「傘ポン」から「エコノミスト」中国特集記事と中国人観光客

1. 相変わらずうっとうしい天気で、傘が手放せませんね。

デパートなどに入ると(私の場合は渋谷の東急本店内の本屋に行く時が専らですが)、入り口に濡れた傘をビニールで包むという、いわゆる「傘自動装着器」と称する代物を置いてあるところが増えて、これを「傘ぽん」と呼ぶということを初めて知りました。
某メーカーの国内シェアが9割以上だそうで、ある種のアイディア商品ですね。
日本発のこの商品とサービスが海外でも増えてきているようで、バチカンでも見た、サグラダ・ファミリアバルセロナ)でも見た、という情報がネットで飛び交っている、という話を先日、世田谷の某所で仲間と会食中に聞きました。

中の1人が、「自分は、新しいビニールではなく、横に置いてある使用済みをもういちど使う」と発言されて、なるほどそういう発想もあるなと感心しました。もっともこれを夕食時、家人にしたところ「私も前からやっている」と言われて、我が家にも環境配慮派が1人居るなと再認識した次第です。
因みに、誰かが「折りたたみの傘も日本発のアイディアかな?」と言いだし
「あれはドイツ製が最初だそうです」と説明してくれました。
因みに、ウォッシュレットの欧米での普及が意外に進まないという話題がよく出ますが、他方で世界の観光地に「傘ポン」が拡がっている、後者は安直に設置できるという理由もあるのでしょうが、面白いものです。

2 別の友人数名でやはり会食したとき、1人が夫婦でイタリア旅行をした話が出て、好天に恵まれたようで「傘ポン」の話は出ませんでしたが、バチカンのシスティナ礼拝堂など訪問した旅行談を聞きました。
システィナにしてもフローレンスのウフィッイ美術館にしても最近観光客がとみに増えて、単独で出掛けたりすると何時間も待たされる。
団体ツアーに参加した方が優遇されるので、自分の好みではないが今回はツアーに参加した、そんな話でした。

中国人観光客の増加もその背景にあるのだろうなと思い、英国週刊誌の記事の要約を友人に渡しました。「中国人観光客が世界を席巻している」状況に触れた内容です。
以前のブログでも、「エコノミスト」4月19~25日号の「中国の将来」特集記事の?部を紹介しましたが、これもその特集の中にあります。
そこで今回は以下にこの記事を紹介したいと思います。

3 (1)中国人の海外観光旅行者――新しいタイプが増えている。今では約3分の1が、ツアーではなく、自分で計画し、一人ないし少数で旅行し、より多く消費し、より長期間滞在する。
“6+1S”の旅行者も増えている。2人の若夫婦と夫々の両親4人+子ども1人のグループのこと(中国の1人っ子政策のお陰)。

(2) 今や世界中の旅行者の10人に1人が中国人である。2013年には97.3百万人が海外に出掛け、うち約半分が観光客である。彼らの海外での消費額は昨年、1290億ドルと世界最大でアメリカの860億ドルがこれに次ぐ。
彼らの80%が海外旅行での最大の目的は買い物だと言い、56%の中東、48%のロシア人がこれに次ぐ。2,015年には彼らが海外でぜいたく品を買う金額は他の世界の旅行者全ての合計を超えると見込まれている。


(3) しかもこれはまだ序の口に過ぎない。現在、パスポートを持っている中国人は人口の5%であり、しかも殆どが、香港とマカオへの旅行者である。
今後は、新しい旅行者に加えて、より多くのリピーターが、より遠くの海外へ、より長く旅行すると予測され、2020年には中国人旅行者の数は現在の2倍、消費額は3倍を予測するシンクタンクもある。
1億人の中国人がルーブルの「モナリザ」を観たい、パリのルイヴィトンの店で買い物をしたいと考えている状況を想像してみてはどうだろう!


4. (1)かくして世界中の有名店やホテルや旅行業界が彼らから利益を得ようと待ち構えている。
中国各都市からの直行便を受け入れ、観光ヴィザ規制を緩和する動きが活発化している。現在、中国人がヴィザ無しに旅行できる国は、例えばアメリカ人や英国人が170カ国を超えるのに、44カ国に過ぎない。
したがって、例えば、アメリカ合衆国は、昨年規制を緩和し、ヴィザをインターネットで申し込み大使館ではなく中国国内の銀行窓口で受取ることを可能にした。そのせいもあって、昨年アメリカの中国旅行者は22%増加した。
また、モルジブは中国からのヴィザを不要とし、同じく昨年45%増えて旅行者の3分の1を中国人が占めるまでになった。
もちろん、今では主要などこの空港や都市でも中国の通貨とクレジット・カードは通用する。空港で中国のお正月に訪れた観光客に、空港ホールで贈物をしたり中国語の案内書(観光名所やブランド店の)を渡したりする光景は、珍しくない。


(2) 次なるステップは、言葉の対応および、中国向けのサービスや商品の提供を一層促進することである。
パリのプランタン百貨店は中国人観光客専用の入り口を設け、ロンドン・ハロッズには、「ユニオン・ペイ(中国の主要なクレジット・カード)」の端末を100カ所置いている。中国語を喋る従業員を増やし、中国語のウェッブ・サイトや地図を充実させている。
ホテルでは中国語のTV番組を観られるようにし、中国式の朝食を提供する。
こういったサービスの主目的は、中国人に対する「respect(敬意)」を示すためである、と彼らは言う。即ち、中国人観光客がもっとも嫌がるのは「2級国民」という扱いを受けることだからである。彼らは「authentic(本物の)」「limited edition(限定された)」「VIP」と言った謳い文句にまことに弱い。


(3) 何れにせよ、受け入れ側にとってこれからの課題は、厖大な中国人観光旅行者の予備軍をいかにして自分のところに呼び寄せるかである。
そのためには、一層のマ―ケティング力、魅力ある「物語」そしてインターネット時代にあって中国独自のソーシャル・メディアを活用すること等が大事であろう。

例えばニュージーランドクイーンズタウンは、2012年、中国の人気女優( Yao Chen)の結婚式(妖精物語のような演出での)を成功させた。この様子は、Weibo (中国のツイッター)で66百人がフォローし、40百万人がコメントし、新聞雑誌には4000の関連記事が載り、以後、同地で結婚式をあげる若者が急増している。 
                                                           
――というような内容です。
日本も、こういう中国人観光客の急増という新しいビジネスチャンスを捉えようとするのか、それとも観光、とくに中国からはさほど気が進まないと二の足を踏むのか・・・
すくなくとも世界の動きをフォローしておく必要はあるだろうと思います。