- 前々回のブログで、下前さんが登場した「京語りの会」を紹介しました。
今回は、同日、続いて登場した、やはり京都人による講話「文化財修理を支える装潢(そうこう)技術」の報告です。
(1)「装潢(そうこう)修理技術」とは、「紙や絹など、脆弱(ぜいじゃく)な基底材に描き記され、世に伝わってきた絵画・典籍などを修理する技術」のこと。
(2) 現在、この技術を持ち、国宝を含む文化財の修理に携わる会社は、日本に10社、うち4社が京都にある。
ちなみに西欧では国立の美術館直属の仕事だが、日本では古くからの伝統があり、いまも民間の装潢師が担っている。
約140人の装潢師がいて、意外なことに30代後半の女性が多い。
(3)この人たちが国宝や重文などの修理を支えている。
日本の文化財は海外にも伝わっている。したがって、例えば大英博物館の収蔵品に対しても時に彼らを派遣して支援している。
(4)文化財は、代替不可能な「唯一無二」のものである。だから真正・確実な保存が必要である。
文化財が残っているからこそ、正しい歴史が残り、語ることができる。
(5) 他方で、覇権主義の国は、過去を大事にせず、文化を残そうとしない。だから歴史修正主義(ホロコーストはなかったなど、歴史の定説に異議を唱える考え)におちいりがちである。
(6)しかし日本でも、文化財保存の将来には心配が多い。
修理は装潢師だけでできるものではないからである。
文化財を支える実にさまざまな伝統技術が不可欠である。
和紙、木工、漆工、金工、唐紙、藍染,表装・・・などの職人と道具と材料が、いまや徐々に消えていこうとしている。これらがなくなれば、いくら装潢師が頑張っても仕事はできない。
こうしたものをどうやって守っていくか、国はこれらを「選定保存技術」に認定し、彼ら自身も「伝統技術伝承者組合」を作って守ろうとしているが、危機感は強い。
(7) 以上のような話が印象に残りました。
「過去を大事にせず、文化を残そうとしない国は、歴史修正主義に陥りがちである」と話されたときは、講師の口調はとくに熱をおびていたように感じました。
文化財は、歴史であり、記録なのですね。だから正しく残さなければならない。
2.たまたま二次会で、京都から下前さんの応援に駆け付けた数人とお喋りをしました。
(1) 田中さんは翌日、仲間と厚生労働省に行って「母子手帳」の内容を充実させるべく打合せをすると言っていました。
「仲間」の女性たちは、それぞれの地域で、育児に悩む母親を支援する活動をしているそうです。NPOを立ち上げて、「子どもの健康管理ガイドブック」を作った女性もいました。
(2) 「母子手帳」や「お薬手帳」が、ひいては成人になっても自らの「個人健康情報(Personal Health Record)」の存在がいかに大事か、と同席の飯島さんから聞きました。
国のシステムとして取り組むべき課題であり、総務省などの解説サイトもありますが、まだ道半ばです。
PHR(パーソナルヘルスレコード)について | 健康長寿ネット (tyojyu.or.jp)
そこで彼は自分で「病歴」をきちんと記録して健康保険証と一緒に常に携帯しているとのことで感心しました。
(3) 帰宅して夕食時に妻にその話をしました。「私が子育てのときは、そんなことを意識していなかった。子供に母子手帳を渡していないし、もう残っていない。いまの人たちは立派ね」と感心していました。
他方で、岡村さんは祇園にあるかかりつけの個人病院が後継ぎがいないので廃院になってしまった。カルテはどうなったんだろう、と心配しておられました。
(3) 過去の記録を残すことが大切なのは国家や社会だけではなく、個人にも言えることだなと痛感しました。
話してくれた皆さんは現役です。それだけに、社会の役に立とうと日々活動している姿が気持ちよいです。