1.19日の英国女王の葬儀の模様をテレビで眺めました。
(1) 国民の40%以上が視聴したそうです
(2)厳かで華やかな行進が続き、沿道に集まった人々の多さを見ながら、雨の多いロンドンでこの日降らなくてよかったなと思いました。
それと無粋な話ですが、高齢の出席者も多く、手洗いに行きたくならなかっただろうかと余計なことを心配しました。
(3) 天皇にとっては懐かしの英国でしょうが、即位後初めての海外訪問がこういう機会になるとは悲しい別れだったことでしょう。
ともかく、無事に終了してよかったです。
- BBCは、
(1)「厳粛かつ壮観で、強烈な印象を与える歴史の一齣だった」と評しました。
(2) 「棺を担いだ兵士が通路をゆっくりと歩く姿に、今ここで、目の前で、一歩一歩、時代が終わっていくのを実感し、生涯忘れることのない出来事だった」とも。
(3) また、「誰が出席してどこに座ったか?」と題する記事もあり、写真入りで詳細に教えてくれます。天皇皇后は前から6列目で、欧州の王族たちの後ろ、マレーシアやヨルダンの王様の傍、米国やフランスの大統領夫妻は、反対側の後方です。
3.ということで、改めて君主制について考えました。
(1)そもそも、いま「君主国」はどのくらい存在するか?
サントリー学芸賞を受賞した『立憲君主制の現在、日本は「象徴天皇」を維持できるか』(君塚直隆、新潮選書、2018年)を参考にします。
(2)君主国といっても議会制民主主義に基づく「立憲君主制」のほか、中東のような「王朝君主制」を含めて、
「29か国。これに英国君主が名目的な国家元首を兼ねる(豪州・NZのような)英連邦王国を合わせても43か国であり、国連加盟国の5分の1に過ぎない」
(3)「君主制国家は少数派である」。しかし「とくに立憲君主制において、国民が豊かに暮らしている国が多い」と君塚教授は指摘します。
(1) 9月17日号は、「アフター・エリザベス」と題する論説を載せました。
「君主制は時代錯誤である。ところが、繁栄した。このことは、彼女の後継者や他の民主主義国にとっても教訓を与えてくれる」と始まります。
(2) 繁栄の理由としては、
・女王自身の個人的な資質と努力、強烈な使命感。
・かつてのエコノミストの名編集長バジョットの見解、すなわち「威厳ある」君主部門と「機能的な」政府・議会部門との両立が英国憲法の基本である。
・君主制が、継続性を維持し分断を避ける観点からは大統領制に勝る。
――以上3つの理由をあげます。
(3)その上で、新国王チャールズ3世を待ち構える前途は多難である。しかし、「幸運にも女王が正しい道筋を示してくれたことに期待しよう」と結びます。
- 面白いのは、英国の王制について同誌は度々記事にしますが、論調はいつも変わりません。
(1)まず、「そもそも論からは正当化できない」という立場を明確にします。
「生まれながらの特権に根ざした不合理な制度であり、多様性や平等、実力主義とは相いれない。君主制への支持はエリザベス2世のもとで揺らぐはずだと本誌は考えた」と述べます。
(2) ところが、そこから一転して結論は、「英国ではうまく行っている」。
存在価値は大きい。
同誌の主張はこのようにいつも同じで、この独特の両論併記的な論調が他の英国メディアと異なります。
(3) それにしても日本人は、天皇制をどう思っているでしょうか?