「検察庁法改正案反対意見書とタイム誌「今年の女性」」続き

f:id:ksen:20200510140557j:plain

1.朝の散歩では見事に薔薇で飾られたお屋敷を眺め、眼の保養になりますが、そろそろ終わりでしょう、残念です。

 散歩しながら家人と、「お役人や新聞記者の言動は、私ども市井の庶民とは違うようだ」といった話もします。

 長年、友人夫婦3組6人で毎月1回、自宅回り持ちで麻雀をやっています。一銭も賭けず、女性が中心で男性が交代で1人入り、この間2人は飲んだり喋ったりします。

 この集まり、1月は我が家で実施。2月21日(金)は、老人でもあり早々と自粛・延期。以来、5月まで4カ月自粛を続け、誰ともお会いしていません。

 「新聞社がハイヤーを手配してくれるなら、集まってもいいよ」と冗談を言う老人もいます。

f:id:ksen:20200522105845j:plain

2.ところで、スキャンダルはともかく、本来の検察庁法改正の問題を忘れてはいけないのではないでしょうか。

(1) この問題で、もと検事総長以下OB14人が反対の意見書を法務省に提出しました。

 東京新聞は全文を載せました。ルイ14世ジョン・ロックの名前を出して、ロッキード事件のときの対応にも触れています。

 ジョン・ロックは、『統治二論』(注:あるいは『市民政府論』)の「法が終わるところ、暴政が始まる」という言葉です。

 言うまでもなく、本書は古典的リベラリズムの教科書であり、アメリカの「独立宣言」(第3代大統領ジェファーソンが主に起草した)に大きな影響を与えました。

 「国家は国民の「生命・自由・財産」を守るために存在する。立法者がその信託を裏切った場合、国民は新たな立法部を設けることによってあらためて安全を確保する。国民はそうする権力を与えられているのである」と説く本書は、いわゆる「抵抗権」を認めた書として、フランス革命アメリカ独立革命を支える理念となりました。

(2)この「反対意見書」はかなりの長文ですが、

「上級検察官の役職定年延長」に関する23条5項が引用されています。「意見書」では「難解な条文であるが」と礼儀正しいですが、まあひどい悪文です。句点がない文章が延々と続きます。

f:id:ksen:20200522110019j:plain

(3) ロッキード事件については、「意見書」が触れていることを少し長いですが以下に引用させてください。思いがこもっています。

―――「かってロッキード世代と呼ばれる世代があったように思われる。ロッキード事件の捜査、公判に関与した検察官や検察事務官ばかりでなく、捜査、公判の推移の一喜一憂しつつ見守っていた多くの関係者、広くは国民大多数であった。

(略)当時特捜部にいた若手検事の間では、この降って湧いたような事件に対して、特捜部として必ず着手するという積極派や、(略)懐疑派、(略)悲観派が入り乱れていた。

 事件の第一報が掲載されてから13日目の(1976年)2月18日検察首脳会議が開かれ、当時の神谷尚男東京高検検事長(注:辞職前の黒川氏の役職)が、「いまこの事件の疑惑解明に着手しなければ検察は今後二十年間国民の信頼を失う」と発言されるやロッキード世代は歓喜した。

 (略)この神谷氏の国民信頼発言でロッキード事件の方針が決定し、(略)特捜部が造船疑獄事件のように指揮権発動におびえることなく、のびのびと事件の解明に全力を傾注できたのは検察上層部の不退転の姿勢、それに国民の熱い支持と、捜査への政治的介入に抑制的な政治家たちの存在であった・・・・――

(4) 私事ながら、大学時代の同級生にのち検事総長になった友人がいました。学生時代に入信したクリスチャンで真面目な正義感でした。3年前に死去しましたが、76年当時、まだ30代の彼は特捜部にいて堀田力氏のもとこの事件に携わりました。f:id:ksen:20200319110445j:plain

2. 前々回に取り上げた、米タイム誌選出「100年の100人の「今年の女性」」(最後に残った600人から選ばれた)について今回もフォローする紙数がなくなりました。

 最後に少し触れて終わりにしたいと思います。

 彼女達を、他方で1927年から始まった「今年の人(Person of the Year)」と比較して感じたのは以下のようなことです。

(1)「今年の人93人」の顔ぶれの方は9割以上が男性で、かつ政治家・行政官・軍人が半分以上を占める。

(2) 対して「今年の女性100人」はこれらは2割に過ぎず(前回紹介した緒方貞子さんも含まれます)、文化・芸術・スポーツや科学者など分野が広い。

とくに注目されるのは、「社会活動家」と呼んでいい人たちが、全体の4割近くを占める。(「今年の人」ではキング牧師など1割に満たない)。

例えば、・1920年に選ばれた、「アメリカでの女性参政権活動家」、

・1944年、人種差別と闘った黒人のレイシイ・テイラー

・1955年の、同じく人種差別に抗議したローザ・パークスに代表される「バスの乗客」

(3) 人種的にも多様であり、アジア、アフリカ等を含み、アメリカ人といっても黒人・アジア系・ヒスパニックの女性も含まれる。

――といった特徴でしょうか。

(4)このように、女性だけに絞って選ぶと、より多様化する、「社会活動家」が増えるという傾向は、興味深いです。

(5) さらに言えば、「政治家」であっても、前回紹介した日系アメリカ人3世のミンク議員のように、選ばれた理由は長年の人種・性差別への活動が評価されている訳で、広い意味で「社会活動家」と呼んでいいかもしれません。

f:id:ksen:20200511101621j:plain

(6) その点から個人的には、1941年にジャネット・ランキンが選ばれてほしかったと思います。最終600人には入ったかもしれません。

 ジャネット・ランキンはモンタナ州選出の史上初の女性下院議員(共和党)で、もともと1920年の女性参政権運動で活躍した。

 1941年12月8日、真珠湾攻撃の翌日、米議会は対日宣戦布告を可決した。彼女は上下院を通して、たった一人反対票を投じた。

 全会一致で可決したい同僚の圧力にも屈しなかった。その結果、孤立無援となり、政治生命を絶たれたが、その後も新聞に「日本との戦争は正当化できない」と批判を続けた。生涯を通じて平和主義者として活動し、68年には87歳でベトナム戦争反対の大規模な抗議活動を首都ワシントンで指導した。

