1.「日豪合同セミナー」に参加するため、6月の週末に一泊した「大学セミナーハウス」について、少し記録しておきます。
(1)ここは、大学や企業などがセミナーなどに使用している施設で、八王子郊外の丘陵地に1965年に建てられ、
「吉阪隆正(当時早稲田大学教授)の手による幾多の名建築のなかでも、その誕生の経緯や出来上がった空間のユニークさにおいて際立っている」
http://www.arch.waseda.ac.jp/2504/
(2) 1999年「日本の近代建築20選」に選ばれ、2017年には本館が「東京都選定歴史的建造物」に指定されました。本館の写真を載せましたが、「地面に三角形の楔(くさび)を打ち込んだような一種、異様なデザイン」です。
(3)初代館長と吉阪とは、当時まだ新しかった「セミナー」という概念は何かを考え、それを具体化する新しい空間をつくろうとしました。
それは、吉阪の言葉によると、
「新しい大学のあり方を、ここ柚木の丘に打ち立てるべく楔を打ち込んだのだ」、
「入口は狭いようでも、中へ入ると広く深く、あちらこちらはずーっとつながっていて、学問とはそんなものだ」、
「一人一人が己の城を持つことが、自分の意見をもつようになるもとだ」・・・
(4) 「大学セミナーハウス」の英文名はInter-University Seminar Houseといい、大学を横につなぐ「セミナー」を考えていることが分かります。
なかなかユニークな、意味のある施設で、その後も創立者・設計者の思いがうまく生かされ利用されているといいなと思いました。
(5)緑の中に、さまざまな建物が散在して、写真2は私たち講師が泊まった建物。3は講堂で全体会が開かれました。
2.この講堂で、6月2日の朝、某大学の教授から「ラグビーからみるオーストラリ社会の変貌」という話を聞きました。知らないことが多く、私には興味深かったので、以下に簡単な報告です。
(1) 今年9月20日から、日本でラグビー(ユニオン)のワールド・カップが開催されます。同カップは1987年が第1回。今回が9回で、前々回はニュージーランド(NJ)、前回2015年は英国でした。
私事ですが、長女とその亭主が大ファンで、共働きというのに休みを取って、NJにも英国にも観戦に行きました。
(2)2015年には日本代表チームが優勝候補南アに逆転で勝利、「史上最大の番狂わせ」と言われました。
試合の最後の最後に南アに反則があり、フリーキックで同点・引き分けに持ち込むか、よりリスクの高いスクラムを選んで逆転勝利を狙うかの選択に迫られた。監督はキックを指示したがキャプテン以下選手の判断でスクラム戦術を取って成功したというものです。
この試合を長女夫婦は現場で観ており、大興奮でした。私もたまたまロンドン郊外の娘の家にいてTV観戦をしており、ブログにも2回載せました。
https://ksen.hatenablog.com/entry/20150919/1442688165
https://ksen.hatenablog.com/entry/20150927/1443302690
3.ところで、オーストラリア代表チーム「ワラビーズ」は、今回を含めて9回にすべて出場、うち優勝2回準優勝2回という強豪チームです。
(1)そのチームが今年はどうか?
講師(筑波大学でラグビー選手だった某大学教授)がいろいろと話してくれました。
今年の予想は、「予選を1位通過の場合、本選で最初(QF準々決勝)にあたるだろうアルゼンチンへの勝率は6割、2位通過の場合イングランドへの勝率は50%。
QFで敗退の可能性があるが、勝ってSFに進出したら希望的観測通り、決勝に進出したら大成功、優勝はない」と言う見立てでした・
注目選手は、デヴィッド・ポーコックとカートリー・ビールの二人。前者はジンバブエからの移民、後者は先住民アボリジニ出身。
講師によれば、ポーコックは、もし「地球最強のチーム」をつくるとしたら15人のメンバーの1人に必ず選ばれる、ビールは控えに選ばれるかも、だそうです。
(2)因みに、日本代表チームの予想は?という質問には、
「答えにくいし、希望的観測が入るが、予選でスコットランドを破って本選に出られると思う、しかしQFで負けるだろう」でした。
4.話は「ワールドカップ予想」のほか、(1)ラグビーの起源、(2)オーストラリアのラグビーの歴史(3)その特徴と現状、(4)代表選手の人種の変化など多岐にわたりました。
簡単に触れておくと、
(1)については、英国パブリックスクールで盛んだったため、エリ―ト・スポーツのイメージが強く、アマチュアリズムの精神を大事にし、プロ化(1996年)が遅れた。
そのため、サッカーとともに、13人制のラグビー・リーグが先にプロ化して優秀な人材が流れた。豪州にはさらに「オージー・ルール」という独自のフットボールがあり、実はこれがいちばん人気があり、優秀な人材確保はさらに難しかった。
(2)したがって、「パワーでねじ伏せるゲーム」は出来ない。
細かいスキル、綿密に計画された攻撃、システムで守る防御、走るフォワード、浅く狭く前に出るバックラインなどに特徴があった。
(ということで、講師は過去の試合のさわりを「You tube」で見せてくれました。
例えば、1984年、マーク・エラ選手が4試合連続4トライという偉業で、グランドスラムを達成した様子など。
https://www.youtube.com/watch?v=Z5FaS7JaHjU
(これは素人が見ても面白い)
因みに、グランドスラムというのは、イングランド、スコットランド、ウェールズ、アイルランドの4チーム全てに勝つことを言うのだそうです。
英国はラグビー起源の国ですから(サッカーも)、今でも4つが別々の代表チームを作ってワールドカップに出場します。しかも発祥の国ということで、ここに勝つことは特別の意味があるのでしょう)。
(3)このようなオーストラリアのラグビーのスタイルは、1980年代から21世紀初めまでは、世界の潮流を作った。
➜しかし、他国に模倣されて比較優位の消滅。
その後の、新しいアイディアは主にニュージーランドからーーーアンストラクチャー、オフロードパス、キックパス、アンブレラディフェンス・・・・(注―私にはちんぷんかんぷんで何も分かりません)。
他方で、プロ化以降は、フィジー、サモア、トンガ等からの移民が代表チームにも選出されて人種構成が多様化した。
また優秀な人材が多少ラグビー・リーグから戻ってきた。
しかし、2000年代後半以降は、オーストラリアのラグビー代表チームは長期「低迷」にあるーーーーー
というのが講師の見立てでした。
(4)最後に「代表チームの国籍条件について」質問が出ました。「オリンピックやサッカーの国別代表資格はその国の国籍保持が絶対条件だが、ラグビー(ユニオン)は“3年間居住していること”などの条件はあるが、国籍の保持は不要。それもあってオリンピックに出られない。これをどう思うか?」という質問です。
講師からは、「個人的は良い伝統だし、100年後は分からないが、今後も続くのではないかと思う」という返事でした。