1.(1)またまた台風による記録的豪雨が大きな被害をもたらしました。
そんな中でラグビーの話題かつ身内の話で恐縮ですが、東京在の長女夫婦は揃ってラグビー狂で、「もうすぐ終わると思うと寂しい、しかし逆にそろそろ終わらないと体がもたない」とメールが来ました。
香港のラグビー・チームについてもいろいろ教えてくれました。
「近代国家の線引きと少し角度の違う価値観という意味で、香港とラグビーは相性がいいと思う」というコメントもあり、その通りでしょうが、それだけに本土の締め付けも強いのではないか。「チームのメンバーや観客は“香港人”より英国系が多く、しかも中国国歌を歌う」そうで、その表れかもしれません。
その“香港人”ですが、24日付の東京新聞によると「6月の香港大の調査で18歳から29歳の2.7%が「自分は中国人」と答えた一方、「香港人」と答えたのは75%だった」そうです。香港人の若者が(今はそんな余裕はないでしょうが)香港ラグビーをもっと応援すれば面白いのではないかと思うのですが。
(2)他方で英国在の次女からもメールが来ました。
小学3年生の孫は、「週3回ラグビー(この年齢ではコンタクトは厳しいので、「タグラグビー」といって体の両脇にヒモを付けてボールを持っている人のヒモを取るゲーム)をやっており、先週土曜日は雨の中、ウィンブルドンの男子校と対決。6人制ですが、彼は2トライを決めた上に相手の「タグ」を取りまくったことが決め手となり、"Man of the Match" になりました。ということで、我が家も日本の活躍に盛り上がっています。相変わらずの親ばか報告お許し下さい」というメールが来ました。(3)我々老夫婦はTVで、台風被害の映像に心を痛め、ラグビー観戦もしつつ、調布の神代植物公園で10月8日から「秋のバラフェスタ」を開催しているので見に行きました。
薔薇は、それぞれの名前を知るのも面白いです。「プリンセス・チチブ」(この薔薇は英国製。秩父宮妃はロンドン生まれ、かっての「朝敵」会津藩主松平容保の孫)や「ピース(平和)」や「イングリッド・バーグマン」は古くからある定番です。
その英国の国花・薔薇を胸につけて戦ったイングランド選手、昨日の対ニュージーランド戦で大いに頑張りました。
2.「ピース」と言えば、新しい天皇が即位し、「平和を願い、国民に寄り添い、憲法にのっとり~」と宣言しました。
願ったところで平和が来るものではないにしても・・・・。
とくに中東は、「戦争が日常で、平和が非日常な」世界が続き、今回の、クルド人を見捨てて米軍をシリア北部から撤退させたトランプ大統領の唐突な判断に、内外の批判が高まりました。
厳しい批判を浴びせたのが、10月19日号の英国エコノミスト誌です。表紙には、ゴルフバッグを抱えて、手を振って飛行機に乗り込むトランプの戯画を載せ、「彼のアメリカを誰が信用できるか?」と題する記事を載せています。
3.論説は、今回の判断がアメリカ自身にとって戦略的失敗であると結論付けています。
(1)トランプ大統領は、世界最悪のテロリスト集団ISの掃討に一緒に戦ったクルド人と英国を見捨てて、この地域に再び、紛争を起こす空白地帯を作り出した。
(2)ISを復活させるかもしれず、血にまみれた独裁者アサドのシリア、イラン、トルコ、ロシアに利益をもたらす。
NATOの同盟国であるトルコと欧州諸国との亀裂が深まる。プーチンの思う壺であり、彼の影響力は中東だけでなく、国境を接するNATO加盟国であるバルト海沿岸諸国にも強まるかもしれない。
アフガニスタンにいるタリバンも元気づく。中国も、好機到来と思うのではないか。
(3)対して、台湾、韓国、サウジ・アラビア、イスラエルなどは不安に感じるだろう。
いまもアメリカは歴史上のどの国よりも最多の同盟国を持っているが、彼らは今後もアメリカを頼れる国と思うだろうか。
今回の出来事はこのように、第2次世界大戦後、アメリカが長い間かけて築き上げ、そこから自らも大きな利益を得てきた国際秩序を揺るがすことになるかもしれない。
いちばん心配なのは、人権、民主主義、頼りがい、公正さはアメリカのもっとも強力な武器であるのに、アメリカ自らがその価値を損なっていることにある。
もし中国やロシアが我が道を行くとなると、「力は正義なり」の世界がまかり通り、西欧社会にとってきわめて敵対的な世界を導くだろう。
(4) と論じるエコノミスト誌の、自由主義世界に抱く危機感はかなり強いと感じます。
4. 他方で、同じエコノミスト誌は即位直前の新天皇についても記事を載せています。
「“堅固な亀の甲羅”の奴隷になっている」と題して、保守的なシステムへの皮肉です。
(1)彼は、皇太子時代にオクスフォードのマートン・カレッジで2年間を過ごして、帰国後書いた「テームズ川と私」と題する回想録には、「おそらく私の人生でいちばん楽しい時間を過ごした」とある。
(2)しかしこの本が出版されることに宮内庁は反対した。
ことほどさように、彼の英国での楽しい日々が日本で再び日の目を見ることはないのではないか。代わって彼はいま格式と神秘に包まれ、規則と伝統に縛られている。
その点は新皇后も同じで、皇太子妃時代に、最初の記者会見でほんの少し夫より長く話したことや公衆の前で一歩前を歩いたことで注意された。
(3)日本のメディアもこのような約束ごとに概して同調しており、欧州の大衆紙が大喜びで報道するような愛情ある彼らの暮らし(royals’ love lives)に触れることもない。
夫妻の婚約(1993)も、皇太子妃時代の適応障害(2003)も、日本のメディアは知っていたにも拘わらず、最初に報じたのは外国のメディアだった。
(4)彼らの個人資産は比較的わずかなもの(limited)である。個人資産の殆どは戦後国家資産に没収された。宮殿も住まいも国有であり、その運営管理費も国家負担である。
ある専門家の推定では、上皇夫妻が天皇であった当時の個人的な出費は年に5百万円である。これでは欧州のような“プレイボーイ”皇太子が生まれる可能性はないだろう。
(5)というような、エコノミスト誌にしてはいささか下世話な話題を取り上げています。もっとも、「憲法にのっとり」と宣言した天皇の父・現上皇は在位中に、遠回しにではあるが(albeit obliquely)、日本の平和主義の象徴である憲法9条を改正したいとする安倍首相の意向に疑問を投げかけた」とも報じます。
(6)皇太子時代のメモワール『テムズ川と私』は、同誌は「日本では出版が反対された」と書いていますが、ネットで調べると「学習院教養新書」というところから1993年に出ています。普通の出版社は遠慮したということでしょうか。
但し部数が少ないせいもあるのか、アマゾンで買おうとすると9850円もするので驚きました。他方で、英訳はもと駐日大使をしたヒュー・コータッチさんが訳していて、2006年のハードカバー版に続いて今年の2月にソフトカバーも出たそうで、こちらは1865円。早速注文したところです。