 多様な意見・少数意見はえてして女性から生まれるかもしれない。政治家や判事・検事にもっと女性が増えたらいいですね。

薔薇が咲いた。京都「ミンナソラノシタ」の話。

1.小さな庭に、昨年末に神代植物公園で買った薔薇の苗木が花をつけました。「プリンセス・ミチコ」です。神代植物公園もいま盛りでしょうが、閉鎖中です。

 前回は「タイム誌選出100年の100人」の話をしました。今回も続けるつもりでしたが、頂いたコメント優先で、タイム誌の続きは先送りです。

f:id:ksen:20200511075135j:plain

2. 前回、100人の中に緒方貞子さんとミセス・タケモト・ミンクという日系アメリカ人3世を紹介しました。T・ミンクは戦争中にも拘わらず高校を総代で卒業し、アジア系女性で初の下院議員になりました。長年女性差別・人種差別と闘ってきました。

 飯島さんから、日系アメリカ人と言えば、戦争の最中にブロードウェイのミュージカルの主演をした2世の女性がいたと教えてもらいました。ソノ・オオサトさんの存在を私は知りませんでしたが、戦争中苦労したようです。「苗字を変えろ」という圧力もあったが屈せず、日本名を通した。

 何となく、同志社創始者新島襄の逸話を思い出しました。

 彼は、幕末、20歳のときに国禁を犯してアメリカに行き、親切な慈善家の援助を受けて10年滞在し、当時としては最高の教育を受けました。名門アマースト大学は、彼を卒業生の誇りとして、その肖像画をチャペルの祭壇右横の最高の場所に、同大卒業生で唯一の大統領クーリッジのと一緒に並べました。

 いまも飾ってあるかどうか知りませんが、私が訪れたのは10年以上昔です。案内してくれた某教授が、「太平洋戦争中、日本人の肖像画は取り外せ」という圧力があったが、大学は頑として圧力に負けず、飾り通した」という出来事を話してくれました。

f:id:ksen:20200517074429j:plain

 3. 岡村さんは若い頃の海外放浪で出会った女性の話を書いてくださいました。  

 「ロスアンゼルスやハワイで日系アメリカ人の女性に親切にされたこと。台湾では、日本人観光客がレストランで子供が食べ残しているのを見て「親はどうして叱らないのだ」と言われた話。ベトナムでは、チョロン地区の市場に、枯葉剤の後遺症でしょう異常に大きな頭をした赤ん坊を抱き抱えた女性がたたずんで居た姿が未だに頭に浮かぶ。

 この頃考えるのですが、議員の比率がとても大事だと。差別と戦い続けた、敵国でミュージカルに主演した、戦争の為に不遇な身体を持つ子供を育て続けなければならない人生。苦労の無い人生など誰にも無いでしょうけど、女性の考え方と力が必要だと思うようになったのです」。

―――様々な国を旅して、そこで出会った女性との出会いが、その人の考え方に大きく影響するのだなと、読みながら感じました。

 女性の方が、差別や子育てなどの苦労を通して、生活の苦しみを身を持って感じることが多いと言えるのではないか、そういう経験がリーダーになったときに、「共感力」として生きてくるのではないでしょうか。

 3月18日のメルケル首相のスピーチは2か月経ってもいまだに世界の話題になりますが、「共感力」を評価する声が多いです。若い時代を東独で過ごして、自由を抑圧されることがどんなに辛いことか自分がいちばん知っているとして、基本的人権を制限する痛みと例外性を強調しました。そういう人間が言うのだから理解してほしいという訴えが多くの人の心を打ちました。生活に根差した女性だからこそ出てくるのかなと思いました。

f:id:ksen:20200513091009j:plain

f:id:ksen:20200511191813j:plain

4. 最後になりますが、京都検定1級の藤野さんから教えて頂いて,非営利団体「ミンナソラノシタ」(「ミナソラ」と略)代表林リエさんが登場する映像を見ましたのでその報告です。京都時代、藤野さんに誘われてよくお会いしました。

 ソーシャルビジネスに取り組むボーダレス・ジャパンという会社が、社会貢献活動の団体を随時、ネットで紹介していて、5月11日(月)は林リエさんでした。最近すっかり定着した「Zoom」を使っての催しでした。

(1) 「ミナソラ」については過去のブログで何度も取り上げていますが、福島の幼稚園に通う子供たちを支援する活動を原発事故の直後から始めています。

(2) もともとは、東北大震災時に関西の自治体が東北支援の役割分担を決めて、京都が福島県担当になり、支援センターが出来た、その責任者を藤野さんが務めたことから支援の輪が始まりました。

f:id:ksen:20200511192418j:plain

(3)  京都で避難生活を続ける母親たちの支援や、現地の幼稚園での支援など続けていますが、最近の目玉は「幼稚園留学」と銘打って、福島の子ども達を3週間京都に招いて京都の幼稚園で自由に外で遊んでもらうという活動です。

 福島ではいまも様々な問題があります。ほんの少数の子ども達でも、一時期京都に来て交流し、外で遊べることがどれだけ楽しい思い出か、「感謝している」と涙ながらに語る,映像に参加したお母さんもおられました。

