英国からの観光客とITの時代

1. 東京の桜は葉桜になりましたが、良い季節で人出も多く、街は賑わっています。3月20日の新聞には「海外からは年間2000万人に迫る勢い、海外に向かう日本人観光客の数を45年ぶりに上回った」とありました。

私も英国からの来客と会う機会がありました。今回はその報告です。
ローラさんという50代初めの女性です。オックスフォード大学を出てファッションの会社を起業して成功し、昨年この会社を売却して暫らく充電中。この間、未知の国を訪れたいと9週間の一人旅を計画し、まず日本、そのあと中国、モンゴル、ロシアなどを旅するそうです。


昨年の11月には6人の女性と六本木の国際文化会館アフタヌーンティーをともにしました。「英国から来たパワーフルな女性たち」と題してブログにも載せました。
http://d.hatena.ne.jp/ksen/20151129

その繋がりで、前回の案内役だった・英国人と結婚している日本人女性ミセスDからまた依頼されて快諾したものです。

今回は、相手は初めて来日する英国人であり、ミセスDのような名通訳もいないので、2人だけの夕食でした。
しかし、4月2日、国際文化会館の桜はまさに満開で、彼女は「美しい」を連発し、そのためか会話も盛り上がり3時間半を超えて付き合いました。

2. 英国人の女性はよく喋ります。しかもローラさんは好奇心が旺盛かつ行動的なインテリ女性です。
お礼のメールで「少し質問し過ぎたのではないか」と謝ってきたので、「質問は、外国人がどういうことに興味を持つかもわかり、こちらも問いを考える良い機会になるのでむしろ有難い」と返事しました。

序でに「昨夜の長い会話のキーワードは、「違い(difference)」と「保守主義(conservatism)」の2つではないかと思う」と付け加えました。


最初の質問は、「桜はたしかに美しい。しかし日本人はなぜグループで集まり楽しむのか?日本人以外ああいう光景は見たことはないが・・・」というもの。
 「行動的」といえば、前日日本に到着したのですが、翌日は、午前2時半に起きてタクシーで築地・魚河岸に行き、その後は、皇居、明治神宮、原宿などを20キロ近くもっぱら歩いた由。
 魚河岸では、朝3時からの「せり」に観光客を先着順で120名入場させるそうです。「それに参加するために電車はまだ走っていないのでタクシーを予約した。時間通りに来て、おまけに少し雨が降っていたが、運転手は傘をさして私を待っていて、出ていくとすぐに入れてくれた」・・・
「どうして、日本人はそこまでするのか?雨が降って濡れてもそれはお客の問題ではないか。おまけにどうして、いつも白い手袋をはめているのか?」
次なる質問でした。


3. 今回の夕食は、ローラさんがミセスDに「初めて日本に行くので、誰か英語のできる日本人に会いたい」と頼んで、私にお鉢が回ってきました。
この気持ち、よく分かります。私ももし異国に行くとしたら、ガイドさんの案内だけでなく、機会があればその地に暮らしている庶民の話を聞いてみたいと思う者の一人です。


しかし、お互いに初対面です。彼女は初めての東京です。
事前にメールのやり取りをし、国際文化会館のウェブサイトも見てもらい、ちゃんと夕方ひとりでやってきて即座にお互いを見分けることが出来ました。

それにはフェイスブックが役に立ちました。
たまたま彼女も私もやっているので、写真が載っているからです。
それにしても、ITの威力を痛感しました。

(1) まずはメールのやりとりとフェイスブックの存在
(2) その上、いまは宿泊や交通機関などさまざまな情報をネットで直接、間に業者を通すことなく、もちろん英語で入手できる。
(3) 英語のネット情報について補足すれば、縁があって京都の冷泉家の訪問も日程に入れました。
事前に英語で説明するのはしんどいなと思って、念のためグーグル検索したら、


「Reizei Family(冷泉家)」も「Fujiwara no Teika(藤原定家)」も「Ogura Hyakunin Isshu」もすべて英語で検索できます。
「定家卿」の英文ウィキペディアは誰が書いたか知りませんが、20頁の長文でよく書
けています。これらの資料を渡したところ、大いに喜ばれました。後鳥羽上皇と定家卿
の確執などに興味を持ったようで、当日、冷泉家に行ってそんな質問をしたら、ずいぶ
んと驚かれたでしょう。

しかも、ウィキペディアはすべてボランティアの活動です。こんなにお世話になっているのだから、そろそろまた寄付しなければいけないなと思いました。


(4)しかも、行動するに当たっての、アイ・パッドの威力です。
ローラさんは小型のタブレット機器を常に持っていますが、これで殆どの情報が入手できます。皇居に行くのも国際文化会館に来るのも「グーグル・マップ」を検索すれば全く問題なし、迷うことはありません。
道順はちゃんと点線で表示されているのを見せてくれました。「指示通りに動くのは嫌なので、時々はわざと道草をする」とも言っていました。
これなら、私が海外でもよくやるように、通行人に道を訊く必要はありません。
「日本人は街中で英語が通じないことが多いと聞いてきたが、グーグルのお陰で話しかける必要はほとんど無い」そうです。

こんなこと若い人にとっては常識でしょうね。
そう言えば私は昨年9月、久しぶりにロンドンの街を歩いて、見知らぬ通行人に何度も道を訊きました。しかし、思いだしてみると、そんなことをしている若者は一人もいませんでした。皆、アイ・パッドを片手に検索しながら、見知らぬ街を歩き、観光するという時代になって、旅行の楽しみ方が変わったことを痛感します。
そして改めて感じたのは、
(1) 英語による、ネットでの正しい・幅広い情報発信力がいかに大事な時代になったか。
(2) 英語にアクセスする力がいかに大事な時代になったか。
の2つです。
とくに、これからの世界の若者は、英語の情報を「読む力」で差がつくのではないか。
ローラさんは、業者の力を借りず、独立自尊ですべてネットで調べて、東京のあと川奈に行き、京都・奈良から広島へ回ると言っていました。


観光の日程に広島を入れる外国人が増えてきていることも実感します。
彼女も「慰霊碑」を訪れて、どんな感想を抱いたか・・・
毎日忙しく歩き回っているので時間の余裕はないだろうが、簡単でいいから、「初めての日本旅行記」をフェイスブックに載せたら面白いのでは?と提案して、彼女と別れました。