- 先週はもっぱらステイホームで、小さな庭に鳥が来るのを見るのが楽しいです。
妻が、みかんをかりんの木の枝においておくと、目白が来ます。大きなひよどりもきます。妻は、「たくさん食べてしまう」と言って、追い払うときもあります。それでも、先に目白が来て食べることもあり、そんなときはひよどりも、目白が居なくなるのを待ってから飛んできます。
他方で、別の枝に脂身を置いておくと、今度はシジュウカラがやってきます。この鳥は肉食らしく、みかんには触れません。そんな訳で、同じかりんの木に、目白とシジュウカラが一緒にとまって別の食べ物をつついている光景もみます。
お互いが先を争う光景は見たことがありません。平和共存して、食べています。
2. そんな小鳥たちの世界を眺めながら、バイデン米大統領の就任式の模様をネットで見ました。現地時間の20日、首都ワシントンの連邦議会議事堂前で無事に行われました。
(1)新大統領の宣誓と就任演説がハイライトですが、その他に、人気歌手により歌が歌われ、22歳の黒人女性が自作の詩を朗読し、牧師の説教がありました。
歌われたのは、国歌のほか、「我が祖国」「アメイジング・グレイス」などです。
「我が祖国」の原題は「This land is your land」です。
「この国は、あなたたちの場所、そして私の場所~~この国は、あなたたちと私のために創られた」、アメリカでもっとも好まれるフォークソングです。
(2) 2009年1月、オバマ大統領就任を記念する、「私たちはひとつ(We are one)」と題した大野外コンサートが首都ワシントンの広場で開かれました。そのときにも歌われました。
リンカーン記念堂を背に、壇上で歌手と一緒に大勢の多様な人種の若者が楽しそうに歌う、群衆も一緒に歌う、オバマも聴衆に混じっている場面など、いい画像です。
https://www.youtube.com/watch?v=HE4H0k8TDgw&feature=endscreen&NR=1
(3) この頃は、初の黒人大統領を迎えるこの国は、まだそういうムードだったのでしょう。
トランプの登場によって変わりました。
そして再び、新大統領が、就任演説で、「団結」を呼びかけました。
3.4年前、2017年1月のトランプ大統領就任演説のスピーチは16分。「民主主義」という言葉は一度も出ませんでした。
(1) 代わりに出たのは、「国家への忠誠」や「愛国心」「愛国者」という言葉でした。
(2) そして、「我々」と「彼ら」とを区別し、「彼ら」――外国政府や企業、現在の指導者たち、エリート一般――への、アメリカの現状(荒廃した都市、空っぽになった工場、犯罪や麻薬)への「怒り」を語りました。
(3)その上で、「我々の国の忘れられた男女は、もう忘れられることはない」と約束し、「もういちどアメリカを偉大にする」と誓いました。
4.他方でバイデンは、21分の就任演説で、「民主主義」「憲法」「団結(unity)」を、そして最後には「物語(story)」という言葉を、それぞれ10回も使って国民に呼びかけました。これらが今回のメッセージのキーワードだったと思います。
(1)中でも私は、「物語」という言葉がもっとも印象に残りました。
「~私たちはともに、怖れではなく、希望の物語を書こう~~(And together we will write an American story of hope, not fear.~~~)」。
(2)大事なのは、この語りの中で「together 」と呼びかけていることです。
私たちみんなが一緒に、この国の「希望、団結、灯り、品格、尊厳、愛、そして癒し、偉大さそして善良の物語」の書き手になろうではないか、と語りかけていることです。
(3)バイデンはその上で、「新型コロナウィルスで亡くなった仲間たちに敬意を表し、黙とうをしよう。」と呼びかけました。
(4)また、「団結という言葉は、一部の人々には愚かな空想だと響くだろう」と認めます。
しかし、それでも、「私たちは互いを敵ではなく、隣人として理解することができる」と語り、「少しで良いから、相手の立場に立って(to stand in their shoes)」と私の母がいつも言っていたように、と語ります。
5.難しいのは、このような呼びかけが、果たしてトランプ支持者の耳に届いたかどうかです。
厄介なのは、トランプ支持者は、議事堂に乱入するような極右の連中はむしろ一部で、多数は「穏やかな人たち」だと言われることです。
新政権の難しい前途を予想させます。いままでの民主党に見捨てられたと感じている人たちにどうやって聞いてもらえるか、言葉から行動と実践が求められます。バイデン自身が言っています。「言葉以上のものが必要です。民主主義の中でもっとも得がたいもの、団結が必要です」。
6.それでも、まずは言葉が大事で、やはり国民の心を打つでしょう。
日本のトップ・リーダーも、「言葉」に出すこと、呼びかけることの大切さを信じてほしいです。
まずは、どれだけ多くの人がコロナの病に倒れ、命を奪われ、日々苦しんでいるかに思いを致していることを言葉で示してほしい。その上で、「ポスト・コロナの新しい日本の物語(Japan’s story)」を語ってほしいものです。