(4)「ミナソラ」の活動が特徴的なのは、幼稚園に通う同年令の子ども達を持つ若い母親の間で、自然発生的に始まったボランティア活動であること、苦労はいまも多い、しかしめげずに明るく、仕事や子育ての忙しい日々を縫って手作りで、自分たちが出来ることを地道に継続していること、などでしょうか。「継続は力なり」です。

(5) 私も5年前になりますが、藤野さんに誘われて、林さんと一緒に福島県のある幼稚園を訪れたことがあります。その時は、外で遊べない子供たちのために室内用の砂場の砂を寄贈するという目的でした。子育てに悩むお母さんたちの悩みを聞く機会もありました。

f:id:ksen:20200511191607j:plain

5. 当日の「Zoom」での林さんの発言で印象に残ったことです。

(1)原発のことも、福島のことも何も知らなかった私たち「ママ友」がこの活動を始めたのは、皆が母親だったことが大きいと思う。何よりも子供たちの未来を全力で守る社会であって欲しいという願いが、私たちの根底にある。

(2)周りの支援もたくさんあったが、いろいろと批判も頂いた。「当事者でもないのに、なんでそんなに熱心にやるのか」「暇な余裕のある人のやることではないか」

(「そう言われて、3人の子育てをしながら働くことも再開した」と答えていました。「元気人」ですね。)

(3)皆さんへの願いは、いまの福島を知ってほしいということ。私たちや子どもたちもこの活動を通して福島の母親や子供たちと繋がり、友達が増えた。それが嬉しい。

――やはり岡村さんの言う通り、この国は生活に根差した「女性の考え方と力がもっと必要だ」と共感しました。逆境にある子どもたちも生きやすい、そんな未来であってほしいです。

タイム誌が選出した「100年の100人の女性」

1.外食する機会がなくなり、食事は毎日自宅で(我が家は何年も前から一日二食です)、家人が用意してくれるのを頂き、感謝しています。

友人の中には奥様を先に亡くされた方もいて、たいへんだろうなと気になります。それとこの時期、シーツを夏用に替えて古いのを洗濯したり、季節の変化に合わせた家事もいろいろあります。

 散歩は、住宅地を歩くことが多くなりました。いままで気づかなかったのですが、花の美しい家々がけっこう目に入って、歩いて楽しいです。この時期は、薔薇、クレマチス、それにもちろんツツジが目につきます。

 我が家の前のお宅も鉢植えの花をきれいに飾っていますが、いまはペキュニアが満開です。立ち話をして、親切にも一鉢分けて頂きました。

f:id:ksen:20200503140848j:plain

2.小さいながらも家庭を維持していくうえで、料理をはじめ家事の大切さ・大変さを再認識したのは、自粛生活のお陰かもしれません。

 もちろん夫婦双方の責任ではありますが、どうしても日本社会は女性に負担が大きくなってしまうのではないか。

 そういう状況の中でも、女性が社会的にも活躍していくことがより一層重要になっているのではないか、そのためには何が大事か。今回のCOVID-19の対応で、ドイツやNZや台湾など女性リーダーの活躍を見て、考えさせられたことです。

 ということで、今回はコロナの話題から外れて、「タイム誌」3月23日号が、過去100年間の「今年の女性100人」を選んだ特集を紹介したいと思います。

 「緒方貞子さんが選ばれた」という日本の報道を記憶されている方もおられるかもしれません。東京新聞の記事はこうあります。

――「毎年恒例の「今年の人」で知られる米誌タイムは、これまでの女性の活躍に光を当てる試みとして、過去100年分の「今年の女性」を発表した。

 1995年を代表する女性として、昨年10月に亡くなった元国連難民高等弁務官緒方貞子さんを選んだ。――

f:id:ksen:20200507122742j:plain

3.因みに、同誌が毎年12月に選ぶ「今年の人(Person of the Year)」は、1927年から続く、同誌のいわば「ブランド」記事です。

 なぜ今回同誌が「今年の女性」をまとめて選出したかについて、編集部は以下の説明をしています。

(1)  今までの「今年の人」選出が男性に偏りすぎていたという反省がある。1927年から2014年までの88人のうち女性はたった7人しかいない。

(因みに、同誌は2013年にナンシー・ギブスが女性として初の編集長になり、以後15年にはメルケル首相、17年には「#Me too運動に立ち上がった女性」、19年には環境運動のグレタさんと、女性の選出が増えました)。

(2) そこで、今年は、1920年アメリカで女性参政権が認められて100周年を迎える記念すべき年であり、以来100年の「今年の女性」を選出することにした。最終リストに残ったのは600人である。

(3) 私たちはこの作業を通して、過去を振り返る機会を与えられ、歴史や社会を変える意義を再定義し、女性の果たした役割と影響力の大きさを再認識した。それは「発見」でもあり、「再発見」でもあった。

f:id:ksen:20200509082709j:plain

f:id:ksen:20200509081305j:plain

4.100人のリストを読んでいくと、誰でも知っている有名人がたくさんいます。

例えば、

 1929年小説家のヴァージニア・ウルフ、31年イタリアの教育者モンテッソーリ、46年アルゼンチンのエヴァ・ペロン、52年エリザベス女王、54年マリリン・モンロー、62年ジャクリーヌ・ケネディ、76年インディラ・ガンディー、87年ダイアナ妃、93年のトニー・モリソン(ノーベル文学賞受賞の黒人女性小説家)、2008年ミシェル・オバマ、2009年マララ・ユサフザイ・・・・などなど。

しかし私が知らなかった名前も6割近くになります。 

f:id:ksen:20200315114204j:plain

5.  因みに、「今年の人」には今まで、日本人は選ばれていません。

その意味では、「今年の女性」に緒方貞子さんの名前を見るのは嬉しいことです。

 もう一人、今回の100人の中に、パッチイ・マツ・タケモト・ミンクという日系アメリカ人3世がいます。1972年の「今年の女性」で、私の知らなかった60人の1人です。

