バイデン新大統領の評価とホワイトハウスからの手紙

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  1. 今回はアメリカの話。就任して4か月強過ぎたバイデン大統領の内政面での評価が

高いようです。

(1)5月28日には2022会計年度(今年10月~来年9月)の予算教書を議会に提出し、「大きな政府路線」を鮮明にしたと報じられました。

・すでに、3月には約200兆円の(1)「アメリ救済計画法(the American Rescue Plan)」を議会で成立させています。

(2)今回はこれに加えて、

・気候変動対策をはじめ大規模インフラ投資を通じて雇用創出を図る「アメリ雇用計画(Job Plan)」

・育児や教育を支援して、格差の是正・セイフティ・ネットの拡充を目指す「アメリ家族計画(Family Plan)」

の2つを目玉にして、かつその財源として、

・大企業・ウォール街への法人税増税高所得者所得税増税を打ち出しています。

・銃規制や移民受け入れなどについても法改革を目指すとしています。

 

(3)共和党は、財政赤字が拡大し、経済成長を阻害しインフレを促進するとして反対で、どこまで議会を通るかは不透明です。

たしかにインフレは心配で、日本のメディアも懸念する記事が多いようです。しかし、きわめて意欲的な政策で、成功してほしいと思っています。

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  1. エコノミスト誌も、「就任100日間のバイデンの適性」と題する記事を載せて、評価しています。(1) 登板時は、課題が山積だった。コロナ感染は増え続け、民主主義の危機が叫ばれ、人種差別と社会の分断が拡がっていた。

   しかもバイデン自身に対する期待はさほど高くなかった。

(2)しかしいま、ワクチン接種は当初の予定以上に進捗し、今年は大幅な経済成長が見込まれている。「救済計画法」の成立も大きな成果である。

――と指摘して、

(3)就任当初では、大恐慌下に登板したルーズベルト大統領(FDR)がもっとも成果を上げたと言われる。

しかし、バイデンの滑り出しはFDRに匹敵すると言える。

しかもオバマ政権以上にリベラルな政策を打ち出しているとして、“fascinating but incompetent(面白いが無能)”なトランプに対して、“boring but radical(面白味はないが過激)”なバイデンと評しています。

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  1. 私が感じるのは、

(1)政策目線が「救済・雇用・家族」にあり、まず救済を優先し次いで雇用・家族に向かうことを、明快に示している(日本のコロナ対策など、私にはいまも全体像がつかめない。大きな目標設定と分かりやすい内容説明を欲しい)。

(2)これも日本政府からは聞こえてこないが、巨額の支出の財源はどうするのか誰もが懸念している(所得減、増税、年金減額?)。バイデンは、果敢かつ「ラディカル」に大企業や富裕層への増税を打ち出している。(年間所得約4千万円以下の層には増税しないと明確に言明している)。

の2点です。

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  1. もう一つ、国民に対する「説明」です。

以下は、「笑い話」でもありますが、実は私ども夫婦のところに「ホワイトハウス」から長い手紙が来ました。表が英語、裏はスペイン語です。

(1)バイデンの署名入り(もちろんコピー)で、私と妻あての二通です。

ただ、書き出しに「My fellow American(アメリカ国民の皆さん)~~」とありますので、我々に届いたのは何かの間違いだということはすぐわかります。

 

(2)内容は、「3月に成立したアメリカ救済計画法の中身を知ってほしい。施策の1つとして皆さん一人一人(高額所得者を除く)に2000ドルの支払いを行った。まだ受けとっていない人がいたら早急に、担当役所のサイトをチェックするか電話をしてほしい」というものです。

 

(3)そして、やや泣かせるような国民に呼びかける言葉で終わっています。

―――「私は大統領に就任してすぐに、皆さんへの救済は検討中だと申し上げた。救済計画法はこれを果たすためのものです。私は、救済される資格のある皆さん全員が法の恩恵を受けることを確かめたいのです。

 我が国にとって、いまは長く苦難のときです。しかし前途は明るいと私は信じています。ワクチン接種は進み、経済は回復途上にあり、子供たちは学校に戻ります。私たち皆が一緒になって努力しない限り、国家としてできることは何もないと私は心から信じています。大統領ジョー・バイデン(署名)」

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  1. 以下は推測ですが、なぜ手紙が私どものところに来たか?10年弱のアメリカ勤務があり、少額の年金を受給しています(日本で確定申告をしています)。どうやら、海外を含めた「年金受給者」にも出状したのではないでしょうか。

 明らかに、お粗末な事務のチョンボです。しかし、アメリカという国は、こういう細かい事務では割といい加減である。しかし国の根幹に関わることでは国民にきちんと説明し、呼びかける。その呼びかける相手に多少の範囲オーバーがあっても、気にしない。そんなおおらかさを感じた次第です。