外の事態だった」と釈明するかのどちらかで終わるのでしょうか。
3.暗い話とは裏腹にラグビー・ユニオンW杯は、明るい話題です。
(1)昔の職場同期の有志10名前後が毎月集まって勉強会をやっていますが、10月の例
会はスコットランド戦の翌々日でした。
勉強会の今回の議題は「香港は生き残れるか」でした。講師の某君は香港勤務もあり、海外勤務の多い我々は勤務した地を好きになる傾向が強いので、彼もいまの現状を大いに心配しています。
――「予断は許さないが、第二の天安門事件はないのではないか。いまは30年前と違って世界が許さないだろう。しかし、香港人の要求を中国政府が受け入れるとは思えない。よって、対立は長期化し、暴力は使わないまでも、相当な締め付けで民主派の骨抜きを狙ってくるのではないか」――という、これも悲観的な見立てでした。
(2)終わって雑談になり、当然にラグビーの話題になり、皆が明るくなりました。
出席した同期生の中に銀行のラグビー部OBが2人いて、小規模な銀行だったにも拘わらず当時インターバンクで強かったという話を始めました。
「俺と先輩某さんの2人がロックをやったときは、スクラムでどこにも負けなかった」だの、「ラグビーは素晴らしいスポーツ。やっていて本当に楽しかった。それぞれの個性を持ったメンバーが集まり、上下関係がうるさくない。東銀の文化に似てる。だから強かったのかも」という自慢話まで出て、他の連中は「本当かな?」といった表情で聞いていました。
(3)たしかに、オリンピックやサッカーと違って、国籍に縛られずに一定の条件を満た
せばその国の代表になれるというのは「多様性」と言っていいでしょうね。
東京新聞の10月14日社説は、「ラグビー8強、多様性が生んだ快挙」という見出しで、こう書いています。
―――代表チームには日本で生まれ育った選手の他に、多様な国々から集まったメンバーがいる。ジョセフHCは「ワンチーム」を掲げた。その言葉の下でチームは結束し,
出身国の違いを強みに変えたーーー
こういう指摘、もちろんその通りでしょう。
(4)しかし、わざわざラグビーにだけ「多様性の快挙」と騒ぐのも、日本社会そのもの
が「多様化」していない裏返しなのかな、と少し滑稽な感じもしました。
例えばオーストラリアであれば、25百万の人口の約3割が外国生まれ、国民の半分が自らが移民か親が移民かです。ラグビー代表の顔ぶれを見てあらためて「多様化してる」なんて思わないでしょう。
「ラグビー選手の選考基準は特別、だからここだけは多様化している」という認識だけで終わるとしたら、社会そのものは一向に変わらないのではないか。
4.そもそもラグビーの場合は、歴史的な背景もあって、必ずしも国別対抗ではない。
(1)だからこそ、「英国(正式名はグレートブリテン及び北アイルランド連合王国、United Kingdom)」からはイングランド・スコットランド・ウェールズがそれぞれ独立のチームが出るし、逆に北アイルランドは「アイルランド」のチームに合流する。
これは面白いですね。一部とはいえ、現在の「国民国家」を大前提とする国際秩序の例外になっている。
(2)ただこの点で私は誤解していました。歴史的な事情で、英国とアイルランドに限っての例外だと思っていましたが、ラグビーW杯予選には「香港」のチームも参加しています。
前々回のブログに岡村さんが「願わくば香港が出て、サモア、フィジーあたりと対戦すればなあと考えながら見てました」とコメント頂き、「いい夢物語ですね」と返事しました。
ところが、沢崎さんが私の誤解を解いてくれました。――「香港は当然ながらラグビーの歴史が長く、選手はほぼ全員アマチュアだと思いますが国際大会にも「香港」で出場しています。今回のW杯も最後の一枠をカナダなどと争いました。デモの参加者の中にも、この大会を楽しみにしていた人々がいたかもしれない、と想像して何ともいえない気持ちになります」。
(3)あの中国でさえ、ラグビー「香港ドラゴンズ」の存在に異を唱えられないとしたら、これは面白いですね。
早速ググると、「最新の世界ランキング24位」とあります。大会に出ているカナダが22位ですから結構強いです。
国籍条項はないのだから、イングランドやスコットランドから有力な選手が加入して、さらに強いチームになって、岡村さんが言われるように予選を突破して世界大会に出るようなことがあれば・・・・「それこそ多様性の快挙」として世界が香港を応援するのではないか。
しかし、その前に中国が介入して、英国も腰が引けて自国選手の加入にブレーキを掛けるかもしれない・・・・
なんてことをいろいろいろと考えた次第です。