(1)1972年にアメリカで、連邦政府から援助金を受けている教育機関に対して性別による差別を禁じる教育改革法が成立したが、この原案を作成し、多大の貢献をしたのが、ハワイ州選出の民主党下院議員の彼女だった。(タケモトは実家の性)

(2)ハワイのマウイ高校で学生自治会の会長を務め(同校で女性は初めて)、卒業生総代で卒業した。しかし、一ダース以上の医学部から女性を理由に入学を拒否され、その後、ロースクールを卒業し弁護士資格を得たが、就職にあたっても性&人種差別を経験し、生涯を通じて差別と闘ってきた。

(3)アジア系アメリカ人女性として最初の下院議員であり、12年間議会活動を続けた。

(4) 1972年に成立してから50年弱、この法律は、女性のアスリートに平等の機会を与え、学生や職員がセクハラや差別を受けることを守り、法に違反する人たちが報復行為をすることに対する楯にもなってきた。

(5) 2002年の死後、彼女の名誉を称えるため、この法の名前は「パッチイ・T・ミンク教育機会均等法」と変えられた。2003年には彼女の名を付けた、低所得の女性とその子供たちの学費を支援する基金が設立された。2014年オバマ大統領は、大統領自由勲章を死後の彼女に授与した。

 以上、私の知らない、より良き社会のために貢献した、日本人の血を受けた女性がアメリカにいました。

f:id:ksen:20200428081646j:plain以下、感想です。

(6) それにしても、彼女がハワイの高校を卒業したのは1944年、太平洋戦争の最中です。敵国として戦っている国の血を引く彼女が自治会の会長や卒業生総代に選ばれたのはよほどのことだったのではないかな、と思いました。

(7) 法律にその成立に貢献した人物の名前を付けるのは良いアイディアですね。日本ではそもそも議員立法が少ないし、政府提出の法案は官僚が作成していますから、尽力した議員の名前を付けるという発想は出てこないでしょう。

(8) だから、アメリカの政治家にはロースクールを出た法の専門家が多いし、そもそも「法曹一元」が決まりです。つまり、「裁判官、検察官、弁護士のいわゆる法曹三者とさらにロー・スクールの教授を含めて、すべて弁護士からキャリアを始める」という制度です。

 政治家の多くがロースクール出であり、彼らはまず弁護士を経験し、現場を知り、被害者に共感を抱き、国民を守る法を作る気持ちを強く持つようになるのではないでしょうか。 

マスクも届き、㈱カスタネットの植木さんからも電話。

1. 今回も新型コロナウィルス関連のもろもろ報告です。

朝の散歩以外は自粛を続けています。幸いに我が家は長年生協と契約していて、週1回、食材を届けてくれます。

 アベノマスクは届きました。家人に任せて、開けずにそのまま施設に送りました。「アベノマスク不要なら寄付を」という新聞記事をみて、電話した上で送付しました。義母が最期にお世話になった病院にも電話したのですが、こちらは病院指定のマスクを使っていて在庫豊富なので結構です、という返事でした。因みに我が家では家人が、ネットの動画を見ながらせっせと手製を作ってくれます。

f:id:ksen:20200426085820j:plain

2. 前回、オーストラリアの政府の対応が迅速だという報告と、早くも3月21日に閉鎖されたシドニー郊外の観光地ボンダイビーチの写真を載せました。29日付の「時事通信発」によれば、約5週間ぶりに一部、解除されたそうです。

 他方で欧州でもアメリカの一部でも、制限の一部解除が進んでいるようで、ニュージーランドも「制限緩和、企業活動・学校再開へ」というニュースを27日朝のBS国際ニュースがやっていました。

 予想されることですが、待ちに待った再開が始まると一部には混乱も出ます。以下は畏友のブログ「情報浴」4月30日付の引用です。

 「(ニュージーランドでは)6週間のロックダウンの後、昨日、一部レストランの開業を許した。最大都市オークランドではハンバーガー店に群衆が殺到、ドライブスルーには車の列が並び、交通麻痺。・・・政府は、即時ハンバーガー店の注文は予約制とするよう新規制。」

f:id:ksen:20200428085947j:plain

f:id:ksen:20200428090504j:plain

3. そのニュージーランドですが、BS国際ニュースは39歳のアーダーン首相の対応への高い評価をとりあげました。彼女については、3月29日のブログで紹介しました。

https://ksen.hatenablog.com/entry/2020/03/29/081149

 テレビスピーチでの、断固とした決意。飾らない、温かい態度。国民の質問に丁寧に応じる、寄り添う姿勢。信頼度は高く、世論調査では88%の支持を得ているそうです。

 今回のCOVID-19の惨事にあたっては、メルケル首相を筆頭に、台湾、フィンランドアイスランド、NZなど女性の政治リーダーの対応が際立っているように感じます。

 他方で、日本の対応はというと、感染者・死者数とも低い数字で推移

しているというのに、国際的な評価はいまいちです。検査数が少ないことへの厳しい批判もあります。

 在ニューヨークの友人に教えてもらって視聴したのですが、30日の夜、コロンビア大学の東アジア研究所が主宰した、「日本におけるCOVID-19」と題するテレビトークがありました。

 日本政治が専門のジェラルド・カーティス同大名誉教授・元所長と日本側は竹中治堅政策研究大学院教授の2人でしたが、カーティス教授の見立てはかなり厳しいものでした。https://www.facebook.com/watch/live/?v=2652891534964994&ref=watch_permalink

f:id:ksen:20200501143726j:plain

 政治の混乱、国民のフラストレーションの高まり、当初国民の救済よりパンデミック後の経済復興を優先したこと、自民党内部および公明党との緊張、などを指摘した上で、何らかの政変が起こるのではないか(「前回は失敗したが”小池の乱”のような)ということまで言及しました。

