当地にも台風12号と豆台風、吉田拓郎の「夏休み」

1. 先週は大相撲御嶽海の「県出身力士初の優勝」で,信濃毎日は号外を出し、朝刊は二日続けて彼の大きなカラー写真と記事とで埋まりました。何せ、木曽郡の小さな町の出身ですから大騒ぎです。

横綱不在でも連日満員御礼の相撲を見て幸せな日本国は、異常な暑さが一段落したと思ったら、今度は台風。
「台風は東京直撃にはならないようですが、今後の進路では雨はひどくなる予報です。
蓼科は大丈夫でしょうか。どうして被災地に向かって行ってしまうのか、自然は残酷ですね。」というメールが身内から来ました。


2.その前には、娘が連れてきた6歳と生後5か月の豆台風が東京の猛暑を逃れて予定より長く11日も逗留しました。
(1)前回も触れましたが、娘とはワインを飲みながら英国・日本それぞれの違いについて話をしました。今回もその続きです。
前回触れなかったことで両国の最大の違いは「災害の有無」でしょう。
英国には火山もないし、そもそも高い山がない。したがって地震津波も土砂崩れも集中豪雨もありません。

(2)「日本では、新幹線車内での無差別殺傷事件や幼い子供の命を狙ったり児童虐待など痛ましい事件が相変わらず報道されている。英国ではどうか?」
と訊いたところ、
「その点は、英国も同じではないか。痛ましい事件はやはり起きる」と言っていました。
人間性に残酷・冷酷なところがあるというのは、残念ながら共通しているのでしょうか。
銃規制は日本と同じく厳しいが、ナイフを使った若者の事件が増えて問題になっているとのこと。


しかし、両国で違うのは、どんなに凶悪な殺人犯であっても英国には死刑制度がないことです。英国だけではなく、EUやオーストラリア、カナダなど民主主義国のほとんどで廃止されています。EUは加盟に当たって「廃止」を条件にしている。韓国もロシアも「凍結」している。
しかし日本では2014年世論調査で、80.3%の支持だそうです。「一方、死刑制度存廃をめぐる議論は低調だ」と新聞も報じています。
この思想的違いは大きいですね。


(3)娘はアメリカと英国での暮らしが人生のほぼ半分近くになります。
働く環境(とくに女性の)や住まいや教育環境に十分満足していて、当分は帰ってきそうもありません。
とくに「他民族を受け入れる寛容さ」が英国の特徴だと彼女は言います。
アメリカは他民族国家というが、むしろ他民族を「1つのアメリカ人」に染め上げてしまうところがある。
英国ではそんなことはない。イタリア人も日本人もユダヤ人も自分たちのアイデンティティを失うことなく暮らしていける。」
という感想です。


(4)子供の扱いが違うという話も出ました。
彼女によれば、日本は少し子供に甘すぎる、お子様中心の生活が強いように思う。
他方で英国では(とくに中流階級以上で)親が中心という印象を受ける。しつけも厳しいし、子供は親の生活から切り離されて、例えば午後7時過ぎには子供部屋に追い払われて、親はそれから自分の時間を楽しむ・・・・

子供に冷たすぎると感じることもある。
最近、ラジオのトーク・ショウで、「ある夫婦が家族での海外旅行で自分たちはビジネス・クラスで、子供たちはエコノミーで飛行機に乗った」ことが話題になった、これはいくら何でも行き過ぎではないかという意見と子供は自分で稼いでいないのだから当然という意見とが分かれたが、後者を主張する人が結構多かった・・・そうです。

日英どちらもやや行き過ぎではないかと思う、というのが彼女の感想です。


3. 孫二人を扱う娘の様子を見ていると、「どちらも行き過ぎ」と恰好いいことを言って
いながら、本人は「やはり日本人だな」と思うところがあって、「少し甘やか過ぎではないか」とこちらから注意することもあります。

(1)しかし、普段は英国の男子校で学んでいる6歳の孫にとって、少しは気分の変わる夏休みになったのならよかったなと思っています。
日本人学校の補習校はもちろん英国にありますが、家から遠いなどの理由で通っていません。日本語の勉強は両親がもっぱら面倒をみています。
今回も「お父さんは下手な英語で話しかけるのはやめて、勉強になるから日本語を使って」と言われました。
小倉百人一首」の絵札で遊ぶ「坊主めくり」で初めて遊びましたが、娘は「百人一首の一首でも覚えさせたい」という気持ちになったようで、荷物に入れて持って帰りました。和歌を覚えるのは容易なことではないと思いますが・・・

(2) 家では日本語の勉強と称して「ドラえもん」を愛読しました。絵もさかんに描いています。
英語版もあって(漫画もヴィデオも)やはり人気があるようですが、批判もけっこうあると娘が話してくれました。
この漫画の中身は、のび太という主人公がいろいろ苦労にあう、それを未来からやってきたロボットのドラえもんがあり得ないような便利な道具を駆使して助ける・・・というテーマが多くて、
これが英国人に言わせると、こういう漫画を読むと、子供がすぐ誰かに頼って助けてもらおうとする、自己努力をしない人間になってしまう、のだそうです。
これも日英両国の、子供に対する扱いの違いでしょうか。

(3) 前回のブログで彼が庭でセミの抜け殻を見つけて並べている写真を載せました。
そのあと、脱皮し・羽化したセミを見て驚いていました。セミは英国では見かけないようです。
抜け殻の写真を見たフェイスブックの岡村さんからコメントを頂きました。
「蝉の空を並べている写真を見て男の子って同じことをするんだ。
お孫さんはきっとこの日の事を思い出す日が来るんだろうなぁ。
同世代の吉田拓郎さんの曲に、
麦わら帽子は もう消えた
田圃の蛙はもういない
畑のトンボはどこに行った

あの時逃がして あげたのに、 西瓜を食べてた 夏休み
水撒きしたっけ 夏休み、 ひまわり 夕立 蝉の声
と歌われています。遠い思い出ですが、長い夏休みの出来事とこの曲は耳から離れません。」とあります。

岡村さん、有難うございます。
吉田拓郎のこの歌を知らなかったので、早速ユーチューブで聴いてみました。
「孫がこの日のことを思い出す」かどうかは分かりませんが、日本のこと、美しい日本語や日本の夏休みをこれからも忘れずに生きていってほしいと願っています。