- 前回のブログは核兵器禁止条約発効の話でした。岡村さんとMasuiさんのコメントを頂き、嬉しく拝読しました。
さて、明日の朝早くから外出の予定があり、本日中にブログを発信します。
今週は、4日までは八ヶ岳山麓に滞在し、冬は住めないので古い田舎家の水抜きをし、家を閉めて帰京しました。紅葉(もみじや落葉松、どうだんつつじなど)が盛りで、山は冬を迎える前に輝きを見せてくれます。
2. 4日に帰京してからはもっぱら、アメリカの大統領選挙を追いかけています。
(1) ご承知の通りの接戦です。共和党とトランプが事前の予想以上に善戦している。
(2) 特に最後の過半数を制する「鍵となる5つの州」(ペンシルベニア、ジョージア、アリゾナなど)は大激戦で、3日経ってもまだ集計中である。
これらの州のトランプとバイデンの差はごく僅か、すべての集計が終わらないとどちらが勝つか最後まで分からない。
(3) ただし終盤に近づきバイデンが有利に進め、過半数獲得が近いとメディアは報じる。
そしてバイデンは、6日深夜(日本時間本日午後1時)にスピーチを行い、「勝利宣言の時期ではまだないが、勝利は間違いない(we don't have a final declaration of victory yet, but the numbers tell us it's clear. )」と語りました。
「私たちに意見の対立はある、しかしお互いに敵ではない」と語り、民主主義と国民の結束(unity)を訴える、なかなか良いスピーチでした。
(4) しかしトランプは、選挙当日後も集計を続けていることに、「不正がある」と激しい攻撃と非難を浴びせ、訴訟を提起し、自らの不利な状況を認めるつもりは毛頭ない。
仮に集計でトランプが敗けたとしても、彼がその事実を認めて敗北宣言をするかが疑問視されている(すでに、誰が猫の首に鈴をつけるかが話題になっている。女婿クシュナー、イバンカ、あるいは上院院内総務など。たぶん誰もやりたくないでしょうが)。
そもそも、彼のせいで「もう一つ別の真実(alternative facts)」という新語が生まれたように、あらゆる手段を使って、選挙の正当性に挑戦し、「別の真実」を主張するものと思われる。
(5) 支持者も「不正がある。集計はもうやめろ」と叫んだり、集計所の前で祈るトランプ帽をかぶった女性の姿のような熱狂的なトランプ支持者と、バイデン側とが鋭く対立し、分裂している。
本来はそういう彼らに呼び掛けるのが、敗けた大統領の「宣言」なのですが・・・・・
3.ということで、新しい大統領の最終決定には時間がかかり、抗議や混乱が長引きそうで、過去に例をみない醜い選挙になることが懸念されます。
そこで今回は、選挙直前の10月31日号の英エコノミスト誌が、「なぜバイデンでなければならないのか」と題する論説を載せていますので、最後にこれを紹介します。
4.エコノミスト誌は、「我々に投票権があれば、バイデンに入れる」として、その理由を述べます。
(1) トランプは、新型コロナがなければ、実績を誇り、再選が確実だったかもしれない。
我々は、彼が誇る「実績」のすべてに賛同するものではない(例えば、気候変動への取り組み、移民政策、医療保険対策など)。
しかしそれ以上に問題にするのは、もっと基本的なこと、民主主義の価値、長年アメリカを、自国民にとって理想の地とし、世界の人々には「導きの明かり(beacon)」としてきた価値観を,彼が過去4年間、繰り返し冒涜してきたという事実にある。
(2) 2016年に彼を大統領に選んだこの国は、いまやいっそう不幸になり、いっそう分断されている。
もちろんバイデンが選ばれたからと言って、彼は救世主ではない。しかし、少なくとも政治に安定と品性とをもたらすだろう。
これが、我々がバイデンに1票を入れる最大の理由である。
(3)さらに言えば、ここ数代の大統領は、病的な党派心は決して良いことではないと理解していたが、トランプは党派心をもっとも重要な題目にしてしまった。自分に投票しなかった大多数のアメリカ人を代表することは決してなかった。
(4)我々をいちばん当惑させるのは、真実を軽蔑する言動である。たいがいの政治家は言い逃れをするものだが、トランプはそれ以上に「もうひとつ別の事実」をアメリカ人に示してきた。その結果、彼の言うことは何も信じられなくなってしまった。
(5) 彼のようなひどい大統領がさらにあと4年続くとしたら、こういった害悪がさらにひどくなるだろう。2016年には、アメリカの有権者は、彼がどんな人物かを知らずに投票した。4年経っていまは理解しているはずだ。これからも自分たちが、分断と虚偽への賛成投票をすることになるだろうことを。
5.良識派を自負する同誌は、このように舌鋒鋭くトランプ大統領を攻撃した上で、最後にこう締めくくります。
「今回の選挙は、アメリカの運命を分ける選択である。民主主義が問われている。
選択の1つは、分断され、品格や事実をあざ笑い、個人の好みで動く元首によって支配された国へと向かう道、
もう1つは、もう少しましな、本誌が当初から、世界に新たな霊感を与える国としてうけとめてきたこの国の価値観を失わない国へと向かう道である。
トランプ氏は、第一期は破壊をもたらす大統領だった。再選されたら二期目も、同じく自身の最悪の本能にもとづいて行動するだろう。
バイデン氏は、反対の人物である。もちろん彼が当選したとしても、ただちに成功が約束されるわけではない。しかし、彼は、民主主義が与えてくれる「変革」という最も貴重な贈り物をもって、ホワイトハウス入りすることだろう。
6.読みながら, 「民主主義の産みの苦しみ」について考えました。エコノミスト誌の願いは、果たして叶うでしょうか。