 同教授の「政治が変わるかも」という期待には共感します。しかし、個人的にはもう少し悲観的で、「のど元過ぎれば~」の保守的な日本人の国民性からして、なかなか難しいのではないかと聞きながら思いました。

f:id:ksen:20200501113536j:plain

4.最後は、京都で株式会社カスタネットという中小企業を経営している植木力さんの奮闘の話です。

(1) 29日、彼から久しぶりに電話があり長話をしました。

実は、その数日前にぐうぜん彼が夕方7時のNHKニュースに出ているのをみて、家人に「あれ植木さんじゃない?」と言ったばかりでした。途中からテレビを付けたのですが、社名は出なかった。しかし関西ではもっと大きく放映されたそうです。

(2)話題は、コロナ対策に病院で必要な防護服が不足している。それを彼の会社がかねて取引のある台湾の会社のベトナム工場で生産してもらい、何十万枚も京都市経由病院に収めるという話です(彼のフェイスブックには連日アップしています)。

(3)彼の話では、この防護服、新しい会社や工場で生産しようとしても、すぐに製造できるものではない。彼の会社はもともと防災用品の1つとして、「マルチポンチョ」という製品を販売していた。その仕様をもとにすれば簡単に作れると思って、試作品を作ってもらい、京都市に見せたところ直ちに受注になったそうです。

 台湾のこの会社には、英米からも引き合いが来ていて、あちらは早い注文と大量発注、しかし長年の付き合いで、しかも親日的な風土のあるだけに、最優先で植木さんの依頼に応じようという気になってくれた。

(4)そんな話を電話で聞きながら、植木さん、頑張っているなと嬉しく思いました。

 彼のことだから、意気に感じて、利益度外視で、社会貢献という視点に絞って物事を進めている筈です。

 そしてそれを、小さい会社のイメージ向上につなげるのが彼のビジネス戦略としても優れたところです。

f:id:ksen:20200501103429j:plain

5.植木さんとは、私が京都の大学に勤務している頃からの長い付き合いです。

(1) 大学で新しい「学科」を作ることになって、学長と二人でアメリカの大学を幾つか訪問しました。

 当時、「社会起業家」というビジネスと社会貢献とを両立する存在と考え方が英米で注目されていて、大学のカリキュラムにも入れる動きがありました。

 2006年ノーベル平和賞を受賞した、バングラデッシュのグラミン銀行創始者ムハマド・ユヌスがロール・モデルでした。

(2) 新しく出来た学科は、社会起業家について学び、「ソーシャルビジネス(社会企業)」に取り組む若者を育てたいという「理念」をPRしました。

 たまたま脱サラをして会社を立ち上げた植木さんが関心をもち、以来いろんな活動を一緒にやってきました。

(3) 彼は、創業したばかりの赤字会社を経営しながら、カンボジアに小学校を作る資金集めを手伝いました(開校式には一緒に出張しました)。

 ソーシャルビジネスを立ち上げる若者を支援する「塾」も開講しました。京都市の支援もあって町家を借りて、二人も講師になりました。

『小さな企業のソーシャルビジネス』という本も共著で出しました。

(4)それらを本来の会社経営で生かしつつ、「ビジネスの中で、社会の役に立ちたい」という思いで長く続けた、彼のアイディア・経験・実績が、今回の成果につながったのだろうと思います。

f:id:ksen:20200501114344j:plain

6.私は、2月末に行く予定だったのをキャンセルして以来、京都行きはご無沙汰し、自粛しています。

 いつまた友人たちに再会できるかわかりませんが、それまでに植木さんが、この防護服の病院への納入を無事に終えて、皆さんに感謝され、役立つことを願っています。

BBC(英国放送協会)の「健康に暮らす国とCOVID-19」の記事

f:id:ksen:20200422093251j:plain

1.京都では、山鉾巡幸も中止、祇園お茶屋も「イノダ」も臨時休業とのことで、一時的とはいえ、文化と伝統も消えていきます。

 このところ毎回COVID-19の話題ですが、前回の岡村さんのコメントに、家に四六時中一緒にいると、「DVを初めいろんな問題が生じているという報告が気に掛かります」とありました。本当にそうですね。

「戻ると気配でわかるのか、ネコが玄関先でうるさく鳴いてまとわりついて来たのに、近頃は家に居る時間が長い為か、僕が居てもそそくさと二階に上がって行くのです」ともあり、猫でもそうなんだと面白く読みました。

 それで思い出したのは、欧米人のダブルベッドの習慣です。欧米ではどんなに大きな家に住んでいても夫婦のダブルベッドが習慣のようですね。数年前に日本でも評判になった「ダウントン・アビー」という英国発の連続TVドラマで、主人公の伯爵夫妻がお城のような、部屋が何十もある大邸宅に住んでいながら、寝るときは同じ部屋で、しかもダブルベッドで寝る場面が何度も出て、不思議でした。

 あれでは日本人以上に、夫婦間の感染の度合いは高いのではないでしょうか。

 

2.下世話な話になりましたが、今回は、英国放送協会(BBC)の電子版4月20日の、「「健康指数」の高い国におけるCOVID-19への対応」に関する記事の紹介です。

・レガタム研究所という英国シンクタンクが毎年「繁栄度指数(prosperity index)」を発表しています。

 各国の繁栄度を「生活の質」で測るという考えで、160 ヵ国以上について、国連などの公式統計をもとに著名な専門家が、(1)治安と安全保障(2)経済(3)政治と統治(4)生活水準(5)教育(6)自然環境など合計12の項目ごとに評価をして、それを総合して国別の順位を発表しています。

・実は、このブログでも2011年度の「国別順位」を紹介したことがあります。ランキング付けにどれほどの意味があるかはともかく、大まかな傾向を見るには参考になります。

