『歴史とは何か』(E.H.カー、岩波新書)と岡村さん「世界街歩き」

1. 豪雪地帯はたいへんですが、東京は寒いけど天気はいいですね。
家人が無事にロンドンに出かけ、暫らく老人の一人暮らしとなります。
今回の飛行機は羽田からでしたが、成田に比べて我が家からははるかに便利になりました。
空港まで見送り、帰りは一人で渋谷行きのバスに乗りましたが、片道1030円で、この日渋滞もなく、約1時間で到着。途中の東京湾の眺めもなかなかなものです。


インフルエンザはお蔭様でどうやら脱出しましたが、年よりの体調回復には時間がかかりそうです。
「私も、あるいは身内もかかった」というメールを数多く頂きました。
まだまだ猛威を振るっているようです。皆様十分お気を付けください。


2. この間、ブログに長文のコメントを頂いた方に感想も書かずに失礼しました。


(1) まずは、「正しい歴史教育」について真面目に考えておられる方に敬意を表します。
Masuiさんからは、
「・・・大切なことは境界条件をどう取っての意見かを明確にし互いに理解しあうことが大事。
歴史の事実を恣意的に解釈したり宣伝したりすることは厳しい態度で改めることが必要」
下前さんからは、「客観的な視点をもって歴史教育がなされることを祈ってやまない」
とありました。


(2)「恣意的に解釈したり宣伝したりしないこと」はまさに正論ですね。
ただ、「境界条件」という言葉は、不勉強で初めて聞きました。
数学・物理学の用語だそうです。広辞苑(6版)にはこうあります
――――「ある関数についての微分方程式で、考えている領域の境界におけるその関数が満足すべき条件」


これでも私のような文系の人間には難しいです。
そこで書棚から、もはや古典と言ってよい『歴史とは何か』(E.H.カー、清水幾太郎訳、岩波新書、1962年)を引っ張りだしました。


(3)E.H.カーは、本書で「歴史的事実」と「単なる事実」とを区別します。
前者は、歴史家が選択的に取りあげる「歴史」であるとして歴史家の役割がいかに重要かを強調します。


(4)「歴史家は、自分の好む事実を手に入れようとするものです」
そして「歴史とは解釈のことです」、「歴史的解釈は常に、価値判断を含むものなのです」

(5)だからと言って、もちろん、歴史家は事実に対して恣意的であってはならない。
「歴史とは歴史家と事実の間の相互作用の不断の過程であり、現在と過去との尽きることを知らぬ対話なのであります」


(6) とあるように、何が「客観的な視点」か?というとこれはまことに難しいです。

・やはりMasuiさんの言われる「条件」の設定が重要なのでしょう。
・そして「条件の設定」にあたっては、E.H.カーが言うように、「歴史家の判断を大事にすること」「素人がいろいろ言うことには慎重であるべきこと」
他方で「歴史家はつねに現在の視点に立って、過去と不断の対話を真摯に続けること」

が大事だろうと考える者です。

何やら硬い話になって恐縮です。


3. 最後になりますが、京都の岡村さんからは長文のコメントを2度、面白く拝読しました。

(1) 何しろこの方は「世界街歩き」が半端ではなく、世界中を廻っておられます。
このコメントでも
・オランダ、
・ドイツ、
・韓国
・ニューヨーク・・・などなど
・おまけに、知覧の特攻平和記念館や樺太にも足を伸ばし、滋賀県長浜の須賀谷温泉にも出かけます。


(2) おまけに、いつも女性のメンバーのお守りをしているようで、周りはいつも女性に囲まれて、何とも羨ましい。

(3) しかも、普段は京都の、何と「祇園町」に住んでおられて、
「昨夜、祇園町は節分のおばけでお囃子に続いて芸舞妓さんが変装して家の前を通り過ぎて行きました。夏は長刀鉾のお囃子が深夜通ります。何故かこの頃これらの事にホッとするのです。」
なんてさらっと書いておられます。
私も一生に一度でよいから、祇園町の真ン中に住んでみたかったなあ!


(4) いろいろのご体験の中ではやはり韓国の話がいちばん面白かったです。
――・・・新婚旅行が済州島に戻った時、彼等と会うと日本語で「おはようございます」と口々に笑顔で声をかけ来たのには驚きました。

二、三年前ソウルに行って来ましたが、若者に大変親切にされました。地下鉄のキオスクでテレホンカードを買おうとしたらその電話はコインしかダメだからと言ってレジからいっぱいの小銭を両替してくれました。

チエ・ジュウ(女優)がよく行く焼肉屋を探していて、人通りが少なく暗がりで遠慮がちに女の子に聞いても一緒懸命に教えてくれるのです。ちょっとでも怪訝な顔をすると分かるまで教えようとするのです。
以前遠洋漁業に出る韓国の船員の一団が飛行機で移動するのによく出会いました。「韓国に来たら家に来い!ご馳走するから」と住所を書いて渡してくれました。僕は報道されているほど日本人は嫌われていないじゃないかと思って居ります。


――ほのぼのと、楽しく読みました。
そのうち「旅行記」をまとめて、素人雑誌「あとらす」に寄稿してください。
そう言えば、おすすめの絵本を渋谷の本屋で買いました。
もう1冊も勧められて一緒に買いました。
ロンドンに持っていきます。