1. 調布市の神代植物公園のバラ園は都内で最大とのこと。いまが秋薔薇の盛りで、先週の天気の良い日に家人と訪れました。立派なカメラを持って、熱心に接写撮影している人を多く見ました。
私の場合は、カメラも安物だし、技術もないので、芸術的な写真は無理です。それに花の名前にも関心があり、両方一緒に撮りたくなります。
薔薇であれば、「イングリッド・バーグマン」や「マリア・カラス」、「ジナ・ロロブリジダ」「プリンセス・ミチコ」「プリンセス・チチブ」などの女性名が多いです。
日本の女優はありません。薔薇の名前には合わないのでしょうか。温室のスイレンには、「ジューン・アリソン」という懐かしい名前もありました。1954年アメリカ映画『グレン・ミラー物語』の妻役や1949年『若草物語』のジョー役を演じました。「古き良きアメリカ」を象徴する、前向きで明るい、そして独立心のある女性像を演じた女優だったと思います。
2. ジューン・アリソンは遠い昔になり、いまのアメリカはずいぶん変わってしまったようです。トランプかバイデンかの選挙騒ぎを見ていると、そんな感じがします。
(1) 日本時間10月23日には二人の最後の討論会が開かれました。今回は、トランプも押えた態度で、中身のある政策論議になったという評価でした。
(2)しかし、どちらも決定打は出せなかったとも言えて、「最大の勝利者は司会者クリステン・ウェルカーだった」というBBCの報道が面白かったです。
彼女を評価するコメントが25万件もツイターで寄せられたそうです。
おまけに、普段メディアの悪口しか言わないトランプでさえ、ディベイトの最中、「司会役として実によくやっている」と評価したことが話題になりました。
(3) たしかに、彼女の議事進行ぶりには感心しました。質問のたびに、「2分でお願いします」「30秒にしてください」と明確に指示したこと、時間超過をきびしく指摘したこと、本題から逸れたときには「大統領、いまは人種問題を取り上げているんです」と再三、注意したことなど、男性二人をリードしていたと思います。
もちろん、前回の酷評を受けて二人ともより紳士的に言動を変えたこと、今回は冒頭の2分は割り込みができなかったことなど、彼女にやりやすい条件も利したでしょう。しかし総じて彼女がいちばん話題を集めた討論会でした。
(4)このクリステン・ウェルカーという女性は、44歳のNBC所属テレビ放送ジャーナリスト。父は白人で母は黒人、ハーヴァード大学を優等で卒業したとのこと。こういう女性が活躍する時代になったのだと痛感しました。
3. ところで、今回のアメリカの選挙は、
――勝者はトランプかバイデンか?現時点での予測はどうか?
のいつもの話題に加えて、
――そもそも11月3日の投票で決着がつくのか?様々な要因で、決まるまでには紆余曲折があるのではないか?
が取りざたされていて、いつもより複雑な状況を呈しています。
4. まず、現時点でのメディアの予測はどちらを有利とみているか?
(1) ご承知の通り、アメリカ大統領選挙は、各州ごとに選挙人の数を選びます。それぞれの州は、事前登録した有権者の投票の結果、投票総数のうち1票でも多ければ、多い方が選挙人を全て獲得します。12月14日に各州の選挙人が選挙結果に基づいて大統領候補に投票。その合計で過半数270票を取った候補が大統領に選ばれ、来年1月20日就任します。
(2) 日本でもよく紹介される世論調査データを提供するリアル・クリア・ポリティクス(RCP)のサイトによると、10月24日現在の大統領選挙の予測は以下の通りです。
・必要過半数270に対して,
「ほぼバイデン-232票」
「ほぼトランプ-125票」
「残りの激戦州(いわゆるtoss-up=五分五分の州―181票」
・従って、バイデンが勝利するには、「激戦州181票」から最低で38票を獲得する必要がある。トランプだと、89票が必要。
・因みに、この予測はニューヨーク・タイムズなど11社の調査を平均したもの。
・因みに、賭け屋の賭け率は、バイデン65%対トランプ35%.
(3)「toss up」州の181票は州の数で言うと13。このうちバイデンが支持率でトランプをリードしていて,選挙人の多い州は、
・ミネソタ(選挙人数10人、支持率の差+6.0)、ペンシルバニア(20人、+5.1)、ウィスコンシン(10人、+4.6)、アリゾナ(11人、+2.4)、フロリダ(29人、+1.5) あたりで、
この5つの州の中から少なくとも3つの州で勝てば、バイデン勝利となる。
・この中でとくにペンシルバニアは重要で2016年は僅差でトランプが逆転して取った。終盤になってオバマ前大統領がこの地にバイデンの応援演説に駆け付けたのも頷けます。彼は、この選挙はアメリカ国民にとって「われわれの生涯で最も重要な選挙」だと訴えました。
(4) ということで、常識的にはバイデン有利と大方のメディアが見ていますが、これらの激戦州をトランプが精力的に遊説に回っており、支持率調査で差は縮まっている。
2016年は、お互いに予想で有利だった州はほぼ無難に獲得した。しかし今回の激戦州13のうち、ヒラリーは僅か2州しか取れなかった。これが決定的な敗因となった。しかも殆どが事前の予想をくつがえしての逆転の敗戦である。バイデンは、その二の舞だけは踏みたくない。
他方で、期日前投票が今回は格段に多いこと、世論調査のやり方が前回の失敗を反省して精度を上げていることは、バイデンに有利な材料と言われます。
➜それでもやはり、賭け屋の予想通り、トランプにも3割強の勝利の確率はあるということでしょうか。
5.しかも、前述したように今回は、どちらが勝者か、決着がなかなかつかないかもしれないと懸念されています。郵便投票者が多く、結果の判明に時間がかかるなどの様々な混乱が危惧されているからです。最高裁への訴訟にまで持ち込まれる可能性さえ語られています。
ということで、無責任な野次馬からすれば、今年のアメリカの選挙はなかなか面白い。
しかし、恰好つけて言えば、トランプか否かという選択は、事態の推移によっては、世界の人たちにとっても民主主義の在り方が問われる大事な選挙になるかもしれません。