 2019年の総合順位の上位10か国は、北欧4国にスイス、オランダ、ニュージーランド、ドイツなどでほぼ固定メンバーです。年ごとの順位の変動も少しはあります。例えばアメリカは、2011年の総合ランキング10位から2019年は18位に、中国は52位から57位にランクを落としました。

f:id:ksen:20200423120851j:plain

3.この12の評価項目の1つに「健康度」があります。

 BBCは今回、このレガタム研究所の指数を使い、もともと「健康度」評価が比較的高い国を5つ選び、これらが新型コロナウィルスの対応でも評価できるか、評価できるとするとどういう点か、を調べました。

 選んだ5か国は、

・「日本」(レガタム研究所の「健康度」順位は2位、「総合評価」は19位。)

・「韓国」(同5位および29位。)

・「イスラエル」(同11位および31位。)

・「ドイツ」(同12位および8位 )

・「オーストラリア」(同18位および17位。)です。

f:id:ksen:20200424102915j:plain

f:id:ksen:20200424102839j:plain

4.BBCは、この5か国の新型コロナウィルスへの今までの対応を総じて評価していますが、その理由を私なりに整理すると以下のようになります。

(1)政府の対応の速さー日本以外の4か国(例えば豪州は、写真にあるようにシドニー郊外ボンダイビーチを早くも3月21日に閉鎖した)

(2)検査体制の充実と効率よい迅速な対応―日本以外の4か国(例えば写真にあるように、イスラエルは容易に検査ができる仕組みを整えた)

(3)医療システムの充実(国民皆保険・安い医療コストを含む)―日本を含めて全て

(4)トップのリーダシップと政府への高い信頼感―ドイツ、韓国

(5)地方分権のメリット(州政府への権限移譲)ードイツ

(6)国民の健康意識の高さ―日本

f:id:ksen:20200424100642j:plain

5. ここで私が面白いと思ったのは、(3)の医療システムは日本を含めてすべての国が評価されている。

ところが、政府の対応と検査体制(上記の(1)&(2))となると、日本だけが評価されていない。

代わりに、唯一「国民の意識」が出てくる、という点です。

―具体的に日本についてどういう点を評価しているかというと以下の通りです。

 (1) 新型コロナウィルスへの今までの的確な対応は評価される。

 (2) 心配は徐々に悪化の傾向が見られることで、首相は「緊急事態」を宣言した。ただロックダウンには至っておらず、ここまでは優れた医療システムのお陰と言える。

(3) 加えて、もともと清潔好きな国民であり、普段から健康志向がきわめて高い。日本人の6割が毎年、定期健康診断を受けるという統計もある。

(4) マスクも、以前から当たり前のように国民の多くが使用していた。

(5) 検査数は少なく、この点は遅れている。しかし、誰もが具合が悪いとすぐに病院に行き、CTスキャンをしてもらう。

―他方で、韓国やドイツでは、政治リーダーに対する高い信頼と支持が強調されます。

―他国についての評価で出てくる「政府(government)」という単語は、日本について1度も出てきません。 

 以上、BBCの記事を読むと、「日本は政治のリーダーシップは、特筆することはない。しかし医療システムと国民の健康志向の高さは従来から「レガタム」も認めている。それが今回の伝染病感染にも生きている」ということになりそうです。

 もちろん、事態はこれほど単純ではなく、医療現場の崩壊も懸念されて、楽観視はできないでしょう。しかし日本の強みは「国民の健康志向だ」という見立ては、納得的ではないでしょうか。

f:id:ksen:20200416083650j:plain

6. ところで、この「レガタム繁栄度指数」ですが、「健康度」では日本は2位(1位はシンガポール)と立派なものです。

 しかし、総合評価は19位です。もちろんこれでも高い評価ですが、この順位は「個人の自由度」は31位、「ソーシャル・キャピタル」は132位という低い数字が足を引っ張っていることも報告しておきます。

ソーシャル・キャピタル」は「社会関係資本」と訳されますが、社会における人々のつながり・ネットワーク・信頼関係などの指標です。

 皮肉な言い方になりますが、「日本では、社会や人々はあまり頼りにならない。だから自分の健康は自分で守る、そのため病院にも頻繁に行く」ということでしょうか。

 もちろん、最初に書いたダブルベッドに寝ないといった文化や風習も大きいかもしれません。少なくとも夫婦間では、日本人は昔から「ソーシャル・ディスタンシング」に慣れているのかなとも思いますが、それにしてもDVが増えているのは悲しい話で気になります。 

朝の散歩で考えた、新型コロナウィルスの「死者率」

f:id:ksen:20200402105932j:plain

1.「あの戦後の惨めな経済情勢から,我々は努力して今日の繁栄を築くことが出来ました。しかし戦争で失った命は帰っては来ませんでした」。

 前回頂いたMasuiさんのコメントを読み返しながら、命を守る人たちを思い、自粛を続けています。

 ここ2週間、出かけたのは朝の散歩と病院行きのみ。(家人は食材を買うため、ごく近くのスーパーに行きますが)。

 まだ「宣言」が出る前に、中央高速を走って「桃源郷」と呼ばれる釈迦堂SAにある花桃を眺めたのが懐かしいです。

 いまの散歩は、東大キャンパスは入れないので、フェンス越しに咲いている八重桜を眺め(学生の姿もありません)、もと東京教育大農学部あとの駒場野公園は閉めてないので、ここまでの住宅地を歩きます。

f:id:ksen:20200415090820j:plain2.  病院行の1つは親知らずを抜く手術です。南新宿のJR東京総合病院に1泊入院し、手術は局部麻酔ではなく、「セデーション」での治療ということで全身麻酔ほど強くないが、鎮痛剤を投与して行いました。

  手術中は意識はほとんどなく、終わってからどのように病室に戻ったかも記憶になく、1時間ほどそのまま寝てしまいました。末期医療などに使われるようで、こういう風に最期を迎えるのもいいなと思いました。

  親知らずは腐って、周りに膿がたまっていて、ほっておくと化膿する、早く抜いてよかったと医者に言われました。病院はこういう時期だけに普段より空いていました。

 医者も看護師も皆さん親切です。今回ささやかながら手術入院をしたせいで、コロナに立ち向かっている人たちのご苦労を前より一層身近に感じました。

f:id:ksen:20200419080911j:plain

3.「全国に緊急事態宣言」が出て、事態はどう変わるのでしょうか?

