今年も東京で「京語りの会」

1.4月22日(土)、東京での5回目の「京語りの会」がありました。

主催者は松井孝治慶應大学教授。

(1) 講師は5回連続の下前國広さんが、「京(みやこ)」と「都(みやこ)」の話。

今回はそれに、

(2) 長唄をバックにした京舞

(3)「公家町と京都」と題する、冷泉貴美子さんの「ゲスト・トーク」が加わり、

3本立ての豪華な催しでした。

こういう顔ぶれを集められるのも、松井・下前両氏の人徳とネットワークの広さでしょう。

新宿西口に近い常園寺の祖師堂で開催され、盛会でした。

2.長唄京舞が素晴らしかったです。

今藤長一郎さんの長唄は、「春たつや、柳もめざす若みどり、梅に結びて懸想文、かけて嬉しき鶯の♪」と唄い出します。

何と形容するのでしょうか、私は「嫋々(じょじょう)たる」という日本語を思い出しましたが、細い、よく通る、心に沁みる声音です。               「柳の四季」は「京舞篠塚流にのみ残された古曲」だそうで、立方篠塚梅晃さんは、長唄に合わせてゆったりと、品よく舞われました。

3.下前さんと冷泉貴実子さんは、ともに生粋の京都人による含蓄ある話でした。

(1) 二人とも、原稿も見ずに、ユーモアや京都弁を交えた親しみのある語りで、しかも時間通りぴたっと終わることにも感心しました。

 

(2)貴実子さんの話は、「政(まつりごと)が江戸に移った後、公家はいったい何をしていたのか?」という疑問から始まりした。

そして、「型」や「家元」の文化は公家とともにあること、夫々の公家が「分業化」し、「専門」を持っていたこと。明治以来徐々に消えて、いま冷泉家が時雨亭文庫を維持し、「歌道の家」として唯一残っていること、文化財を保存し、文化を残すのは大切だと思うが、多くの困難があったし、いまもあること・・・などを語りました。

4.東京での「京語りの会」は、

(1)松井さんの発案で2020年8月に始まり、「本日の5回目でひとつの区切りにしたい」と言われました。最後にふさわしい会でした。

(2)有難いことにすべて出席し、良い思い出が出来ました。

飯島さん・岡村さん・田中さんなど京都の方々と、むしろ東京でお会いすることもできました。

様々な講師の面白い話を伺いました。

(3) 以前のブログに載せた、記念すべき第1回に下前さんが初登場した写真を再度掲載します。

同氏は第1回の講話の枕に、「ほとんど京都を出たことがない。「井の中の蛙大海を知らず」は私のためにあるような成句です。ところで、このあとに続く言葉をご存知ですか?」と問いかけ、「「されど空の色を知る」と続くようです」と言われました。   

井の中の蛙は広い世間のことは分かっていないが、井戸の底から見える空は見ているから「京都については多少お話しできるでしょう」と理解して、うまいなと感心したことを今も覚えています。

5.「会」を終えて、下前・冷泉の二人を東京駅までタクシーで送っていきました。

(1)「京都に観光客がよけい増えた。Tシャツ、短パン、入れ墨の人が大勢歩いてはる」そうです。

(2)高層ビルが立ち並ぶ新宿から四谷、麹町に出て、英国大使館や千鳥ヶ淵を左に見て、皇居の緑を眺めながら、「このあたりの東京はさすがにいいわねえ」との感想もありしました。

東下りのお二人に褒めて頂いて、東京人としてはちょっぴり嬉しく感じました。

(3) 東京駅の新幹線切符売り場で、感謝の言葉を述べてさよならしました。