1. 遅くなって恐縮ですが、さわやかNさん有難うございます。
残念ながら、何か事故や問題が起こるたびに、自分たちが自身で倫理を守って社会を良くしていくという姿勢よりも、政府の「規制強化」に期待するのが私たちの習性になっているように思います。
その度に新しい「規制する法」が出来て、官僚の権限が広がるわけですが。
日本人にとって「法」というのはちょっと苦手な、出来れば近づきたくない、「統制の道具」という存在でしょうか。
2. 少し硬い話ばかりが続いて恐縮です。
そろそろ今年も終わり、皆様もそうでしょうが、何となく慌しい日常です。
ロンドンに住む娘夫婦が2月に生まれた孫を始めて日本に連れて一時帰国している、ということもあって、狭い我が家はますます狭くなり、振り回されています。
合間に娘と話しをする機会も少しありますが、
良くも悪くも、小さい赤ん坊の育て方は英国と日本とではだいぶ違うようです。
働いている女性が多いということもあるでしょう。
(1)英国では、生まれて、翌々日には産院を退院させられる。
(2)家に帰れば(広さも違うせいもあるでしょうが)、その日から別室で1人で寝かせる。
(3)母親が寝るまで添い寝をするという習慣はない。隣の部屋で泣いていても母親はそのままにして、そのうち一人で寝てしまう。
(4)コミュニティの人間関係の違いもあるだろうが、退院の2日後には同じアパートの住人が20人ほどお祝いにやってきて、賑やかなパーティになる。
以後も、生まれたてのときから、見知らぬ人(隣人や友人や週に2日家に来るナニーなど)に接する機会がまことに多く、赤ん坊の時から泣いているひまが無いぐらい、いろんな人と接しざるを得ない。
ナニーも、自分の判断で、赤ん坊を車に乗せて、外に連れ出すなり、かなり自分の考えで自主的に面倒をみている。
(5)産後休暇はせいぜい6ヶ月。すぐにナーサリー(保育園)に預ける。保育園では、多少風邪を引いて熱が出たぐらいでは、そのまま預かってくれる。
病状からして「医者に診せたほうがよい」と思われる場合は、保育園の判断で病院に連れていく
・ ・・・・
等々、どうも英国のほうが子供に対する育て方は、(働いている女性が多いせいもあるかもしれませんが)あまり母親が手を掛けない、ある程度、任せるやり方のようです。
もちろん可愛がっていない、ということでは全くないでしょうが、
要は、子供に対する距離感の問題と自立を養う姿勢でしょうか。
3.というようなことで、お正月になればゆっくりする筈ですが、いまは家の中もせわしなく、ゆっくり長い本を読む時間もなく、雑誌をめくる程度です。
アメリカTIME誌アジア版の12月17日号は、まだ総選挙前の記事ですが、表紙
は「Japan Moves Right (日本の右傾化) ―−この国がここ数十年でもっともなナショナリスティックになっているのは何故か?そして、それがなぜ危険なのか?」を見出しにして、東京支局の記者による2頁の文章を載せています。
別に目新しい内容ではありませんが、いちおう整理しておくと、
(1) 自民党の安部政権の右よりの姿勢と、日本維新の会の動きに触れています。
・ ・・「維新の会」(Japan Restoration Party) の維新は「明治維新」(Meiji Restoration )から来ており、他方で安部・自民党が選挙のスローガンを
「日本を取り戻す(Restoring Japan)」としたなど、
維新の会も自民も、「回復する・とり戻す」即ち、英語に直せば、同じ「restore」という用語を使っていること。
(2) 橋下某が「従軍慰安婦は軍の強制ではなかった」
また、石原某が「1937年の南京虐殺はでっちあげ」とそれぞれ発言している
と紹介している。
(3) 桜井よし子の以下の発言を紹介している。
「10年前、私は、ウルトラ・ナショナリストと見られていた。
今では、私のような存在が普通の日本人の姿ではないか」
(4) なぜ、今ナショナリズムか?なぜ「右旋回(rightward turn)」か?
日本経済の長引く不況、格差拡大等からくる社会全体の閉塞感、政治不信、相対的な国際的地位の低下・・・・等から内向きになっている日本人が、過去の・元気だった日本へ郷愁を感じていること。
例えば、
維新の会から立候補した若者の以下の発言を紹介している。
「いまの日本に誇りを持って、再度、過去から見直さなければならない。
そして、日本がいまいちど立ち上がり、世界をリードする立場にあることを世界に示す必要がある」
(5) その結果、すでに世界で6番目の軍事費大国の日本は、さらに「国防軍」という名で戦力を強化しようとしているとして、
「こういう、軍事強化・右旋回の流れが強まるきっかけは、中国等アジア諸国のナショナリズムの動きが背景にあり、中国に感謝したいぐらいだ」
という防衛庁の元高官の言葉を紹介しています。
(6) しかも他方で、中国の習・新政権もまた、さらにナショナリスティックな姿勢を強めており、両者の緊張は高まるのではないか。
というような論調です。
日本人も中国人も、それほど愚かではないと期待したいところですが・・・
そういえば、「ナショナリズムとは、所詮、党派心だ。徒党を組んで他を排除する論理ではないか」という趣旨のことを、山崎正和が言っていたように思います。