京都の岡村さんが、「イノダ」が空席だらけになった写真と人気のない祇園花見小路の写真を送ってくださいました。どちらもこの時期、ほぼ終日人出で埋まっている筈です。

 喫茶店の「イノダ」は元旦を含めて、1年365日、朝7時から開いています。常連の座る円卓があって、「ミスター京都人」と私が呼ぶ柳居子さんは1日も欠かさず、仕事前の7時過ぎから数十年もこの円卓に座っています。

 常連の中には、お医者さんも3人いると聞きました。この時期にお医者さんも交えてどんな会話が交わされているか興味がありましたが、年中無休の「イノダ」の伝統も変わるのでしょうか?

 いつ、また京都に行かれるでしょうか?今年の山鉾巡行はどうなるでしょうか?

f:id:ksen:20200419081023j:plain

4. 事態が良い方向に変わるといいのですが、世界的に感染者は増え続けています。

全くの素人である私が勝手に注視しているのは、各国の「死者率」です。分母は国連統計の人口、分子はWHO situation reportが毎日発表する死者数です。

https://www.who.int/emergencies/diseases/novel-coronavirus-2019/situation-reports/

 人口の多寡にかかわらず比較できるので、「死者数」と同じように大事な指数ではないでしょうか。

 

5. この数字を最新の4月17日発表から、人口10万人単位の指数を調べて、以下の3つのグループに分けてみました。日本は18日新聞発表・国内のみの数字です。

(a)1% 以下の国――インド(0.03)、日本(0.16)、シンガポール(0.17)、ロシア(0.18)、インドネシア(0.18)、ニュージーランド(0.22)、オーストラリア(0.24)、中国(0.32)、韓国(0.44)、 

(b)1~10% ――イスラエル(1.64)、カナダ(2.80)、オーストリア(4.50),ドイツ(4.63)、デンマーク(5.56)、イラン(5.87)、アメリカ合衆国(8.57)、

(c)10%以上――スイス(11.82), オランダ(19.38)、英国(20.33)、フランス(27.48)、イタリー(36.61)、スペイン(40.93)、ベルギー(42.09)・・・・・・

f:id:ksen:20200412095956j:plain

6. 以下注釈すると、

(1) 以上はごく一部の国を拾っただけです。

   分母は各国が毎日WTOに報告する数字です。従って、どこまで正確な数字かは分かりません。(中国は過少報告だったとして、17日には一挙に1290人前日比増えて、総数4642人になりました。日本の数字も新聞のより低いです)。

(2) 国によっていかに大きな違いがあるか、欧州の一部がいかに突出して多いかが分かります。

(3) 死者の絶対数では、アメリカが最大で,続くスペインの死者の3.5倍も多いです。しかし「死者率」で比較すると、スペインはアメリカの4.7倍以上です。

 「死者率」で世界でいちばん高いのはベルギーです。

(4) しかも、この数字は、日本を含む殆どの国で連日2桁~3桁で増加しています。まだ通過点に過ぎないということです。

(上記した23か国のうち、16→17日の増加がゼロないし1桁は、オーストラリア0、シンガポール0、韓国1、ニュージーランド2の4か国のみでした)

 7. 最後に日本は、「死者数」でも「死者率」でも,シンガポールニュージーランドやオーストラリア、などと並んで、少なくとも現時点では「幸い」、きわめて低いグループに入っています。

 その理由は、素人の私には全く分かりません(迷走し、リーダーシップと庶民への思いが不足していると見える、この国の政治家の存在にも拘わらず「幸い」、と言うべきか)。

 ただ,気になることを言えば,

(1)死者数が一向に減ってこないこと。このところ連日2桁で推移。他方で例えば韓国は一時よりかなり減ってきている(最近は日に1桁台が続く)ので,両国の差が徐々に縮まっている。

(2) よく言われるように、医療現場の疲弊、崩壊の懸念、

(3) そして最後に西浦北大教授の「日本がこのまま対策を取らなければ、最悪40万人以上の死者が想定される」という警告です。

 40万人という数字は、現状からみると想像を絶する事態ですが、もちろんそうはならないように皆が苦労して、耐え忍んでいる筈です。「家に居よう、医療の現場と従事者を守ろう、命と生存を救おう」の3つの標語を、心に留めています。

 

新型コロナウィルスと闘うロンドンから

f:id:ksen:20200326091125j:plain

1. COVID―19は世界で、日本で、いつどのように収束できるのでしょうか?

前回はニューヨークの情報を報告しました。コメントをいろいろ頂きました。

・田中さん:リーダーは心を込めて、命をかけて、国家・国民を守る。自ずと、言葉と態度に出ると思うのですが。

・藤野さん:3.11の時、少なくとも菅首相は先頭に立って走っていました(批判はありましたが)。枝野官房長官は精力的に発信を繰り返し、#枝野寝ろというハッシュタグが作られました。全力投球していたように思います。

