「あなたは国のために戦えますか?(Would you be willing to fight for your country?)」

1. 前回は「英語の世紀の中で」、日本人もIと We (これもIから始まる)で考えることも大事ではないか、と書きました。
フェイスブックで面白いコメントを2つ頂きました。
Aさんは「Iは、個人として神の前に立つというキリスト教と結びつくのではないか」という指摘。
Bさんは長年アメリカで事業を立ち上げてきた日本人として「中国や韓国にビジネスでも対抗するためには、Iの発想をもっと持つべき」という意見でした。


そんなコメントを考えながら、昨日、2ヶ月ほど暮らした田舎から東京へ帰ってきました。

何せ人間より鹿を見る数の方が多いという山奥ですから、戻るとその違いに戸惑います。
田舎では、人間より動物を、静かな雲の動きや動かない山やみずみずしい緑や稲田を眺めている時間がずっと多くなります。私もそういう自然の一部なんだなと、ちょっと謙虚になるという感じでしょうか。
街に降りても人も車も少ないし、駐車場は無料だし、スターバックスもゆったりしています。


2.田舎でも東京でも変わらないのがPCに向かう時間です。
私であれば、どこに居ても朝食のあと机に向かってPCを開けてメールのチェックと電子版の海外メディアを覗くのに1〜2時間はとられます。


日々のニュース以外にも、興味ある記事があります。
そんな中でちょっと古いですが、今年3月に発表された「ある国際世論調査」を紹介します。
WIN/ギャラップ・インターナショナル(本部スイス・チューリッヒ)という世界的な市場調査や世論調査の連合事業体が今年の初めに実施したもので、
世界64カ国から6万4千人強に調査を実施した結果をプレス・リリースしたものです。
質問項目は
「2015年は14年より良い年になると思うか?」
「あなたはいま幸せだと思うか?」などから
「あなたはトイレに行った直後、自動的に手を洗うか?」といった質問まであります。
この結果が60ページ以上のPDFファイルで読むことができて、国別やその構成(年代・性別・収入別など)の詳細を知ることができます。
http://www.wingia.com/en/services/end_of_year_survey_2014/global_results/8



例えば「いま幸せか?」という質問に対しては、
(1) 全回答者の70%が「イエス」と回答。2013年から10%アップ。
「ノー(あまり幸せではない&非常に不幸の2つの回答の合計)」の世界平均は6%で、前年比6%ダウン。
(2)国別で「イエス」のトップはフィジーで93%、最低はイラクの31%。
(3)ヨーロッパでの最高はフィンランドで80%がイエス、最低はギリシャで24%が
「ノー」。
(4)因みに、日本人の回答者の平均は58%が「イエス」で、世界平均70%を下回っている・・・・といった具合です。


2. この調査でいちばん話題になるのが
「あなたは、国のために戦いますか?」という質問の回答結果です。
以下、主要な国のどれぐらいの回答者が「イエス」と答えたか、というと、


(1)全世界平均では、60%(27%が「ノー」、13%が「解らない」と回答)
(2)地域別でもっとも高いのは中東・北アフリカの77%、
次いでアジアの71%、もっとも低いのは西ヨーロッパの25%(「ノー」は53%)。
(3)主な国で見ると、
中国――71%、ロシア―59%、米国―44%、韓国―42%、豪州―29%、英国―27%、イタリー―20%、ドイツ―18%
といったところです。いちばん「イエス」が高いのは、モロッコ&フィジー(94%)、次いで、パキスタンベトナム(89%)です。


実は、これを日本のメディアが話題にしたか、記憶にないのですが、この質問で「イエス」が最低だったのが日本の11%でした。


3. ということで日本の報道を知らないので、日本が最低の「イエス」だったということを、「愛国心に欠ける」と怒る人が多いのか、「さすが平和国家」と評価する人が多いのか、日本人の反応はわかりません。
海外の報道は比較的、後者だったように思います。

ただ私個人としてもっと興味があるのは、「イエス」だけではなく、「ノー」と「解らない」の回答者の割合です。すなわち
(1) 「イエス」は上の通りですが、これらの国の「ノー」を見ると、
イタリーの68%をトップに、ドイツ62%、英国51%、韓国50%が日本より高く、日本は43%、つまり「ノー」は回答者の半数弱で、豪州(44%)とほぼ並びます。
(2) 他方で、「解らない」は、日本が全世界でトップの47%(世界平均の3.4倍)、他方で少ないのは、中国(6%)、韓国(8%)、イタリー(11%)、ドイツ(21%)、英国・ロシア(22%)米国25%・・・と続きます。
・・・・この対比が面白いのではないでしょうか?


(3) ここから言えるのではないかということは、
日本人はやはり自分の意見を明確にすること・自己主張をすることが少ない国民ではないか、という感想です。
(4)他方で、中国や韓国や西欧は、「イエス」と「ノー」をはっきり言う傾向が強い。
これは、前回のブログへのフェイスブックのコメントにも通じるかもしれません。


(5)さらにもっと言ってしまえば、
日本人が「国のために戦う」がわずか11%で世界最低だと言っても、世界最高の「解らない」グループが存在する。彼らは、いまは自分の意見がわからないが、いざとなったら大勢に流されて「イエス」となっていく可能性もあるのではないか。戦前の満州事変以降がそうだったように・・・・・・・

そんなことを考えました。


4.最後に補足しておきます。
もちろん、こんな調査に何の意味があるのか?という批判もあるでしょう。
日本のメディアがさほど取り上げなかったのは、そういう判断も働いたかもしれません。
私も似たような感じでした。
それが半年経って、ここで記録しておこうと思ったのは、最近の「フォーリン・アフェアーズ外交問題)」という世界的に権威のある硬い雑誌の5月・6月号を拾い読みしたからです。
ここでウクライナ問題を取り上げたある学者の論文で、彼はこの調査を引用しています。
ロシアと西欧がウクライナで軍事的に対決するか?という問題提起で、この調査を引用して、西欧にはいま、戦争を忌避する人たちの割合が増えていることを重視すべきと指摘しています。
フォーリン・アフェアーズ」と言えば、戦後すぐにジョージ・ケナンが冷戦についての論文を載せ、サミエル・ハンチントンのベストセラーになった「文明の衝突」も最初にここに論文が載ったことでも知られます。
そんな雑誌での論文に引用しているぐらいだから、私だってそれなりに真面目に取り上げても構わないだろうと考えた次第です。