・Masuiさん:まずは私の様な年金生活者は家でじっとすることが義務です。このままですと、ニューヨークと同じになってしまいます。

・岡村さん:野戦病院とはこの様なものではないかとニューヨークの出来事を想像しました。毎日の感染者が増えていく発表は枝野さんの原発の状況の報告を思い起こし、吉田所長のように現場に留まり指揮をされ仕事にあたった人達の事が思い出されます。ニューヨークの医療現場も同じように使命を持ってあたっておられる人達だと想像しています。命をかける人が居る。それを知っただけでも心が癒されます。

f:id:ksen:20200329075339j:plain

2. こういう良識ある方々の思いにはほっとします。

 しかし、世の中いろいろな人がいます。家庭内暴力、困窮のあまりの自殺、感染者・医療従事者に対する差別や誹謗中傷、集団感染の大学への数百件におよぶ脅迫電話、などなどこんなときに人の性が出てくるのでしょう。

 いま世界でも一二を争うたいへんな状況にあるイタリアからイタリア人の友人がフェイスブックに、ゴミの散らかる写真とともに、以下の言葉を紹介してくれました。

―― “ Il virus e la malattia più grande di questo pianeta sono e continueranno ad essere gli umani.”――

イタリア語はまったく分からないので翻訳機能に頼ると、以下の意味のようです。

「この惑星で最大のウイルスと病気は, 人間であり続ける。」

言い得て妙な言葉だと思いつつも、悲しい気持ちになります。

f:id:ksen:20200412082439j:plain

 3. もちろん、ウィルスみたいな人間はごく一部の少数と思いたいです。

そこで英国からの情報をお届けします。海外から日本を見ると、少し危機意識が足りないように感じるのか、厳しいことを言ってきます。

 

・英国では、「コロナに患っても、重症・重篤でなければ家で治せ・病院来るな・検査はしない」というのが原則です。英国の感染者数は、日本の10倍以上とはいえ、全てではなく、医療従事者や重傷者などを中心の数字です。

 日本も、命に関わる病気でなければ、自分のため、他人のため、医療従事者のために家にステイされるのが賢明です。

・初めジョンソン首相は楽観的でしたが、その後ウイルス封じ込め作戦の失敗をあっさり認め「降伏宣言」して、その後の「外出禁止令」などの対応は評価できます(もちろん感染者も死者も一向に減ってはいませんが)。

 

・いまは、以下の3つの分かりやすい標語を徹底して訴えています。

  1. STAY HOME! (家に居よう!)
  2. PROTECT THE NHS! (病院と医療従事者を守ろう! NHSは「国民保険サービス」)
  3. SAVE LIVES! (命と生存を救おう!)

 

・出かけなければ良いのです!あなたが家に居続けることで、病院や医療従事者、一般の方々の多くの命を救うことができます!

 ITを活用しての勉強・仕事・交流、家族との会話、テレビや読書、軽い運動やストレッチなどで過ごすしかありません。

 食材や食事はなるべくデリバリーにして、配達人とは接触せずに家の外に置いてもらう。緊急時の薬や食材など最低限の買い出しの際は、手洗い・マスク・除菌、顔を触らない、最低2メートル人と距離を取ることなど一般に感染を防ぐ効果があるとされていることを徹底する。

・ 英国では高齢の親や伴侶が感染して重症で病院に運ばれる際、当然、伴侶や家族は病院へお見舞いにも行かせてもらえませんし、「自宅を出る時が、貴方が愛するひととの最後のお別れの時と覚悟しなさい!」と政府の人も言っており、もはや常識です。

 フランスで48歳男性患者が最期に「これが私の死なのか。妻にも4人の子供にもひと目も会えずに死ぬのか」と激しく泣いた(そして数時間後に亡くなった)という話をインスタで見て、このウイルスの一番残酷な点はこれだと思いました。

f:id:ksen:20200404184916j:plain

4. 上のようなアドバイス、まことに尤もと思います。

 しかし日本の場合、居住空間の狭さ、働き方、食材のデリバリー・サービス、IT環境、寄付文化などなど、英国との違いは大きく、なかなかこの通り実施することは難し いなとも感じます。

 例えば、家に居て、娘が長屋の隣人と歓談している写真を送ってきました。隣人とたしかに2メートルほど離れています。しかし広い裏庭で、東京の我が家で同じことはとてもできません。

 それでも、Masuiさんのような高い意識を持つことは大事だと再認識しました。

 

5. 英国のボランティアについても書いてくれましたので、この点も報告します。

(1) イギリスでは、医療スタッフが足りずNHSへのボランティアの募集を政府がかけたところ、予定の3倍の75万人がすぐに集まりました。一般人は、食料や物資を老人宅へ運んだり、電話で話し相手になってあげたりします。

(2) このうち、NHSのリタイア組の医者とナースは1万1千人います。ご家族は最前線でボランティアなどして欲しく無いだろうとは思いますが。

 既に、10人以上のボランティアスタッフが亡くなっています。志の高い志願兵です。

f:id:ksen:20200326085209j:plain

6. 英国政府が、「Save lives」の視点に立って、迅速かつ手厚い生活保障の施策を実施していることは日本でも報道されています。

 山中伸也教授のホームページにも「各国の対応」についてイギリスの説明もあります。https://www.covid19-yamanaka.com/

 そして上にあげたボランティアだけではなく、様々な団体や有名人(スポーツ選手など)や実業家・大富豪からの大規模な寄付も報道されています。

  翻って日本はどうでしょうか?米国のビル・ゲイツが早速寄付したという110億円の巨額まではいかなくとも、かっての渋沢栄一のような活動を見せてほしいものです。

 むしろ、草の根の人たち、中堅企業やNPOが頑張っているようで、こういう明るい話題もメディアはどんどん報道してもらいたいです。

 以下は、家人がテレビで知ったほんの一例ですが、クリストサラダという小さな会社の取り組みの一例です。応援したい気持ちになります。

https://www.crisp.co.jp/